時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

北方の光; フランス・ハルスとジョルジュ・ド・ラ・トゥール

2011年01月14日 | 絵のある部屋
新年を迎えたが、国内も海外も憂鬱でさえない話題ばかりが目立つ。少し、時代を飛んでみよう。また、17世紀への飛翔だ。

 ジョウルジュ・ド・ラ・トゥールと北方ネーデルラント美術との関連については、すでに度々記してきた。ラ・トゥールは明らかに北方美術の影響を受けている。とりわけ、この画家のリアリズムは、ネーデルラント画家たちと深い脈流でつながっている。

 特に、人物を描いた作品が注目される。たとえば、あのデカルトの風貌を知るには、
ハルスの作品が欠かせない。写真がなかった時代、肖像画が持つ情報量は大きい。ハルスは兄弟と思われるフランス・ハルス Frans Hals(1581ca-1666)とディルック・ハルス Dirck Hals(1591-1656)の存在が知られている。弟は小さなジャンル画を描いていた。知名度では、兄のフランス・ハルスの方が著名だ。ハールレムには、フランス・ハルスの名を冠した美術館がある。

 ハルスの家族は16世紀後半、ハールレムにやってきて、衣服・繊維関連の仕事をしていたらしい。当時のハールレムは商工業や美術の中心のひとつだった。フランスは人物画に秀で、当時の画家の周辺にはどこでもいたような人物を、リアルに、しかも自由で屈託のない形で描いている。しかし、彼の修業に関する背景はあまり明らかではない。後年、ギルドの親方職人になったことは判明している。1616年にはアントワープへ行ったことが分かっている。ルーベンスと会ったかもしれない。少なくも、彼の仲間には会っているだろう。生涯では、あのホントホルストやテルブルッヘンに会った可能性もある。ラ・トゥールも採用しているように、半身の人物画が多い。また、しばしばレンブラントの並んでと比較される民兵を描いた集団人物画でも著名だ。

 ハルスの作品には、当時貿易などを通して自由な空気を享受していたオランダ人の面影を伝えるような堅苦しさのない、自由闊達な市民たちの姿が躍動している。北方絵画から多くを学んだと思われるラ・トゥールもハルスに劣らないリアリズムの画家だが、ロレーヌ特有の深く沈潜した人物像だ。対比して眺めていると、さまざまなことが思い浮かぶ。脳にたまった夾雑物がすこしずつ消えて行く。

 



Frans Hals & Georges de la Tour.wmv
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