釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

砂鉄川

2009-05-18 07:07:11 | 自然
日本三大渓なるものがあり、北から猊鼻渓(岩手)、嵯峨渓(宮城)、耶馬渓(大分)である。猊鼻渓は日本百景にもなっており、以前から一度は行ってみようと考えていた。今ちょうど藤の花が咲いているというので出かけてみることにした。340号線を南下して343号線で西進する。あいにく曇天だったが観光バスも次々にやってきてやはりここを訪れる客は思った以上に多い。平底の76人乗りの木船で湖のように波のない、しかもほとんど流れが感じられない砂鉄川を船頭さんが長い竿を使って進めて行く。藤の花はもう咲いていたが周囲の新鮮な緑が強すぎてあまり目立たない。ゴザ敷きの上に座ってゆっくりと進む船の上で船頭さんのガイドを受けながら周囲の景観を眺めているとほんとうに気持ちがいい。つくづく来てみてよかったと思う。人が満杯に乗っているにもかかわらず人が感じられない程景色の中に浸ってしまう。川には鯉やウグイらしき魚が泳ぎ、鯉は餌をもらうために船に集まって来る。中にはメタボのものもいそうだった。最奥で一度船を降り、花の咲く藤棚を見ながら歩くと川に橋がかかり、渓谷の名前の由来となった猊鼻岩に至る。猊鼻は獅子の鼻を意味するそうだ。帰路の船では船頭さんの歌が渓谷に響き、新緑の両岸を眺めながら至福の一時を過ごした。この猊鼻渓の近くには3億5千年前の地層が表出する幽玄洞という洞窟があるがそのそばにマリア観音像があるというのでそちらの方に興味を引かれて行ってみた。たくさんの観音像がおかれていたがやはり本来一つしかなかった洞窟のマリア像を見ておきたかった。薄暗い洞窟に花崗岩に彫られたマリア像が安置され花が添えられていた。このマリア像に人々が祈りを捧げたころはこの洞窟への道はなく川伝いに人々が密かにやってきたようだ。砂鉄川の名前が示すように製鉄が行われ、それにかかわった人たちにキリシタンが多かったのだろう。


新緑の猊鼻渓を船がゆっくりと進む


猊鼻岩 中央の穴に石を投げて、入れば幸運を招くそうだ


マリア観音像 どこかうら悲しさを感じてしまう