新聞の「ひと」欄に、96歳の大学卒業生のことが出ていました。
入学したのが85歳といいますから、それだけでも驚きです。
従軍が経験あり、戦後は各地の労災病院で働いた、とありました。
雑木林を切り開いた自宅敷地に、夫婦二人で日本庭園を造ったと言います。
その手入れが忙しくなって、病院事務局長の職を早期退職。
それから陶芸に入れ込んで、自宅に工房を作るほどの熱中ぶり。
さらに極めたいと造形芸術大学の陶芸コースへ。
奥さんはすでに亡くなられ、買い物、食事の支度などは自分ひとりでこなしているといいます。
「いいこと、悪いこと、すべて人生の財産」という前向きの姿勢・・・ツメの垢を貰わなくては。
もう一人 宮大工の人の話が載っていました。
法隆寺の宮大工として有名だった故西岡常一さん、その技を内弟子として唯一受け継いだ人。
といっても、師匠は何一つ教えてくれなかったといいます。
教わったものは、自分のものじゃない。
教えるのは親切のように見えるが、結局は身につかない。
一度だけ、向こうが透けて見えるほど薄いカンナ屑を渡された。
それを壁に貼り、同じものが出るまで、カンナの刃を砥ぎ削り続けた。
その人も言います。
大工の仕事は、言葉で教えることができない。技術は身体の記憶だから。
そこで、いまは栃木県の山中に工舎を作り、昔ながらの徒弟制度で仕事をしています。
朝から夕方まで、どっぷり仕事に浸かり、身体にしみこませてゆく。
夕食後は自由ですが、みんな砥石に向かって夢中で刃を砥いでいるとか。
一人前になるまで10年。耐えられずに辞めていく者もいる。
「ボク、日本の建築を背負っていく」なんて人間は、ハナから採用しないそうです。
「毎日、木に触っているのが楽しい」 そういう子じゃないとダメなんだそう。
ボク、アベノミクスのエンジンを最大限にふかして日本を背負っていく。
そういう人間もいますけどどうです?
そんなもの、勝手にふかして日本海を飛び越えて行けばいいんじゃないの・・・。