最新の審美&インプラント日記

天王洲アイル・天王洲インプラントセンター 小川勝久先生による審美とインプラント治療の日記と情報

審美歯科と長持ち

2009-07-28 13:50:13 | Weblog
審美歯科への提言

歯科医になって27年・・・。私の専門は、セラミックの被せ物や義歯といった‘補綴学’という分野です。大学の医局時代や学位(博士)の研究は、歯の色。このような経緯から、‘審美歯科’という、綺麗に歯を治す方法を、日々の診療の中でも考えてきました。

しかし・・長く患者さんや、治した歯も含めて接していると、本来の医療(歯科)は、『長持ち』が最優先されるのではないかと、考えを改めるようにもなってきました。

無論、銀歯よりもセラミックの白い歯の方が良いに決まっていますし、義歯にしても、噛めて・落ちず・見栄えも良いものが理想でしょう。
しかし、そのためには、付加的な治療(場合によっては、必要の無い治療)や経済的負担が大きく、また、その結果や予知性には不確実な現実があると言えるのです。

こんなふうに書くと、患者さんは心配したり不安に思うかもしれませんが・・。
ホワイトニングや矯正治療の後戻り・・セラミックの破折・・・セラミック冠の歯肉の後退・・ 骨移植の吸収・・・歯肉移植の吸収・・時として、これらは本当に起こってくるものなのです。

判りやすく言い換ますね! 特にインプラント治療に‘審美’を求めると、その為に付加的な手術(骨の移植や歯肉の移植)や土台にもセラミックやジルコニアを求めることになるのですが、そうなると、手術の回数や費用も多く掛かってしまうということなのです。で、その痛みに耐えて、費用も出したにも拘らず、セラミックが‘割れる’という最悪な結果になる事もなるのです。

歯科医療の急激な進歩を遂げていますが、しかし、その結果が安定し長い予知性については未知数だとも言えます。

上手くいった事例や治療が、常に成功し、綺麗になっているHPや宣伝を眼にしますが、実際には、そんなに甘くないということは確かな事です。

長持ちの為には・・・・ お口の中を一体として考えて、上下・左右の噛み合わせや総合的に治療する事。じつは、この‘一体として’‘総合的に’という事が最も大切な事かもしれません。

PS 写真は、お口の中が虫歯や歯槽膿漏でボロボロになってしまった方へ、2年の治療期間は掛りましたが、全体を総合的に直させて頂きました。その治療終了・6年後の術前・術後です。



インプラントのエイジング

2009-07-20 20:07:36 | Weblog
インプラントのエイジング

18日土曜日 九段下で開かれた、オッセオインテグレーション(骨接合)の学会に参加しました。午後は、UCLAのワイントロープ研究所で、骨接合の研究をしている、小川隆広・准教授の講演だった。内容は、チタンの表面に骨がどのように接合(遺伝子学的にどうなっているのか)するかという事・・・・チョッと難しい話になってしまいますが・・・「骨の表面に骨を作れ!」って命令を出して骨を作る遺伝子が、インプラントの表面に出現するのですが、この遺伝子が好むインプラント表面はどんなものが良いのか、また、その骨質はどうなのか・・・・(インプラントの表面の骨は固い骨なのですが)等でした。
また、インプラントの表面は、劣化(チタン表面の変化)によって、骨接合の程度も落ちる事や、その解決策のお話でした。
特に、インプラントの表面(チタンの表面)は時間と共に変化し、なんと!製造直後に比較して一ヶ月経ったものでは、その骨接合の程度は半分にもなってしまう!・・
その劣化したインプラント表面に、ある光をあてると、新品以上に骨接合の程度が上がるという事でした。
つまり、骨との接合力が低下した古いインプラントが、若返って、骨接合力の増大した新しいインプラントになるという事なんです!!!!!

この研究は本当に画期的なもので、歯科での患者さんだけでなく、整形外科・医学界に大きく変化や恩恵を及ぼすものなのです。
これまで、多くの学会に参加してきましたが、拍手が鳴り止まない講演を聴いたのは初めてでした。 久々に学会で感動し興奮した時でした。

PS 全く話が変わりますが・・・
学会のあとに友人の先生と食事に行ったレストランで、お酒は‘トンガ・パンチ’でした・・。
暑苦しく不景気の日々が続くので、たまには南国情緒あふれた、洒落たレストラン‘トレーダービックス’で暑気払いでもいかがでしょう。

『骨移植の難しさ・・・・』

2009-07-12 00:23:39 | Weblog
『骨移植の難しさ』とは・・

7日のブログの事で、歯科医の先生には、もうチョッと補足しようと思って・・。
骨移植では、外科的手技の難しさは、いわゆる健康な骨を何処からどのようにして採取して、どのように固定するかという3つの問題がありますよね。

