やはり高校生が主人公の小説だ。歴史研究部に属する主人公が町の城址で不審な中年男に声を掛けられる。男は高校生が歴史好きと知って、この町にかかわる歴史的なことを質問し、自分の知識も披歴する。そんな会話の中で、高校生が持っている町の旧家でかつて酒造業を営んでいた竹沢家の古文書リストを見る。その中に映画監督として有名な小津安二郎の祖先筋にあたる学者の、知られていない著書に気づく。それが『皆のあらばしり』という表題の書物だ。いろいろな歴史的知識を高校生に話しかけるうちに、この旧家の蔵書は面白いとそそのかす。この『皆のあらばしり』についてその学者の著作リストにないという秘密も語り、高校生にその現物に近づくように促す。高校生もその男の歴史的な知識の豊富さに惹かれ協力する。そんな会話の中で、その学者の時代、幕末から明治のこの町や学者に纏わる歴史的事実が高校生に語られる。どうもこれは著者の創作ではなく歴史的事実らしいがよくもこれだけ詳しく調べたなという記述だ。
2021年の出版で、芥川賞の候補作になった小説だという。これが出たとき各新聞の書評に取り上げられていた。
この著者の作品に共通するまじめな、真摯な少年の描き方に共感できる。
この週末に来るモンタロウ、アサトのためにプールを設置した。この数日で水が温むまでになるかどうかが少し心配だ。
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