11月17日(月)
当日の行程:(大阪市営地下鉄・谷町4丁目駅) … 【江戸と明治の華-皇室侍医ベルツ博士の眼-(大阪歴史博物館)】 → 【豊國神社】 → 【大阪城】
「ベルツの日記」を読みながら地下鉄に乗った。
夫が先に読みかけていたのだけれど、この展覧会に行くまでに少しだけでも目を通したくて我がままを言った。
まだ上巻を100ページばかり読んだところだが、なかなか面白い。
ベルツが30年間の日本滞在中に蒐集した美術品は、約6000点にもなるそうだ。
その中から、今回の展覧会では170点余りが展示されている。
ベルツのコレクションは、フェノロサのコレクションのような権威主義に基づいたものではないという。
自らの趣味と鑑識眼に適ったものだけがベルツの周りに集められた。
無名の作家の手によるものも多くあり、それもまた新鮮で、観るものを楽しませてくれる。
川又常行「納涼図」(江戸時代中期・18世紀)
右側に描かれているのは、遊女と遊女見習いの禿(かむろ)。
着物の模様と色が美しい。
遊女らの視線の先では、子どもが二人、花火を楽しんでいる。
川の上に浮かんだ月が涼しげだ。
柳がそよそよと風になびく音と、花火のパチパチという派手ではなく微かな音が聞こえてくるようだった。
建部巣兆「桜花寛永美人図」(江戸時代後期・19世紀)
桜の花の下、女性と犬とが見詰め合っている。
女性の表情は犬をいつくしむ気持ちに満ちていて、犬のほうは主人に忠実を誓うような視線を向ける。
こういう光景には、たまらなく心が惹かれる。
谷文晁「倣日観葡萄図」(文政11年<1828>頃)
枝のかすれた感じと、葉の濃淡が美しい。
淡色であるのにもかかわらず、実がみずみずしく感じられる。
大西椿年「群亀戯画」(1830年代)
江戸時代には、市中各所で放生用の亀が売られていたという。
この亀を買い、放してやると功徳になるそうだ。
放たれて、遊び戯れる亀たちの姿が描かれている。
扇を銜えて踊る亀、太鼓をたたく亀、三味線を弾く亀、何やら台車のようなものを引っ張る亀。
自由になった喜びようはすさまじい。
酔っているのだろう、舌が赤く染まっている。
実に愉快な作品だ。
墨の濃淡と、にじみがまた良い。
池田孤村「蓮池図」(安政6年<1859>)
「品」という語が頭の中に浮かんだ。
静かで、しっとりとした美しさのある絵だ。
蓮といえば、山本梅逸の「紅蓮華図」(弘化元年<1844>)も展示されていた。
こちらもよかった。
作者不詳・栗鼠置物(明治時代・19世紀)
愛らしい。
ベルツはこういう可愛らしいものが好きだったのだろう。
他にも数点展示されていた。
「大根鼠置物」(作者不詳・明治14~18年)は二股大根の上に鼠が乗ったデザイン。
鼠は大黒天の使い。
二股大根は子孫繁栄を象徴しているのだという。
それから、置物ではないが、「鼠に宝尽し小箱」(作者不詳・明治時代)も忘れられない。
象牙で作られた鉤、宝珠、丁子、巾着などの宝物がちりばめられた小箱の上と側面に鼠がいる。
単なる可愛らしい箱ではなくて、側面の鼠が穴から頭を出したり引っ込めたりするカラクリ箱になっているのだそうだ。
そのさまを実際に見てみたいものだ。
可愛い、というのとはちょっと違うが、変わった形のこんなものも展示されていた。
竹に雀蒔絵提重(作者不詳・明治時代)
重箱の模様は筍と竹林の雀。
模様だけでなく、徳利の形が筍そのもの。
取っ手には、竹の節のような細工が施されている。
河鍋暁斎「獣群舞図」(明治時代・19世紀)
猫も狐も狸も兎も猪も、みんなみんな、踊り狂っている。
中央で琵琶を弾き鳴らす猫の、ふてぶてしい表情がイイ。
〆が暁斎というのが嬉しかった。
ほかにも、帷子や印籠や蒔絵の作品など、数多くの名品が里帰りしていた。
このまま故郷にとどまっておくれ、と言いたくなった。
