釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで11年1ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

自由市場の崩壊

2019-02-18 19:10:48 | 経済
社会主義や共産主義と資本主義の経済システムの大きな違いは、資本主義では市場が中心となり、前者では政府の計画が中心となることだ。資本主義国では新自由主義の浸透により、1990年代半ば以降、次々に金融ビッグバンが波及し、「市場原理が機能する自由な市場」が形成された。日本でも金利は市場で決まり、資本も自由に投じられる環境が作られた。ある意味では、この時点で初めて資本主義国が真の資本主義国になったとも言える。しかし、皮肉なことに、この頃から先進国は政府債務を増やして行った。特に顕著であったのは日本である。本来資本主義では、政府の財政政策や中央銀行の金融政策は市場の補助役に過ぎない。にも関わらず、日本ではこの金融ビッグバンに並行して、むしろ政府や中央銀行が乗り出して来ている。1991年のバブル崩壊の傷跡が癒えないままに米国から求められた金融ビッグバンを進めたため、日本の経済は政府や中央銀行の助けがなくては自立出来なかった。そして以後、次々に米国資本が日本へなだれ込み、名だたる大企業はたちまち米国資本下に置かれてしまった。アベノミクスは円安で、それをさらに加速させた。米国は史上最長の景気拡大と言われているが、日本も負けずに現政権が成立した2012年12月から続く「景気拡大」が高度経済成長期の「いざなぎ景気」(1965年11月~1970年7月、57カ月)を超え、戦後最長の「いざなみ景気」(2002年2月~2008年2月、73カ月)をも本年1月には越えたとしている。改ざんされたデータと返済不能の政府債務や有り得ないマイナス金利や大量国債の買い入れと言う日本銀行の「異次元」の金融政策によって、まるで社会主義国や共産主義国が顔を赤するような手法で維持された「経済成長」ではないか。せっかく金融ビッグバンで金利が自由化されたはずなのに、金利は中央銀行が無理やりゼロに抑え込んでいる。市中金融機関で維持されて来た国債市場も今では全く市場機能を失ってしまった。新規発行の国債はみんな日本銀行が買っている。日本銀行が国債を買い込むことで、国債金利は最低になっている。国債金利が最低と言うことは、国債の価格が発行時の価格より高いと言うことだ。国債の金利と価格は逆に動く。つまり日本銀行は国債を割高に買っている。先進国では例を見ないここまで極端な国債金利の押さえ込みは、もはやこれを永遠に維持するしかないところまで来ている。何故なら、金利が今後少しでも上がっていけば、国債を保有するものはその保有国債の価格が下がり、損失を抱えることになる。現在、発行済の1000兆円の国債の半分を市中銀行や保険会社が保有している。残り半分を日本銀行が保有する。大手銀行や大きな保険会社は、海外にも支店を置き、海外に投資することで利益を得るチャンスはあるが、地方銀行は利ざやと国債で利益を得るしかない。しかし、地方銀行の半分はすでに超低金利で利ざやが稼げず、赤字になっている。この上、金利が上がり、保有国債の価格が下がれば、もはや倒産するしかない。大手金融機関にしても損失を被る。金利上昇は確実に日本に金融危機を引き起こす。今後わずかな金利上昇でも損失が出ることが分かっている国債を誰が買うのだろう。日本銀行が永遠に買い続けるしかない。しかし、裏付けのない通貨である円は、国債の信認で支えられている。新規発行の国債の全てを日本銀行が買い続ければ、そんな円をどこの国が信頼するだろう。経済成長を偽装すること自体、実体経済である製造業が自立出来ていないことを意味する。自由な市場での競争にもはや日本の製造業が太刀打ち出来ない状態になっている。ただ幸いなことに、同じことが欧米で起きているために、日本の製造業が目立たないだけである。
オナガガモ(雄)
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喜べない日本の対外資産

2019-02-16 19:18:45 | 経済
