観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

たまにはつまみ食い

2012-12-27 12:28:42 | 12.12
修士2年嶋本祐子

 ハナムグリってご存知でしょうか?都会でもよく見られる甲虫です。花に潜って蜜や花粉を食べるので、花潜り、ハナムグリ。私が調査でよく出会ったのは小型のコアオハナムグリで、体長は11mm~16mmほど。花粉を運んで花の受粉を助ける、訪花昆虫の1種です。
 どうやって花粉を運ぶのでしょう?花に潜ってもぞもぞ、体表の細かい毛に花粉をびっしり付けます。

タンポポの花粉をまとうコアオハナムグリ 2012.05 アファンの森

 どうやって食べるのでしょう? 食事中は頭を花に突っ込むため、なかなか口が見えないのですが、ハチやチョウのようなストロー状の口吻を持っていないので、舐めるようにしてもぐもぐ食べるようです。

コアオハナムグリ拡大 2012.06アファンの森

 どんな花を利用するのでしょう?体が重くて小さい花にとまれないため、大きな花や花茎が丈夫な花を、また、細かい飛行コントロールができないため、写真のような上向きの花を利用するようです。

ユウガギクとコアオハナムグリ 2012.09 アファンの森

と、本や図鑑にはこのように記されていますが…。実際に野外で観察すると、小さい花にとまろうとするコアオハナムグリによく出会います。ですが、やはり花は重さに耐えきれず、しだれてしまったり、花ごと落ちてしまったり、失敗に終わってしまうようです。コアオハナムグリも一緒に落下します。
 次なる挑戦はハチやチョウが利用するクサフジ。蜜と花粉は花弁で蓋をされた花の奥に隠されているため、ハナムグリの仲間はめったに利用しないはずなのですが…こじあけて頭を突っ込んでいました。

クサフジとコアオハナムグリ 2012.09 アファンの森

 予想外の訪問に、何しているんだ?と私はぽかんとしてしまいました。頭を突っ込んでいるだけの可能性もあるので、花弁をめくってみると、しっかり花粉にありつけているようです。たまには面倒でも、いつもと違う花をつまみ食いしたくなるのでしょうか。
 野外観察の中で、こういう瞬間はとても魅力的です。生きものですから、本や図鑑を裏切る時があって当たり前ですよね。
 コアオハナムグリはこの日4時間以上、クサフジの花を被っていました。訪花昆虫の中で、なんだか鈍くさいハナムグリ。おせっかいでしょうが、彼らの行動を目で追っては、何のためにそうしているのか?と、あれやこれやと考えてしまいます。