六畳の神殿

私の神さまは様々な姿をしています。他者の善意、自分の良心、自然、文化、季節、社会・・それらへの祈りの記。

呼び止められる

2007年10月21日 | 日々のこと
 街角を歩いていて、香りに呼び止められることがある。

 たとえば梅雨時の夕暮れに、高い灰色のブロック塀のそばで。
 その花の姿は塀の向こうに隠れ、他家のお庭だから覗くこともできない。でも知っている、これはくちなしの香。白くて大輪の花の姿を脳裡に思い浮かべて、水の匂いと季節を呼吸して満足する。

 たとえば仕事帰りの暗い道。自転車置き場の仄暗い電灯の光の輪が消えかかるところに、佇むように待っている香り。金木犀が、冷えたゼリーのような濃密な空気を醸しだす。

 そんなふうに数日前、生垣のそばで呼び止められた。
 この街に住んでこの道を歩いて、もう5年以上たつのに、はじめてだ、ここで呼び止められるのは。
 しかも知らない香り。アナタは誰?

 はじめまして。
 よい香りをありがとう。


(後日の追記 葉の形状や花のかたちからして、これは柊ではなく銀木犀と思われますが・・どうかしら?)