昨年5月25日、財務省は日本の対外資産が2017年末で1012兆4310億円となったと発表し、メディアは9年連続の増加だとして、誇らしげに報じた。しかし、海外の日本への投資額も8年連続で増加しており、2017年末には683兆9840億円に達しており、差し引きの対外「純」資産では328兆4470億円と3年連続減少している。何よりも対外資産が1000兆円を突破したのは、日本国内では投資対象が限られているためであり、投資利益が得られない環境になっているためである。決して喜べる事態ではないのだ。超低金利で、株式も日本銀行頼みであり、唯一の国債市場も日本銀行により機能不全に陥ってしまっており、個人や機関投資家である各金融機関は資金を海外へ投じるしかない。しかもより多く利益を得ようとすると海外のリスクの高いものに資金を投じてしまわざるを得ない。2018年12月17日のブルームバーグの記事は「1兆ドル規模の米レバレッジドローン、市場の運命握る日本の銀行」と題する記事を載せている。「日本の銀行は高債務の米企業向けローン債権の3分の1相当を購入し、同市場の規模が1兆ドル(約113兆4000億円)を超えるのを後押しした可能性がある。」と言うのだ。米国の高債務、債務が非常に多い企業向けのローンは返済不能のリスクが高い分、金利が高いため、一見、多くの利益が得られそうに見えるため、こうしたローン債権に、国内で投資先を見つけられない日本の金融機関が飛びついたのだ。国内で行き場を失った日本の資金が米国のリスク資産である株式や債券に投じられている。アベノミクス開始以来、日本銀行が金利をゼロ金利からさらにマイナス金利にまで低下させると、高収益を求めて、日本国内の資金が日本よりは金利の高い米国に向かう。円からドルに替えて投じられる。すなわち円を売ってドルを買わねばならない。これが円安ドル高を導き、自動車などの輸出大企業に為替差益だけの利益をもたらした。輸出量が増えて利益が出たのではない。この安易な利益は企業の開発努力を怠慢にさせてしまった。しかも、人材や新規投資へ得られた利益を回さず、内部留保として積み上げるばかりであった。昨年9月3日に財務省が発表した2017年度の法人企業統計によれば、金融・保険業を加えた2017年末の企業内部留保は507兆4454億円となり、500兆円を突破している。先進国では国民総生産GDPに占める消費の割合は高く、日本では6割を占めている。にも関わらず、実質賃金が低下しており、消費は一向に増えない。企業は自ら首を絞めている。賃金を増やして消費を促さなければ、経済成長は望めない。米国に従属して、日本も米国と同じように実体経済である製造業を自ら衰退させ、米国に倣って投機的な金融に走っている。この状況がとても危険なのは、超長期に渡る超低金利により、多くの金融機関が米国以上に弱体化しており、米国の金融バブルが弾ければ、日本の金融機関は負担しきれない損失を抱えることになり、かってない金融危機に陥る。巨額の損失を抱えることが預金者や保険契約者に知られれば、たちまち取り付け騒ぎに発展するだろう。多くの金融機関、特に体力の弱い地方銀行の多くが倒産に追い込まれる。金融経済での危機は実体経済をも悪化させる。それはすでに2008年のリーマン・ショックが証明済みだ。世界の中央銀行の歴史始まって以来のこの超金融緩和がやはり歴史始まって以来の金融バブルを生み出している。歴史上バブルは必ず崩壊している。昨年末から今年1月にかけての株式の下落に不安を持った米国の中央銀行FRBは先月末、金利引き上げを見送った。引き上げれば、さらなる下落を引き起こす不安を抱いたからだろう。金利引き上げも引き下げもままならない迷路に迷い込んでしまった。金利引き上げを見送ったために株式市場は、再び息を吹き返しているが、あくまで金融緩和頼みの株式市場でしかない。世界はすでにずっと以前に実体経済とは遊離した株式市場に変じてしまっている。
カワガラス
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気の遠くなるような微生物の「冬眠」

2019-02-15 19:17:24 | 科学
冬になると冬眠する動物たちがいる。冬眠中は秋に食べ込んでいた栄養分で冬を越す。最小限の体内の活動でエネルギー消費を抑えている。かって京都帝国大学の天文同好会は「天界」The Heavenと言う学術誌を発刊していた。1933年4月25日に発刊された同誌で、「生物の起源は隕石から(?)」が載せられており、米国カリフォルニア大学細菌學教授チャールズ リプマンCharles B・ Lipmanが地球の生物の起源が隕石に由来すると主張していることを紹介している。リプマン教授は「岩石の研究により,1928年9月に始めてカムブリヤ前期の岩石中に微生物の存在することを發見し,1931年には又, 石炭礦中に細菌を發見したのである.」とある。カンブリア紀は5億4200万年前から4億8830万年前までの期間とされている。リプマン教授は教授は5億年以上前の地中の岩石に微生物がいることを発見していた。1931年の彼の論文「Living Microorganisms in Ancient Rocks(太古の岩石に棲息する微生物)」では、太古の石炭塊に休眠状態の細菌が存在し、適当な環境下で、言ってみれば蘇生するのだと述べている。米国オレゴン州立大学の研究者たちの近年の研究によれば、この30年で海底や大陸の地下に棲息する微生物の研究が急速に進んだ、特に海底の微生物の研究はこの10年で目覚ましいと言う。