観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

百聞と一見

2013-06-19 23:08:23 | 13.6
3年 銭野 優

 私の通っていた幼稚園ではヤギを飼育していた。私はこれがきっかけで動物に興味を持ち始めたのだが、都市部に住んでいたので、虫やザリガニを採るなどといった経験はほとんどなく、動物といえばテレビで見たものだけであった。
 そんな私が大学で野鳥研究部に入り、四季の変化を意識するようになった。意識するというより、「味わう」というほうが近いかもしれない。春を告げるように囀り始めるヒバリやメジロ、夏の山に響く杜鵑(とけん)の声、秋の終わりに南へ渡るタカ類、冬には各地の川や海に飛来するカモ等、それまで自然を意識して見ることのなかった私にとって生き物のリアルな生活を覗き見ることは実に新鮮だった。テレビで見たり、本で読んだりしていたことが目の前で繰り広げられるのをみて夢中になってしまった。
 「百聞は一見に如かず」であるが、これにはまだ先があるそうで、「百見は一考に如かず」「百考は一行に如かず」「百行は一果に如かず」と続くらしい。これらは研究活動そのもののことだと思う。私はフィールドワークをおこなう者として「見えないものを見る」ことや「見つけ」たいと思う。しかし、動物相手ではすべてこちらの都合というわけにはいかず、そのためには工夫や考察が欠かせない。そのようなときでも、細やかな「一見」の喜びを大切にしたい。明日は何が見られるか、楽しみである。