観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

ご退官おめでとうございます ― 蝶友達として

2015-03-02 23:34:53 | 15
東北大学の同級生で昆虫と海外旅行が好きで気の合った橋爪さんから最終講義に参加するという連絡をもらいました。

橋爪善博

 無事退官を迎えられおめでとうございます。好きな仕事を存分にこなされ素晴らしい半生でしたね。沢山の成果もあげられて羨ましい限りです。7日のご講義にはぜひ出席させてください。
 唱歌[故郷]の生態学も面白く拝読しました。我々の年代にはまさに頭にこびりついている記憶と重なっており大変興味深い内容でした。人の文化・社会と自然・生態系が深くかかわって変遷していることを再認識します。
 我が家近くを流れる“野川”(国分寺崖線下)の茅場がなくなりギンイチモンジセセリやツマグロキチョウなどの普通種が絶滅してしまった一方でカワセミ、鯉などがしぶとく生き残り、新たにアライグマなどが繁殖している実態と重なります。そういえば私が長く通勤した会社が日本橋茅場町近くだったこともあり「茅場」のかかわる江戸の歴史を感じました。
 私も第一三共退社後暫く関わっていたドイツの製薬会社の顧問をこの3月末で完全リタイアします。時間があればたまにはお付き合いください。

追伸 この2月に出かけたマレーシア中部山中で撮った野生アカエリトリバネアゲハとモリノオナガシジミの写真を添付します。


アカエリトリバネアゲハ:Trogonoptera brookiana brookiana(マレーシア中部の町Tapahから20マイル程東の山中にて撮影), マレーシアの国蝶。昔欧州の探検家がこのチョウをニューギニアで初めて見たとき(鳥と間違えて?)銃で撃ち落としたというエピソードが有名です。今は国際的に保護蝶扱いで、野生のトリバネをみるという夢がやっとかないました。


ポンピング(吸排水)するアカエリトリバネアゲハ


モリノオナガシジミ:Cheritra freja(マレーシア・ランカウイ島Dataiにて), 英名 Common Imperial と呼ばれる妖精のような蝶です。わりと普通種と思っていましたが今回は一週間以上マレーシアに居てわずかに一頭だけ熱帯雨林の中で出会っただけでした。

 このところ蝶の写真撮りにはまっています。近郊にも平地性ゼフィルス六種などが生き延びています。モンゴルのParnassius情報も知りたいです。

追記:ギンイチモンジセセリ Leptalina unicolar 昭和40年代までは多摩川/野川の河原に多数生息していたが食草のススキ、チガヤが減少して今は壊滅状態。
ツマグロキチョウ Eurema laeta betheseba: 同じく都内を含めてどこにでも産していたが、全国的な河川改修で食草カワラケツメイが帰化植物にとってかわられたことから今は絶滅危惧種に指定されている。私の好きな懐かしい蝶なので今年はわずかに残る生息地・鬼怒川にでかける予定です。

高槻の註:ゼフィルスというのはミドリシジミの仲間で、樹上性でオスの翅がメタリックに輝く蝶。Parnassiusというのはアゲハチョウ科の属で、ウスバシロチョウなどに近い。アポロ蝶と呼ばれる。橋爪さんは東北大学理学部生物学科の1年生のときから昆虫好き、海外旅行好きで、仲良くしていました。ご覧のように写真の腕前も達者です。

総合芸術のような

2015-03-02 21:52:51 | 15
内山 隆(千葉経済大学)
高槻成紀 様

 先日は、私のこれまでの人生を固めるための一日半になりました。多くの方と会い、話すことができました。皆さんが互いの人生を確認しあえたのだと思います。
高槻さんと過ごすことのできた6年だけではなく、さらに高槻さんが接してこられた数十年に及ぶ人間関係の中に入れていただけたことに感謝いたします。
 最終講義は、総合芸術のような文武両道の才が形になったようでした。自分の興味から発した核が、場を得て時間とともに形を整え、いくつもの枝葉を広げ花をつけ、その花の核には、起点につながる「回帰」があった。というふうに解釈しています。
 いまいる千葉では、東北大学時代の原慶太郎さんや原正利さん、東京に戻られた辻村さんにも支えられております。今回は、鈴木和男君の力に頼りましたが、富田さんとも宿泊先で大いに話ができ、普段の希薄な人間関係を一気に埋めてくれるようでした。時や場を共有できた東北大学の時代は、過去になっていませんでした。改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。



