昨日から2日間の予定で、日本経済新聞主催で、第25回国際交流会議、アジアの未来|新たな秩序の模索ー混沌を越えて、が開催されている。昨日の基調講演では、最初にマレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相が講演した。92歳になるマハティール首相は、1981年から2003年にかけても首相として、マレーシアの門戸を大きく開き、同国を発展させ、アジア・アフリカの協調と発展を唱えて来た。昨年5月に再び首相となった。経済発展だけでなく、世界の平和と戦争の違法化を目指す運動をも推進して来ている。昨日の同首相の基調講演の内容を、主催した日本経済新聞は、表題を「マハティール首相「米中に自制求める」」として、単に、現在係争中の米中貿易戦に触れた部分のみを強調して報じている。しかし、ロイター通信は、「Malaysia's Mahathir proposes common East Asia currency pegged to gold(マレーシアのマハティール首相、金に連動した東アジア共通通貨を提唱)」と題して、同首相のアジア向け「ユーロ」の立ち上げ提案を重視しており、日本経済新聞はこの件には全く触れていない。“In the Far East, if you want to come together, we should start with a common trading currency, not to be used locally but for the purpose of settling of trade,”“The currency that we propose should be based on gold because gold is much more stable.”と述べ、金(Gold)に基づいた共通の貿易通貨を提唱している。金ははるかに安定しているからだと述べている。現在の外国為替システムの下では、現地通貨は外的要因の影響を受けて操作されていると述べているが、同首相はこれまでにも何度も通貨取引について批判して来ている。その発端は、1997年のアジア通貨危機である。これを引き起こさせた世界三大投資家の一人であるジョージ・ソロスを強く批判して来た。提案された東アジアの共通通貨は、貿易取引の決済にのみ利用し、国内取引には使用しない。現在、中国、ロシア、インドなどのBRICS諸国をはじめ、新興国の中央銀行は金を買い集めており、中国は保有する金をかなり過少に公表していて、一説には3万トンにも達するのではないかとも言われている。もっとも、この中国の金の集積は、国内の過剰な債務に対して、いずれは人民元の切り下げで対処せざるを得ず、その際に、新たな人民元の価値を維持するために、金で裏付けようとするもののようだ。以前のマハティール首相は、中国とは距離を置いていたが、アジア通貨危機を目の当たりにしたためか、再び首相になると、中国に急接近している。首相は、中国の共産主義体制には賛成できないが、それを外的に圧力をかけて崩そうとすることにははっきりと反対であると表明している。東アジアの発展のためには、東アジアが結束して、欧米の経済力に屈することを避けるべきだと考えているようだ。
牡丹