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本と雑貨と手作りのブログ。

「つむじ風食堂の夜」

2006-03-22 | 小説
吉田篤弘さんと浩美さんという夫婦を中心とした制作ユニット<クラフト・エヴィング商會>の本。初めて手に取りましたが、噂に聞いていたとおり、独特の雰囲気がある作品でした~

吉田 篤弘 / 筑摩書房(2005/11)
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月舟町のつむじ風食堂を舞台に、そこへ集まるお客たちの何気ない日常を描いた作品。登場人物は、雨を降らせる研究をしている先生を中心に、帽子屋の桜田さん、果物屋や古本屋の主人、古道具屋の親父、舞台女優の奈々津さんといった人たちがいます。ちょっとめずらしい仕事をしている人たちばかりで、芝居の中の世界みたいに感じました

この月舟町は、とても懐かしい空気が感じられるのですが、何処にも存在しない特別な空気も感じられました~。例えば、この食堂は、もともとは「名無しの食堂」だったのですが、いつもつむじ風が廻っている十字路にあったので「つむじ風食堂」と呼ばれるように。普通の安食堂とは違ったこだわりのある食堂で、きちんとしたメニューブックがあったり、ナイフとフォークしか出さなかったり。メニューの名前も変わっていて、コロッケはクロケット、生姜焼きはポーク・ジンジャーと書かれています。普通の場所にちょっとしたエピソードがあることで、<特別>な場所になっているように思いました。

また、この作品は8編の話に分かれているのですが、それぞれに印象的な道具が登場します。例えば、食堂の食器だったり、喫茶店のエスプレッソマシーン、古道具屋の机や果物屋のオレンジといった身近なモノなのですが、とても丁寧に描かれていて惹かれます。作者のモノに対するこだわりも、<特別>な空気感につながっているようでした。言葉にするのがすごく難しいのですが、ストーリーよりも描かれた風景を味わう作品ではないかと思います

<クラフト・エヴィング商會>の本は、また是非読みたいです!。この作品のように、手頃な値段の文庫がまた出たらいいな。吉田篤弘・浩美さん夫婦の娘(らしい)吉田音さんの作品は、装丁がとても可愛くて気になっています☆