2000年にウエストチェスター大学生物学科のラッセル・ブリーランド助教授たちは、ニューメキシコ州の地下570mの岩塩層で、2億5000万年前の塩の結晶を採取し、そこに複数の細菌が封じ込められていることを発見している。この細菌に、アミノ酸、タンパク質、イースト菌の抽出物などを加えて培養すると、一部の細菌が繁殖した。遺伝子解析の結果、この細菌はこれまで知られている細菌とは異なる古細菌であることが判明した。同大学の研究者の一人は、この塩の結晶が宇宙に飛び散っていれば、宇宙を漂流した後、別の惑星でこの細菌が生き延びることも理論的には可能だと述べている。海底や地下には栄養源が少なく、最低限のものしか得られない。その環境でも微生物は生命を維持していた。海底や地下深くの微生物は地上の微生物とは異なるシステムで休眠状態を保っている。しかも、地上では考えも及ばない長い期間に渡ってだ。こうした微生物が地上の高温下で活動を始めることも分かって来た。動物の「冬眠」は高々数ヶ月だが、微生物の「冬眠」は桁違いだ。微生物の「冬眠」のメカニズムが解明されて行くと、いずれ人間の冬眠につながるのかも知れない。
久しぶりの冬眠しないリス
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自滅する人類

2019-02-14 19:14:08 | 科学
最低気温が-5度以下の日がここしばらく続いていたが、この週末くらいからそれが終わりそうだ。日射しを見ていると、もう春の日射しであることが分かる。まだ雪が薄く残る庭で、マンサクやサンシュユの蕾が膨らんで来た。職場の裏山には今朝も4頭の鹿が来ていた。冬毛になった鹿たちは、よく見ないと分からない。自然界はよく出来たもので、鹿たちの毛の色は、枯葉が落ちた山肌とよく似ている。小鳥も動物も視界全体を見て、動きで初めてそれと分かる。写真を撮るようになって気付いた。その写真ではあまり昆虫を撮ることがなく、せいぜい秋の赤トンボくらいであった。一昨日、英国のインディペンデントThe Independent紙は、「Mass insect extinction within a century threatens 'catastrophic' collapse of nature’s ecosystems, scientists warn(1世紀以内の大量の昆虫の絶滅が自然生態系の「壊滅的な」崩壊を脅かす、と科学者らが警告)」と言う記事を載せている。その前日には米国のSlashGearと言うメディアでも「Study shows 100% insect extinction in 100 years(研究では、100年で100%の昆虫が絶滅する)」と言う同様の記事を載せている。すでに2017年10月にはオランダのラドバウド大学 Radboud Universityの研究者によって、自然保護地域の羽のある昆虫が過去 27年間で75%以上減少していたことが報告されていた。昆虫は、野生の植物の80%の受粉を担い、鳥類の60%に食物源を提供すると言われている。しかも、今年1月31日に米国ネブラスカ大学University of Nebraskaは、「Nickel and died: Earth’s largest extinction likely took plants first」と言う表題で、2億5100万年前の地球史上最大の大量絶滅は最初に植物の絶滅から始まったことを明らかにしている。当時、地球にはパンゲア大陸と言う超大陸が存在し、その超大陸では200万年間もの間、各地で火山噴火が絶えなかった。このため大気中にはメタンガスが溢れ、海洋生物の96%と陸上の脊椎動物の70%が絶滅した。しかし、この研究で、それらの絶滅の40万年前に噴火によるニッケルの出現で、植物を絶滅させていた可能性があることが判明した。人類が誕生する何億年も前から、地球上の自然界は循環的なバランスを保って維持されて来た。遅れて登場した人類もそのバランスの中で何百万年もの間、生命を維持して来た。しかし、人類はこのわずか数十年で、農薬、汚染、気候変動をもたらした。大きく自然界のバランスを崩す原因を生み出してしまった。亡くなった物理学者の英国ケンブリッジ大学スティーヴン・ホーキング博士は、AI人工知能やロボットが人類を滅ぼしかねないことを警告していたが、それ以上に人類が自ら自然界のバランスを急速に崩すことで、自滅を早めている。絶望的なのは、どの国家もこうした自然界のバランスの崩れに真剣に取り組んでいないことだ。特に、日本は自然に恵まれる島であるにも関わらず、食品添加物や農薬の規制が欧米に比べても、とても対応が遅れている。目の前だけを見ていると、そこで起きていることが見えてこない。目の前だけでなく、全体を見ることが重要だが、残念ながら、人はそれが出来ない。今生まれたばかりの子供たちが、果たして健康な一生を終えられるのだろうか。





