チョッと難しいけど・・・上アゴのインプラント治療で骨量が足りない時に‘上顎洞挙上手術’(サイナスリフト)という骨移植を併用することがあります。
これは、上顎洞底部から洞底粘膜を剥離、挙上し、その間隙に骨を移植する術式で、口腔外科の世界では25年以上前から行なわれている方法です。1994年にSummersが外科的侵襲が少なく、骨の移植量も少量ですむ方法として考案したのが‘ソケットリフト’と呼ばれるものです。その名前からイメージできるように、部分的に骨量を回復し同時にインプラントが可能な方法として今では広く応用され始めています。
* 僕のコース(歯科医師に対するインプラント研修)でも、ソケットリフトの実際を模型実習と手術見学を通じて教えています。
その反面、このソケットリフトは、オステオトームと呼ばれる器具を使い、洞底粘膜を挙上していく為、目視できず、剥離や挙上が確認できないとう欠点も存在しているのです。また、既存骨の上下的骨量が最低5mm必要でもあり、決して全員の患者さんやケースに有効と言うわけではありません。
また、CT(断層撮影)が必須ですし、ブラインドテクニックとなる為、術者の技量が大きくその結果を左右してしまうのです。
* 写真はそのソケットリフト後の典型的な術後のレントゲン写真です。
PS1 患者さんへ 上顎でのインプラント治療も決して難しい事も無いのですが、CTの撮影や、解剖学的知識を十分に兼ね備え、設備や経験、技量を伴った医師や医院を選んで治療を受ける事をお薦めします。
PS2 歯科医の読者へ 11月発売の日本歯科評論社から‘歯科医療を見える化する’という本が出版予定です。その中に、稚拙な文章ですが、「デジタルリニアトモグラフィーをインプラント治療に生かす」(仮題)で安全なソケットリフト治療法について書いてみました。ご一読頂ければ幸いです。
という事で、このブログの読者の皆様の参考になれば嬉しく思います。