写真は、上の前歯を失って、骨が痩せてしまった部位へ‘下あごの奥’から骨を採取して、ピンで留める‘ブロック骨移植法・ベニアグラフト’の写真です。 写真で判るように麻酔医の下、静脈内鎮静法(深鎮静法)で、手術を私が行いました。

まず、上アゴの陥凹(骨が溶けて吸収した所)の形状や大きさに合わせて、下あごのレイマス(下顎枝前縁~大臼歯部)からピエゾを用いて骨を採取。採取した骨を、その陥凹にピッタリ適合するように削って調整します。
骨は骨髄血から再生が促されるので、移植される骨側(母床骨)に、デコルチケーションと呼ばれる小孔を開け、骨髄血を出させます。
移植骨にも小孔を開け、血流を確保し、ピンにてしっかりと固定します。この固定は重要で、しっかり固定しないと生着しない場合もあります。(動くと骨芽細胞は、繊維芽細胞に変異し、骨化しないのです)

この後、粉砕骨等にて、母床骨との隙間を埋めて、丁寧に縫合します。この時、写真のようにピッタリした適合性が得られていれば、ゴア膜等は必要無いのです。(むしろ、膜が介入する事で血流が阻害される事もあるのです)

このように骨の移植は‘大胆さの中に繊細さ’を持ち合わせて、ないかつ的確かつ丁寧な手技が要求されるのです。

PS 患者さんの皆さんへ。怖い写真と、専門的な説明ですみません。ただ、‘骨の移植は簡単ではない’と解って頂けると良いとおもいます。患者さんの協力と理解には本当にいつも感謝しております。

お願い! わかって・・・治療費ついて。

2009-07-07 17:57:56 | Weblog
お願い! わかって・・・治療費ついて。

一般的に云えば・・インプラントの治療費って高額ですよね? たしかに‘歯’の価値観や歯科医療への捉え方はさまざまで、患者さんそれぞれでも異なるので、一概に答えはでませんよね。
* 写真は若い美人の患者さんで、前歯が先天的に奥にあり、根も骨も溶けて、大変お困りでした。骨の移植と歯肉の移植も行い、その後いんプラント治療で治しました。

ただ、失った前歯や歯を見栄えも綺麗に治そうとした場合には、インプラント治療に別の問題が起きるのです。(うーん・・文章が硬い!)
その一つが骨の量です。じつは、インプラント治療が必要な部位や歯の周囲では骨が溶けたり凹んでいる場合が多いのです。特に、前歯の骨は奥歯に比べ薄くて、少ないのです。
その上、女性では歯肉も薄い事が多いのです。
(奥歯でも骨が溶けている場合では骨の移植が必要なんですよ)

じゃ、骨の移植の費用ってどれくらいなのかというと・・。というより‘骨の移植’が出来る技量のある歯科医は少ないのです。で、骨の移植の費用ですが、一般的は部位や量にも異なりますが、小さな範囲では10万円~上顎洞への広い範囲では40万円程度。左右の前歯6歯分や左右の上顎洞への骨の移植では60万~80万円に及ぶ事もございます。

インプラント治療は骨さえあれば、とくべつ難しい治療ではございません。問題は骨なのです。 だって、骨が溶けて・・歯がグラグラしてくる訳で、その歯が抜けたところは、骨が溶けているのです
さらに、骨が溶けて歯肉が痩せるのす。ですから、骨だけ増やしても歯肉は増える事は少ないのです。
* うーん・・・まだ、説明が難しいですか?

で、歯肉の移植は、上アゴの裏から‘結合組織’と呼ばれる歯肉を取って移植する事が多いのですが、その費用は小さな範囲で5万円から10万円。大きい範囲では20万円程度です。
また、この‘歯肉の移植’はとても繊細で難しい治療なのです。 おそらく、骨の移植や歯肉の移植が上手に出来る歯科医は、1%程度あるいはそれ以下程度かもしれません。それくらい特別なトレーニングや教育を受け、そして器材も必要な高度で難しい治療なのです。

ですから! 当然、骨や歯肉の痩せた部位や、見栄までもインプラントで治そうとすると治療が高額になってしまうのですよ。

一部のHPや雑誌で、よく安いインプラント治療の広告や案内を見ますよね。この安い治療を掲げている医院や先生達の多くは、骨の移植や歯肉の移植が上手に出来ないのです。
ちょっと言い過ぎと怒られるかもしれませんが、このような一面もあるのです。

誰だって、安い治療費の方が良いと良いでしょう。でも、医療の価値と安全には‘安過ぎる’事には問題があると思います。

歯科医の先生達へ たしかに移植材(骨・結合組織)を使い、膜を使えば、簡単に上手くという研修や講演もございます。ただ、骨は骨髄血から出来、軟組織の安定や生着には血液供給が必須です。この事から、移植材を入れただけでは骨にはならないし、膜を使えば血流を阻害する訳ですから、そう簡単には出来ない事が、チョッとは理解していただけますよね。