最新の審美&インプラント日記

天王洲アイル・天王洲インプラントセンター 小川勝久先生による審美とインプラント治療の日記と情報

2006年に向けて。審美性VS長持ち

2005-12-29 14:10:04 | Weblog
近年 審美歯科治療は急激な進歩を遂げた。セラミックや高分子の技術革新によるラミネートやオールセラミック法、そして、骨造成や組織移植による再生法。これらの技術を応用することから、インプラントにおいても天然歯を上回る綺麗な歯を取り戻すことが出来ようになりつつある。
しかし、歯を失った原因や、歯槽膿漏に至った生活習慣の改善への、治療後の取り組みは置き去りになっているように思われる。
また、咬合関係つまり、その神経筋機能との調和を考慮した位置や高さ等の問題は、インプラントの骨接合を脅かす問題で或る事であるのに拘わらず、表面に表れるセラミックの美しさや審美性に、患者さんやそして医師されも囚われすぎているように思われる。

そして、歯科医療の最大の目標の一つは、‘長持ち’である。この‘長持ち’には、審美性と相反する材料や方法を取り入れなければならないことに、もう一度、目を向けなければならいと思う。
つまり、例えば、奥歯の詰め物では、白い自然な色調をもつセラミックと、金属色のプラチナに代表される2つの方法がある。セラミックの詰め物は、色や見た目はたしかに良い。が、その為には、健康な歯の削除量が深く、大きくなることを受け入れなければならない。また、インプラント治療の利点の一つである‘ネジによる固定’は噛み合わせのトラブルや周囲の歯になんらかの問題が遭ったとき、等に、‘取り外して対応できる事’が、患者さんにとっても医師にも有益なことなのである。しかし、この‘ネジによる固定’が表面に現れることが審美性を阻害する

無論、この相反する問題や欠点を考慮しカバーする方法は存在する。が、その為には、さらに良質な材料や高度な技術が要求され、費用も当然加算される。
例えば、前述の詰め物で言えば、細かく薄くても割れないようなセラミックやジルコニアのような材料を応用したり、技術に優れた技工士が特殊な顕微鏡を用いて作成することで可能になる。
インプラント治療でも、複雑な2重ないしは3重の上部構造。つまり、ネジ固定の土台を作成し、その上にセラミックを被せたり、(場合によっては、ネジ止めする土台もセラミックやジルコニアで作成し)応用することで、技術的には現在も対応できるようになっている。しかし、この場合の材料や技術に関わる費用や複雑な工程を患者さんも医師も理解しなければならない。
その上で、患者さんにも医師にもあえて問いたいのだが、、、。「審美性と長持ちのどちらを最優先しますか?」

来年2006年。来年も4回、私と当院(天王洲インプラントセンター)では、経験の浅い歯科医や審美領域のインプラント治療の為に、実際の手術見学と模型実習から学ぶ‘審美領域でのインプラント治療’の講義や研修を予定(第1回 3月5日日曜日)しています。
しかし、それ以上に、私自身が、もう一度、審美歯科や審美的インプラント治療について、勉強や研究を行いたいとおもいます。一つは、今年も参加したAAED(米国審美歯科学会)やヨーロッパの審美学会(イタリアやフランス)に参加する事。また、私と当院の審美的インプラント治療のケースを学術雑誌に投稿しご批判を仰ぐ事。そして、審美的治療に関わる技術の研修会に参加しトレーニングを受ける事
これらの事から、前述の‘問い’についての答えが、出せる2006年にしたいと思います。