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「北方領土」

2019-02-13 19:11:12 | 社会
平和裡に国土が広がることを喜ばない国民はいないだろう。北海道に住んでいた頃、何度か根室市へも行った。国後島や歯舞群島、色丹島などを臨みながらトドワラの野付半島や風蓮湖を通り、エトピリカのいるユルリ島を見て、納沙布岬まで。根室市の至る所で、「北方領土返還」の文字が目に入ったことを覚えている。太平洋戦争では日本は軍隊を大陸へ送り、「国土」を拡げた。子供の頃、祖母から太平洋戦争中に発刊された地図を見せてもらったことがある。朝鮮半島や中国、東南アジア、南方諸島は日本列島と同じく、赤く塗られていた。子供心に小さな島が何と大きく広がったのだろう、と思った。1945年7月26日、当時の米英、中華民国は13ヶ条からなるポツダム宣言を発した。広島に続いて長崎へも原爆を投下された日本は、8月14日ポツダム宣言を受諾し、9月2日、東京湾内の米国戦艦ミズーリ号の甲板で調印した。日本が受け入れたポツダム宣言の第8条には「カイロ宣言の条項は履行されるべきであり、又日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島に限られなければならない。」とある。カイロ宣言は1943年11月22日からエジプトのカイロで、米英・中華民国の間で行われたもので、日本の降伏と、満州・台湾・澎湖諸島の中華民国への返還、朝鮮の自由と独立などに言及している。その後、1951年9月8日に米国とサンフランシスコ講和条約を結び、日本は独立した。この条約には「日本国は千島列島に対するすべての権利を放棄する」とあり、全権代表吉田茂は「国後・択捉は南千島」と述べている。国際条約ではすでに日本は北方4島は放棄していた。「北方4島は日本の固有の領土である」と言うのは、気持ちは理解出来るが、条約上は主張出来ないことである。今月7日、NHKは「“2島引き渡し 平和条約交渉急ぐ” 旧ソビエト機密文書」と題して、スクープ記事を伝えた。すでに米ソ冷戦が行われていた1956年10月19日、当時のソ連のモスクワで、日ソ共同宣言が行われた。この時、ソ連は4ヶ月前に「日本に対する影響力を強め、アメリカの政治的、経済的立場を弱める措置をとる必要があり、その際に日本の経済的、政治的独立性の願望を利用する」ため、「「両国関係が良好な方向に発展していく場合、歯舞群島と色丹島の引き渡しの交渉を始めることは可能だ」としていて、「外国軍の基地を置かない」ことを条件に、早い段階から2島の引き渡しを最大の譲歩案として交渉に臨む方針を固めていた」と言うものである。外務省官僚であった天木直人によると、共同宣言に2島返還が盛り込まれなかったのは、ソ連側の意図に気付いた米国が「日本が北方領土返還を受け入れるなら沖縄は返さない」と主張したためだと言う。日本はサンフランシスコ講和条約と同じく1951年9月8日、米国との間に、すでに安全保障条約を結んでいた。いわゆる日米同盟である。当時と現在では世界情勢が大きく変わった。ソ連は崩壊し、米国の国力も弱まって来ている。無論、米国の軍事力は今なお健在ではあるが。北方2島の返還を交渉で導き出すのは手腕次第であろう。米国も当時のソ連ほどにはロシアへの警戒感は持っていないのではないか。ロシアはかえって日本の軍事力に脅威を持っているようだ。2月3日の日刊ゲンダイは、元ロシア軍高官の書いた「クリール諸島(北方領土と千島列島)への攻撃――考えられるシナリオ」を紹介している。日本はロシアより空軍力、海軍力で圧倒しており、日本が軍事的な手段を取り得るとしていると述べているようだ。ロシアは毎年Global Firepowerが発表する軍事力ランキングでは、米国に次ぐ世界第2の軍事大国であり、日本は第10位である。しかし、ロシアは大陸の国家であるため、陸軍が強化されている。何れにせよ、軍事力の行使は互いに犠牲を生む上、解決策にはならない。
庭の雪
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いつまでも続けざるを得ない異次元緩和

2019-02-12 19:17:07 | 経済
