京都新聞 2014年12月8日(月) 配信
国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)は4日、脳波や血流といった脳の活動を読み取って家電などを遠隔操作する「ネットワーク型ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」で、従来の手法より自然な脳活動で簡単に機器を動かせる技術開発に成功したと発表した。高齢者など体の不自由な人が一人で活動できる範囲が広がると期待され、2020年の実用化を目指す。
ATRと島津製作所、NTT、積水ハウス、慶応大が2011年から共同開発している。従来は機器を動かすため強く脳内で念じる必要があった。脳波の出にくい人は特別な訓練が必要であるなど個人差があり、利用者に負担が掛かることも考えられた。
今回は近赤外分光脳計測(NIRS)と呼ばれる手法により、頭皮に着けた装置で脳内の血流変化を計測し、何をしたいのかを識別する。例えば被験者がスイッチを入れようと腕をテレビの方向に伸ばすと、その行動に伴う脳血流を読み取る。それを大量に蓄積されたデータベースで解析して行動を識別し、ネットワークを通じてテレビのスイッチを入れられる。動作から家電などがつくまでに17秒前後かかり、的確な動作ができる精度は84%という。
また、脳波計測により利用者の快、不快も読み取り、ライトの色で伝えることも可能になった。
この日はATR内の実験用住宅で、実証実験が公開された。車いすに乗りNIRS装置を頭に着けた男性が、テレビやエアコンに向けて腕を伸ばしただけで電源が入った。また、暗くした部屋で文庫本を開く動作をすると、照明がついた。ATRの担当者は「お年寄りや障害者が暮らしやすくするためのサービスを増やしたい」と話していた。