当日の行程:(大阪市営地下鉄・谷町4丁目駅) … 【江戸と明治の華-皇室侍医ベルツ博士の眼-(大阪歴史博物館)】 → 【豊國神社】 → 【大阪城】
「ベルツの日記」を読みながら地下鉄に乗った。
夫が先に読みかけていたのだけれど、この展覧会に行くまでに少しだけでも目を通したくて我がままを言った。
まだ上巻を100ページばかり読んだところだが、なかなか面白い。
ベルツが30年間の日本滞在中に蒐集した美術品は、約6000点にもなるそうだ。
その中から、今回の展覧会では170点余りが展示されている。
ベルツのコレクションは、フェノロサのコレクションのような権威主義に基づいたものではないという。
自らの趣味と鑑識眼に適ったものだけがベルツの周りに集められた。
無名の作家の手によるものも多くあり、それもまた新鮮で、観るものを楽しませてくれる。
川又常行「納涼図」(江戸時代中期・18世紀)
右側に描かれているのは、遊女と遊女見習いの禿(かむろ)。
着物の模様と色が美しい。
遊女らの視線の先では、子どもが二人、花火を楽しんでいる。
川の上に浮かんだ月が涼しげだ。
柳がそよそよと風になびく音と、花火のパチパチという派手ではなく微かな音が聞こえてくるようだった。
建部巣兆「桜花寛永美人図」(江戸時代後期・19世紀)
桜の花の下、女性と犬とが見詰め合っている。
女性の表情は犬をいつくしむ気持ちに満ちていて、犬のほうは主人に忠実を誓うような視線を向ける。
こういう光景には、たまらなく心が惹かれる。
谷文晁「倣日観葡萄図」(文政11年<1828>頃)
枝のかすれた感じと、葉の濃淡が美しい。
淡色であるのにもかかわらず、実がみずみずしく感じられる。
大西椿年「群亀戯画」(1830年代)
江戸時代には、市中各所で放生用の亀が売られていたという。
この亀を買い、放してやると功徳になるそうだ。
放たれて、遊び戯れる亀たちの姿が描かれている。
扇を銜えて踊る亀、太鼓をたたく亀、三味線を弾く亀、何やら台車のようなものを引っ張る亀。
自由になった喜びようはすさまじい。
酔っているのだろう、舌が赤く染まっている。
実に愉快な作品だ。
墨の濃淡と、にじみがまた良い。
池田孤村「蓮池図」(安政6年<1859>)
「品」という語が頭の中に浮かんだ。
静かで、しっとりとした美しさのある絵だ。
蓮といえば、山本梅逸の「紅蓮華図」(弘化元年<1844>)も展示されていた。
こちらもよかった。
作者不詳・栗鼠置物(明治時代・19世紀)
愛らしい。
ベルツはこういう可愛らしいものが好きだったのだろう。
他にも数点展示されていた。
「大根鼠置物」(作者不詳・明治14~18年)は二股大根の上に鼠が乗ったデザイン。
鼠は大黒天の使い。
二股大根は子孫繁栄を象徴しているのだという。
それから、置物ではないが、「鼠に宝尽し小箱」(作者不詳・明治時代)も忘れられない。
象牙で作られた鉤、宝珠、丁子、巾着などの宝物がちりばめられた小箱の上と側面に鼠がいる。
単なる可愛らしい箱ではなくて、側面の鼠が穴から頭を出したり引っ込めたりするカラクリ箱になっているのだそうだ。
そのさまを実際に見てみたいものだ。
可愛い、というのとはちょっと違うが、変わった形のこんなものも展示されていた。
竹に雀蒔絵提重(作者不詳・明治時代)
重箱の模様は筍と竹林の雀。
模様だけでなく、徳利の形が筍そのもの。
取っ手には、竹の節のような細工が施されている。
河鍋暁斎「獣群舞図」(明治時代・19世紀)
猫も狐も狸も兎も猪も、みんなみんな、踊り狂っている。
中央で琵琶を弾き鳴らす猫の、ふてぶてしい表情がイイ。
〆が暁斎というのが嬉しかった。
ほかにも、帷子や印籠や蒔絵の作品など、数多くの名品が里帰りしていた。
このまま故郷にとどまっておくれ、と言いたくなった。