昨夜から降り出した雪は、今朝起きると10cmほどに積もっていた。出勤前に玄関先と車の雪を払った。出勤途中の路面は踏み潰された雪で、凝っており走る車はみんないつもよりもスピードを落として慎重に走っていた。釜石には滅多に雪が降らないので、逆に除雪体制が整っていない。職場の裏山の木々には雪の花が満開になっていた。時折木々の間を飛ぶ小鳥たちは雪が積もると餌が限られるだろう、とつい心配になる。鹿たちも杉のねぐらを出て、雪をかき分けて餌を探すしかないのだろう。さすがにこんな日はリスの姿もない。白い雪で覆われた藪椿の木で、紅い椿の花がいつも以上に目立った。雪の日は雪が音を吸収するのか、不思議と静かだ。 中央銀行は金融政策により国の経済の安定を図るのが使命だ。その金融政策には金利と通貨量の二つの手段があり、景気が悪くなると、金利を下げる。場合によってはさらに通貨量を増やそうと、市場から債券を買い取る。債券を買い取れば、代価として通貨を支払い、通貨は市場に流れる。こうして通貨量を増やすことを量的緩和と称する。1991年にバブルが崩壊し、日本企業は巨大な債務を抱えた。バブル期に低金利に乗じて、見境なく借金を増やしていたからだ。一気に景気は悪化した。これに対して日本銀行は金利を一層下げることで、対応した。しかし、企業は債務の返済に追われ、いかに低金利であっても、借り入れをさらに増やそうとはしない。日本銀行の金利引き下げは有効な結果を生み出さなかった。そこで、2000年のITバブル崩壊のあおりで、さらに景気が低迷しているのを見て、日本銀行は2001年3月に量的緩和に踏み切った。この量的緩和は2006年3月までの5年間続いた。しかし、この時の量的緩和は現在と比べれば、とても可愛いものである。目標値が35兆円でしかなかった。2月4日公表の日本銀行1月31日時点での営業毎旬報告の資産は557兆円にもなっている。IMF国際通貨基金予測の2018年度の日本の国民総生産GDPと全く同額である。資産のうち国債が471兆円を占めており、現金や金地金を除くと500兆円ほどが市中へ流れた形になっている。しかし、実際には、市中金融機関が日本銀行に預けた当座預金は388兆円で、新たに発行された通貨は106兆円である。500兆円を市中に流そうとしても、388兆円は日本銀行内に留まっているのだ。2008年のリーマン・ショックによる経済の急減速により、日本銀行は積極的に量的緩和を加速し、現政権の成立後の2013年4月からは「異次元の金融緩和」に突入した。なりふり構わず、国債や社債、株式にまで手を出して、買い取った。今では日本のほとんどの大企業で、10位以内の大株主となった。2月9日、日本経済新聞は「銀行融資、危うい復調 20年ぶり500兆円台 世界で「ゾンビ」台頭、成長に影」と題する記事を載せた。同じ日の記事で、「ゾンビ企業とは 破綻状態「追い貸し」で延命 」と題する記事も載せている。歴史上かってない超低金利で、本来であれば潰れるべき企業が金融機関からの「追い貸し」で延命している企業が増えていると言う内容だ。日本だけでなく、世界的にこれが見られる。しかも、金融機関同士が貸し付け競争で、駿河銀行のように悪質な融資に走っている金融機関が増えている可能性も指摘されている。ゾンビ企業の延命は経済の効率を悪くし、本格的な景気後退が訪れれば、最悪の事態を招く。返済不履行のため、多くの金融機関が危機に陥る。それでなくとも、金融機関はすでに超低金利で利ざやが稼げず、経営が悪化しているのだ。日本銀行は資産である社債や国債をいつまでも保有し続けるしかない。下手にそれらを売却して、市場に実際にお金が流れれば、猛烈なインフレを引き起こす。かと言って、それらを保有し続ければ、すでに失われてしまった債券の市場機能もあって、必ず、国債や円通貨の信認を失う時がやって来るだろう。
雪を被った桜の木
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IMFの苦肉の策

2019-02-09 19:17:32 | 社会
政府の不正統計が次々に発覚し、6日は厚生労働大臣も実質賃金がマイナスであることを国会で認めざるを得なくなった。実質賃金はインフレ率を加味して求められる。現在、日本のインフレ率は1%前後で推移している。従って、1%にも満たない今の預金金利の下では、実質預金金利もマイナスであり、預金しても実際には目減りしている。現金や預金で個人資産を保有すれば、目減りする環境を日本は長く作り出して来た。2008年の金融危機後、世界の先進国は揃って、金融緩和、金利引き下げを行なったが、この目的は世の中にお金を流すことであった。預金や現金で個人が資産を持っていると目減りするので、今のうちに物をかって使った方がいい、と思わせることで、個人の消費を促す。企業には設備投資に使った方がいいと思わせる。しかし、日本の個人は所得が増えない上、将来への不安があるため、政府の目論見通りにはお金を使わず、消費は増えなかった。日本の世界でも稀に見る異常な金融緩和は、社会的には何の効果もない。にも関わらず、この異常な金融緩和を続けるのには、他に目的があるからである。政府債務の金利負担を軽減する、ただその一言のためである。長期に渡って、経済成長は横ばい状態であり、税収は思うように増えない。となれば、政府債務を延命させる手は、金利負担を抑えるしかない。金利が3%にもなれば、金利負担だけで、税収を超えてしまう。今月5日、国際通貨基金IMFのスタッフは、IMFのブログに「マイナス金利が力を発揮するためには」と題する論考を載せた(日本語でも読める)。