内山さんは私が東北大学の院生時代に大学院に入ってきて花粉分析の専門家になられました。分野は違いますがよく議論をし、野外調査にもいっしょに行きました。(高槻)


最終講義と仲間集め

2015-03-02 21:46:45 | 15
鈴木和男(田辺市)
高槻様
 最終講義は念入りに構成されていて、中身の濃い、聞き手を引きつける90分に感じました、話がきれいにまとめられていて、最終講義を聞くと、高槻さんがまったく無駄のない、ロスの無い研究生活を過ごしたかの印象すら受けました(失敗や遠回りされたこともあったと思いますが)。話が上手いなあ、脱帽です。 
 今回、南さんから最終講義と記念パーティの連絡をいただき、私が連絡係をさせてもらいました。何人もの方にお手伝いいただき、7日のことをできる限り広範囲にお知らせをしたつもりです。お知らせが漏れた方も多数いらっしゃるかと思いますが、どうかご容赦ください。あれだけ多くの懐かしい顔に再会できましたこと、改めて高槻さんに感謝です。

鈴木さんは私が院生のときに研究室に入ってきて、若手助手のときにいっしょに野外調査や分析をしました。最終講義でも金華山のシカの大量死のときにいっしょに回収した人として紹介しました。性格はまったく違うのに弥次喜多コンビでアメリカ、中国などいっしょに行きました。ザンビアでカバの調査もしました。現在は和歌山でアライグマの研究をしています。今回は東北大の旧友集めて大活躍してくれました。(高槻)


来てもらってよかった

2015-03-02 21:43:29 | 15
政岡俊夫(前麻布大学学長)
高槻先生

 ご苦労様でした。先生を本学に迎え入れ本当に良かったと、最終講義を拝聴いたししみじみ感じておりました。
 動植物のつながりを初対面の淵野辺の居酒屋「散歩道」でご教唆いただき、食物連鎖をリンク(環)にして以来、本学の教育の理念にできたことや、モンゴルの複数の機関との協定、何よりも獣医学部棟の展示が充実したことなど、本当にありがとうございました。
 最終講義当日はご挨拶も致さず失礼をいたしましたが、先生をご紹介くださった林良博先生に久しぶりにお目にかかることもでき、小生にとりましては有意義な最終講義で感謝いたしております。
 いのち博物館開館に向けて今後ともどうかよろしくお願いいたします。

政岡先生にはたいへんお世話になりました。今年の夏に「動物の生・命(いのち)」(仮題)を出版予定で、政岡先生には「まえがき」をお願いしました。(高槻)

最終講義を聞いてー金華山仲間

2015-03-02 21:35:17 | 15
中川 尚史

高槻さま

 これまで私が拝聴した最終講義では、「何の研究をしてきたか」を述べられることは多いのですが、その結果「何が分かったか」、「何を発見したか」まできちんと話されることは少なかったように思い、その点でたいへん感銘を受けました。また、スケッチがお上手なのは存じ上げていましたが、漢詩の素養までおありだったのは新発見でした。そして何よりすばらしいと思ったのは、東北大学、東京大学、そして麻布大学と3つの大学を渡り歩かれ、それぞれで学生を育てられていることで、それがよく分かった最終講義であり記念パーティーでした。今後も直接学生を指導されることはなくなるにせよ、著書を通じて若い人を育てていかれることと思っています。かくゆう私も高槻さんのご高著はすべてではありませんがいくつか拝読させていただき、活用もさせていただいています。活用のひとつが、このHP(http://www.nikkei.co.jp/nyushi/2015/honshi/kyoto.html)の「生物」にあります。お暇なときにご覧下さい。


中川さんは私が東北大学の助手のころ、金華山の調査を終えるとよく研究室に来てくれました。サルの食について新分野を開拓し、アフリカでもさまざまなサルを研究し、最近では日本各地のニホンザルの「ハグ行動」の違いの存在と意義について指摘し話題を呼びました。(高槻)