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【大阪】 国宝 三井寺展 (大阪市立美術館)

2008年12月15日 18時45分40秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
11月18日(火)
当日の行程:(阪急・中津駅) → 【南蛮文化館】 → (阪急・中津駅~梅田駅…大阪市営地下鉄梅田駅~天王寺駅) → 【国宝 三井寺展(大阪市立美術館)】






国宝・三井寺展は、昨日まで。
大阪市立美術館を訪れた11月18日は、気持ちが良いほど空が青かった。
三井寺は、平安時代前期に、智証大師円珍が中興したお寺。
三井寺を訪れたときの記録はこちら

三井寺秘仏のほかにも、国宝、重要文化財がゴロゴロしている展覧会だ。
秘仏7点が出揃う11月26日以降に行きたかったのだが、時間がとれるうちに観ておくことにした。



秘仏・智証大師坐像(御骨大師)<国宝>

円珍の遺骨を納めたと伝わる。
像底には蓋板があり、納入品があると推測される。
唇は厚く、眼はほんの僅か開いている。
卵形の尖った頭の形は「霊骸(れいがい)」といい、円珍の特徴なのだという。
後ろにまわってみると、頭の後ろに皺が1本刻まれていた。



秘仏・智証大師坐像(中尊大師)<国宝>

御骨大師とともに唐院御廟に祀られている。
中央に安置されていることから、「中尊大師」と呼ばれるのだそう。


「秘仏・新羅明神坐像」<国宝>は、実に独特なお顔立ちをした像だ。
明神は、円珍が入唐の帰途、船中で護法を約し、円珍を三井寺へ導いたといわれる。
眉根は寄り、目尻はそれぞれ斜め下45度と言っても過言でないほどに下がっている。
寄り眼をしているみたいな表情だ。
尖った三角形の髭も印象深い。
ユーモラスな雰囲気を纏った国宝だ。



秘仏・五部心観(完本のうち巻首)<国宝>

円珍が青龍寺の法全阿闍梨から授けられ、唐から持ち帰ったもの。
金剛曼荼羅のほとけの姿や真言、印などが描かれている。



秘仏・不動明王立像(黄不動尊)<重要文化財>

円珍が入唐するときに、船中に現れて危機を救ったといわれる黄不動。
「秘仏・不動明王像(黄不動尊)」<国宝>を細部に至るまで忠実に模刻したもの。
今月26日に「秘法・不動明王像(黄不動尊)」がお出ましになるまでは、滋賀・観音寺蔵の「不動明王像(黄不動尊)」<重要文化財>が展示されている。
これは、国宝の不動明王像を模写したものだという。
不動明王立像は、彩色が鮮やかだ。
台座の金と緑も美しい。
堂々とした佇まいだ。



秘仏・如意輪観音菩薩坐像 <重要文化財>

正法寺(三井寺観音堂)の秘仏本尊。
6本の手は、さまざまな観音の願いを象徴しているのだそうだ。
その手のかたちが自然で美しい。
まるい柔和な感じのお顔立ちを目にしていると、穏やかな気持ちになる。



千手観音菩薩立像<重要文化財>

三井寺の別所如意寺の本尊。
一木造。
どっしりとした胴体から、羽のように手が出ている。
飛び立ちそうな感じだ。



十一面観音菩薩立像<重要文化財>

三井寺の別所微妙寺の本尊。
右足を少し前方に出し、「休め」のポーズをとっている。
頭は大きく、幼児のような体型をしている。
腕は膝に届くほどに長く、足は短い。
不思議な感じのする仏像だ。



訶梨帝母倚像<重要文化財>

右手には多産のシンボルである柘榴の実を持ち、左手に子どもを抱いている。
三井寺の護法善神堂に祀られている。
やさしい表情をしている。



不動明王坐像(9世紀)

この展覧会の調査で、新たに確認された像なのだという。
現存する不動明王像のなかでは、最古クラスのものなのだそう。
玉眼は、後世に入れられたもの。
この像の隣に、三井寺・唐院長日護摩堂の「不動明王坐像」が展示されていた。
それに比べると、筋骨隆々というわけではなく、わりとすっきりとしている。




狩野光信筆・勧学院客殿障壁画 四季花木図<重要文化財>

会場の一空間を取り囲むようにして、展示されている。
足を踏み入れた瞬間、ゾクッとした。
照明が凝っていて、「一般的な展覧会での照明」と「ろうそくのようなあかり」に交互に照らされる仕組みになっている。



狩野愛信筆・金倉寺客殿壁画 虎図

これは、香川県の金倉寺の障壁画。
円珍は、金倉寺で誕生したそうだ。
虎が3頭描かれている。
右端で這いつくばっているのと、中央よりやや左側で寛いだ体勢でいるのと、それに守られるようにしている子どもの虎と。
おかしみのある表情をしていて、漫画のようだ。
これは、三井寺の日光院の襖絵を模したものらしい。


ほかには、
「円珍贈法印大和尚位幷智証大師諡号勅書 小野道風筆」<国宝>は、小野道風の重厚な書体にうっとり。

「大蔵経(足利尊氏願経)」<重要文化財>は、後醍醐天皇の冥福を祈願したもので、最後の行に記された「征夷大将軍正二位源朝臣尊氏謹誌」の「尊氏」のみが本人自筆だという。
丸みや勢いが感じられない木の枝のような文字。

歌川広重の「本朝三景之内 近江八景寄縮一覧」は、大判三枚続の見応えあるもの。
堅田、矢橋、瀬田、石山、三井寺、粟津、比良、唐崎の近江八景すべてが収まっていて楽しい。

「西国巡礼細見絵図」では、関東からの巡礼者がお伊勢詣に続けて西国巡礼をすることができるように、出発地が伊勢山田になっている。
巡礼路は朱で記されている。
これを辿って西国巡礼してみたいなあと思う。
でもこれ、かなりの距離だぞ。

帰りの地下鉄の駅で、思いがけず、「不動明王像(黄不動尊)」<国宝>と「不動明王立像(黄不動尊)」<重要文化財>の並んだお姿を拝むことができた。
ポスターだったけれど。