「世界金融危機時には多くの中央銀行が経済成長を促進するため、政策金利を0%にまで引き下げた。10年が経った今も金利は大半の国で低水準のままである。世界経済の回復は続いているものの、将来の景気後退は避けられない。歴史を振り返ると、厳しい不況時には政策金利の3%ポイントから6%ポイントの引き下げが必要であった。次の危機が生じたとして、金融政策にこれほどの引き下げを行う余地がある国はほとんどないだろう。」と書き出している。これまでどの国も景気後退時には中央銀行が金利を3%から6%下げることで、景気回復を行なって来たが、今の先進国はほとんどそこまで金利引き下げを行う余地がない。まして、日本のようにマイナス金利まで導入していれば、とても今以上に引き下げることなど不可能である。しかも、景気後退は必ずやって来る。このIMFの論考はマイナス金利を容易に深めるために部分的に電子マネーを導入することを主張している。電子マネーであれば、いくらでもマイナスを大きく出来るからだ。しかし、これは実際には現実的ではない。各国が今から電子マネーを導入するには法改正や設備の導入など時間を要するため、とても景気後退には間に合わないだろう。ただ、将来的には、政府が実質的な増税対策として電子マネーが導入される可能性は大いにあり得る。今や世界には債務バブルが満ち溢れており、その中で、日本は政府債務バブルが突出している。世界の債務バブルは、どこかで弾ければ、たちまち2008年を超える金融危機となる。金融危機とは世の中からマネーが失われることだ。マネーが世の中に流れなくなる。そうなれば経済活動は止まってしまう。これを避けるために、政府が公的資金を使ったり、中央銀行が金利を下げて、市中金融機関を通じて貸出量を増やす。しかし、今の日本にはこうした余裕が政府にも中央銀行にもない。政府は巨額の債務を抱え、中央銀行は目一杯金利を下げてしまっているのだ。日本銀行のマイナス金利が適用されているのは、市中金融機関が日本銀行の当座預金に預けた一部である。一般の預金者にではない。世界的な金融危機が発生すれば、先進国では日本が最も大きな打撃を受けることになる。
開き始めた椿
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変異した金融経済

2019-02-08 19:18:25 | 経済
経済は単純化すれば、マネーを取引の対象とする金融経済と物を取引の対象とする実態経済からなる。かっては金融経済は実態経済の補助役であった。しかし、1980年代から米国は実態経済の衰退に代わり金融経済を主役に祭り上げた。金本位制から外れた通貨システムは、中央銀行が通貨を増刷すれば、するほど物価は上がり通貨価値を下げた。しかし、これはあくまでも増刷された通貨が実態経済へ流れた場合である。米国のように製造業が衰退していると、増刷された通貨は実態経済へは流れず、金融経済へ流れて行く。その結果、物価はさほど上がらず、株式や不動産などの資産価格が上昇する。2008年以後、米国や日本、EUなどの中央銀行はそれぞれ4兆円以上の通貨を増刷した。これだけ増刷すれば、かってであればインフレが起きていた。しかし、米国やEUでは増刷された通貨が金融経済へ流れ、資産バブルを生み、日本では市中金融機関の貸し出しが増えないため、増刷された通貨のほとんどが中央銀行の当座預金に蓄積されて、いずれも実態経済へは流れず、そのためインフレも起きていない。ただ日本では円安のため輸入物価は上がって来ている。ドルに対する円安は、日米間の主に金利差による。日本より高い金利を求めて米国へ日本のマネーが投じられるために、円が売られてドルが買われることで、円安となる。国際的なマネーや物の取引で中心的に使われる通貨が基軸通貨であるが、その基軸通貨はドルである。国際取引で巨額の赤字である米国は、ドルを増刷することで、取引の決済を行なっており、国内だけでなく海外へもドルを供給している。国内外のためにドルを印刷するのであるから、印刷量だけから見れば、相当量のドルを印刷していることになる。通常、通貨は印刷すれば印刷するほど価値を失う。ドルが見かけ上価値を失わないで済んでいるのは、増刷されたドルが国内の実態経済へ流れず、国内の金融経済や海外へ流れているからである。かえって、国際取引でドルを得た海外の国の方でインフレになったりする。米国で得たドルを自国通貨に換えると、その分、その国での通貨量は増えるからだ。先進国は近年経済成長率が軒並み低下している。実態経済が成長しないからだ。成長しない実態経済へはマネーも流れて来ない。インフレ率は先進国では経済成長率とある程度相関する。日本で長くデフレが続いて来たのも、成長の見込みの少ない実態経済へマネーが入り込まなかったからだ。もはや先進国では中央銀行が金融緩和で通貨を増刷しても実態経済へは通貨は流れ込まない。従って、、表面上はインフレが起きていないため、通貨の価値が下がっているようには見えない。しかし、大量に発行された通貨は、中央銀行が金融引き締めで回収しない限り、金融バブルの崩壊という形で、必ず失われることになる。特に米国ではそれが顕著になるだろう。インフレは通貨価値を下げる。政府債務の巨大な日本は、実質的な債務を減らすためにインフレを目指した。2%物価目標がそれだ。しかし、インフレは思うようには起きず、最近ではあまり政府も日本銀行も言わなくなった。政府や日本銀行が目論んだインフレは、しかし、もろ刃の剣でもある。インフレは金利を押し上げる。つまり政府債務の金利負担は増える。しかも、一旦、インフレが起きると、日本銀行がコントロール出来る範囲にとどまるとは限らない。かっては市中金融機関は、企業融資の役割を担っていたが、今では、企業は必要な資金を社債市場や株式市場で集める。利潤を得る対象を失った市中金融機関は、金融経済で利潤を求めるようになった。それだけに金融危機が起きれば、金融機関の打撃はかってより大きくなっている。現代の金融経済はマネーゲームである。賭博でさえある。勝者がいれば必ず敗者がいる。そして、金融バブルの崩壊は全てを敗者にする。
薬師公園の藪椿
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自分の身は自分で守るしかない

2019-02-07 19:16:08 | 科学
子供が中学生の時、学校のディベートで携帯電話が人体に有害かどうか賛否別れて討論することになった。子供は有害である立場であった。子供に協力して、資料を集めたことがある。それまで携帯電話そのものをあまり頻繁には使っていなかったせいもあり、携帯電話の電磁波には関心がなかったが、資料を集めていて、不安になった記憶がある。その後、スマートフォンが登場しても最低限の使用しかしていなかった。昨年7月19日、米国のニューズウィークNewsweek紙は、「Do Cellphones Cause Cancer? Government Study Reveals 'Stunningly Important' Findings(携帯電話は癌を引き起こすか? 政府の研究は「驚くほど重要な」調査結果を明らかにする)」と題する記事を載せている。2011年にはすでにWHOが携帯電話やスマートフォンの電磁波について警告を発していた。ニューズウィーク紙も決定的な証拠を見いだすのは難しいとしながらも、2012年の学術誌で、通話時の携帯電話に近い部位、前頭葉、側頭葉と小脳の腫瘍発生率が増加していること、2014年の別の学術誌のフランスの研究でも、一生のうちに携帯電話を896時間以上使用するヘビーユーザーは脳腫瘍発症率が高かったことを紹介している。また、米国保健福祉省下のNTP(毒物調査プログラム)の研究では、携帯電話と同じ無線周波数の電磁波を3000匹以上のラットやマウスに照射し、2年間にわたる照射の結果、最も強い電磁波を浴びた雄には浴びていない対照群と比べて6%も多く心臓に悪性腫瘍が出来た。発症する割合は電磁波が強ければ強いほど高くなった。腫瘍が出来たのは神経細胞を囲むシュワン細胞だった。実験で腫瘍が発生したのはラットの心臓のシュワン細胞だけだったが、この細胞は携帯電話の電磁波を浴びやすい頭部などの部位を含め、全身に存在する。昨年3月にイタリアのラマツィーニ研究所が学術誌に発表した研究でも同じような結果が出た。2448匹のラットに1日に19時間、生まれてから死ぬまで継続して電磁波の照射を行ったところ、最も強い電磁波を浴びた雄のラットで心臓のシュワン細胞に腫瘍が発生する確率が有意に高くなった。米国では胸に常に携帯を保持していた少女にその側で乳癌が発生しており、乳癌専門医はこれまでの事例でも乳癌発生と携帯の保持位置は相関があると主張している。アメリカ癌協会のオーティス・ブローリー医務部長はNTPとラマツィーニ研究所の実験結果は「大きな変化をもたらす研究だ」と述べている。フランスやドイツ、スイス、インド、イスラエルなど少なくとも8カ国は2011年のWHOの勧告を受けて、電磁波を浴びる量を減らすためのガイドラインを発表し、ベルギーとフランス、イスラエルは子供向けの携帯電話の販売を禁止している。2013年にはアメリカ小児科学会(AAP)も連邦通信委員会FCCや米食品医薬品局FDAに対して携帯電話や無線機器に関する基準を見直すように求めているが、現在まで見直しは行われていない。米国や日本での規制がないまま、今年には第5世代を意味する5Gが本格的に稼働する。高周波の5Gは一定方向へ伝播するため、地上の移動体のために多数の衛星を軌道上に配置する。今年だけで20000基の衛星が整備される。地上でも電波の到達距離が短いため都市部では、すべての通りに沿って5Gのアンテナが乱立することになる。これまでの4Gですら長期通話が癌発生確率の上昇につながる可能性が強まっており、個人の持つスマートフォンと溢れかえるコンピュータ機器、家電製品、自動車のIoT機器で、人体への影響はこれまでとは別次元の領域へ踏み込むことになる。参考までにニューズウィーク紙が掲げている注意事項を上げておくと、睡眠時は枕の下にスマフォや携帯を置かないで、1m以上離れたところに置くこと。胸に近接して持たないこと。ズボンのポケットに入れない。靴下など直接皮膚に接触させて持たないこと。個人的には子供に倣ってスピーカーフォンに設定して、耳に当てないで使うようにしている。
職場の裏山にやって来た2頭の雌鹿


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格差が生まれた背景

2019-02-06 19:11:28 | 社会
第二次世界大戦は膨大な軍事費を費やした英国を疲弊させ、国土が無傷で、欧州へ軍需品を輸出した米国を繁栄させた。戦後は、共産主義の台頭もあり、米国は経済力と軍事力で、民主主義的資本主義の盟主となった。この米国の経済運営の基本はケインズ的福祉国家の推進であった。戦前の大恐慌で米国は英国経済学者ケインズが唱える国家財政の出動による経済の浮揚策を取り入れた。いわゆるニューディール政策であった。しかし、1960年代に入ると、ベトナム戦争への軍事費がかさみ、日独などの敗戦国が急激に経済を発展させ、米国は財政赤字と国際収支の赤字を抱えるようになった。ゴールドを裏付けとするドル基軸体制であったため、各国はドルとゴールドの交換を求め、米国のゴールド保有量はたちまち減少して行った。米国はついに1971年、ドルとゴールドの交換を停止せざるを得なくなる。オイルダラーとして、産業のエネルギーである石油の取引をドルで行うサウジアラビアとの密約を取り付けることで、ゴールドの裏付けを失ったドルを基軸通貨の位置に何とかとどめさせることが出来るようにした。しかし、ドイツをはじめ欧州や日本の産業の発展は目覚ましく、米国産業は疲弊してしまった。事態を打開するため、1980年に登場したレーガン政権は新自由主義を掲げて、資本の自由な活動を許すため、規制となるものを次々に撤廃し、資本の自由を阻害する労働組合も弱体化させて行った。と同時に、競争に負けた製造業から金融へと産業を大きく転換した。この新自由主義は自国だけでなく、資本のグローバルな活動を許すために、同盟国へも導入を求めた。米国に対して追従一辺倒である日本は急速に新自由主義を導入し、次々に規制撤廃、民営化と労働組合の弱体化を進めて行った。この時の規制とは敗戦後に設定された民主主義的な福祉を目指した制度である。国家の役割は富の再配分にある。日本は戦後、格差のない国と言われていた。しかし、1980年代からの新自由主義の浸透は、富の再分配機能を次々に排除して行った。これを加速させたのが金融経済の勃興でもある。金融経済とは富めるものがさらなる富を得る仕組みである。米国は日本へ新自由主義を導入することを求めただけでなく、米国に残る製造業を保護するために安い円を改めるよう求めて来た。1985年のプラザ合意で円はその後急速にドルに対して上昇し、円高が進み、日本の輸出産業は大きく打撃を受ける。円高不況となり、これに対して日本銀行は金利を下げて行った。この金利低下が日本の資産価格を押し上げ、いわゆるバブルを生み出した。1991年、ついにそのバブルが崩壊し、日本経済は急降下した。以来、日本では低金利が現在まで長期化している。特に2008年のリーマンショック後にはゼロ金利となり、現政権ではマイナス金利までになってしまった。現政権はマイナス金利により円安を誘導し、日本を代表する大企業のほとんどを米国の金融機関に売り渡してしまった。リーマン・ショック後、先進各国で導入された低金利は資産価格を押し上げ、持てるものをさらに豊かにし、今や世界は格差が拡大し、社会不安が造成されてしまった。フランスのイエローベスト運動もその表れである。日本も例外ではなく、1999年には社会学者の早稲田大学人間科学学術院教授である橋本 健二は『現代日本の階級構造――理論・方法・計量分析』を著している。2006年には一般向けに『階級社会――現代日本の格差を問う』も著した。スイス人の世界的に投資界では知られたマーク・ファーバーMarc Faber氏は今月1日の書簡で、世界の多くの国で進んだ格差拡大について危機感を述べている。「米家計の最富裕層が家計資産増分のすべてを刈り取ったことがわかる。憂鬱になるのは、FRB統計よると、資産下位50%の中央値が2006年以降実際に下落している事実だ。」所得・富の格差拡大のほとんどが量的緩和など金融緩和の産物であり、富める者がますます富むことになった。次の金融危機は凄まじいものになる。その時、世界は社会的にも大荒れになる可能性がある。
オオバンたち
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