露花便り

福山市の庭師のブログです。庭師の仕事や日々の生活の中からやさしさに包まれる出来事や気付きを綴っていきます。

借り暮らしのねこたち。

2011-10-19 20:35:14 | 日記
先日とあるお屋敷の剪定に伺ったときのこと。
どこからともなく子ねこの鳴声。

近づいてみると、大きなモッコクの樹の下の笹の茂みにまだ目の開いていない子ねこが三匹、
からみあうようにまるまっていました。
まっしろい子が二匹、真ん中に茶色い子が一匹。
サンドイッチ状態で、ときおり降りかかるしとしと雨に濡れていました。


か、可愛い~~~~っ
なんて可愛い。




確かにお屋敷の中は天敵もなく、静かで安全な場所です。
ところが一歩外へ出ると、四方を車が飛び交う大通り。
ここで生きていくのは難しいだろな。






奥様は猫が苦手のようで
「廣岡さん、連れて帰ってくださる?」


親方は最終日までいたら連れて帰ろうと決めていた様子でした。





剪定の合間にもずっと子猫を見守り続けていたお父さんネコ。


先に目の開いた二匹を連れて姿を隠したお母さんネコ。





休憩から戻ると、お母さんと二匹の子ネコも帰ってきていました。
子ネコの写真を撮ろうと近寄ったら、お母さんに「フーー!!!」って怒られた

その日の夕方仕事を終えると、寒冷紗の下に隠れていたので、そのままそっとして帰りました。






翌日、借り暮らしのねこたちの姿は庭のどこにもありませんでした。




うーーん、さみしい

でもお父さん、お母さんの夫婦愛と親子愛に胸を打たれました。








新しい家は見つかった?

おなかはへってないですか?





またいつか会えるといいね。



見晴らしの庭 石積み継続中。 

2011-10-17 22:02:40 | 庭仕事
土日の剪定が終わり、三日ぶりに帰って参りました見晴らしの庭
朝O邸に着くや否や、リリィちゃんにほえられる私たち。


工事が始まってから二ヶ月以上経ちましたので、もうほえられることもなくなっていましたが、
久しぶりの対面に手厚い歓迎(?)



「わしのこと忘れたんかのう...。」と、寂しそうな親方



さあ、今日もやるぞー!!


...なんでこんなに重装備なの?
というぐらいのいでたちですが、毎日この状態で作業しています。
先日親方が石の破片で目を負傷し、白目が血に染まりました

幸い軽症ですみましたが、それ以来保護メガネは安全なものに格上げされたのです。



粉塵用マスクは石の粉で喘息を引き起こす私に支給してくださいました。



いかにも仕事のできそうにない感じですが、安全第一。











石積みは最終段に入りました!







目地が開いてる?
フムフム...、これはですね、カエルやてんとう虫が越冬するために、わざとあけているのです。

目地をぴったりにあわせると入れないからねー。




...いやぁ、目地をぴったり合わせるのは本当に難しいです。
石積みは3Dです。


難しいです。



カエルと言えば、夏にはあんなにぴょんぴょん跳んでいましたが、
そろそろ冬眠の支度でねぐらを確保する時期です。
こちらのお屋敷には池もあるので、カエルたちにとっては楽園だったようで、
あちらこちらでねぐらをみつけます。

縁石の間に小さな穴が開いていたので、黒土でふさごうと覗き込むと、中からちょこんとカエルが見上げています。

「あぁ、ごめんごめん

こっちの穴にもカエルが入ってる


小さい穴はふさがずにそのままにしとこっと。





日が落ちてくると人感センサーに反応してアプローチにほんのり灯りがともります。

ほうっと一息つく瞬間。











今日も一日お疲れ様でした

明日は漉き取りとコンクリート下打ちです。









今日は剪定。

2011-10-16 00:36:03 | 日記
しとしと小雨の落ちる中、松の剪定。
10尺はそう高くはないですが、一日上にいると全身疲労でヨレヨレになります。

でも松は私を楽にしてくれます。
一本一本性格は違いますが、松と向き合い
自問自答を繰り返していると、頭がどんどん冴えてきます。
向き合い・・と言っても、親方が鋏を入れたあと、ひたすら古葉をむしるのです。

何かの答えは出ませんが、はっきりわかるのは、みんな善意で起こった出来事ということ。
痛めつけてやろうとか、突き落としてやろうなんてみんな思ってなくて、
相手のため、お互いのため、生まれた感情。



想うが故に、
土塀に塗りこめた生ヘビを感情ごと穿り出すようなことしたくなかった。
ずっとその記憶を背負っていたかった。



昔、くだものを部屋に置けないほど頂いたのを思い出します。
かき、ぶどう、なし、きうい、りんご、ぱいなっぷる、・・・そして甘栗。

部屋中に満ちた芳醇な香気。
植物が実を結び、熟すという幸せ。


ほんの少しの誤解と傷が転げるうちに大きな傷になって、
くだものを傷めてしまう。

大切に大切にしてきたのに。






ヨレヨレのときは、美味しいくだものがいいですよ。
心と体に染みわたる、しあわせの果実。






今日も一日、ありがとうございました。
明日への一歩を今日頂きました。



苦悩の石積み

2011-10-14 00:01:58 | 庭仕事
ううぅぅぅぅ~~。
石積みがまだ終わらない~
夢にも出てきそうなぐらい続いてますよ~。
施主様、なかなか進まず申し訳ありません
次の現場と剪定でお待たせしているお客様、本当にごめんなさい。
仕事がおしてくる焦りと、良いものを作り続けたいという葛藤の中、毎日120%の力で奮闘しています。


仕事に厳しい親方ですが、さすがの親方も
「夜のうちに小人が仕上げてくれて、朝来たら完成しとらんかのー・・・」と言い出されました。


露花の石積みの特徴は、古い石をつかうことです。
新しい石を割れ肌で加工するのではなくて、何十年と風雨にさらされ、記憶を刻んだ石を加工して石を積みます。
石は割ると新しい面がオギャーと生まれて、そこから新たな歴史を刻んでいくんだと思うんです。

割って割って綺麗にぴっちり面や目地を通すのではなく、ちょっとアバウトでも、個の風合いを残したい。
石を人間に例えると、お爺さんがいっぱい集まって「わしゃーのー、」とか「ありゃーのー、」とか言ってる感じ。





記憶を刻んだ面を加工しているときにうっかり面落ちしたりすると、もうその石は使えないというのが一番辛いです。
半日がかりで加工した石があとほんのわずかのところで角が欠けたりすると、悔しくて情けなくて泣けてきます
こつこつじっくり派の私でもうおー!!となるぐらいなので、親方はしょっちゅう発狂しています。


角石が決まっていよいよ天場石。




石積みの合間に苔目地が完成しました。夜露でしっとり。


もみじの紅葉もはじまりました。


芝生も青々してきましたよー。
奥に見える石積みはすでに完成した右サイドの石積み。
左サイドが完成すると、対になります。



そしてこちらは国の重要文化財、
沼隈の阿伏兎観音さま。


992年創建の海の守り神さまですが、1185年の源平合戦で一度荒廃しました。
その後鞆の浦の漁師の夢のお告げにより海から石造り十一面観音像がひきあげられ、手厚く祀られました。
1570年毛利輝元が再建、1667年福山藩四代藩主水野勝種により石垣など増築。
・・・つまり、300~400年間記憶を刻み続けている石積みなんですね。


「露花」という社名もこちらで頂きました。


断崖絶壁の上のお堂を支え続ける石積み。
電気道具もない時代、落ちたら命を落とす海の上、どんなにか大変だったろう・・・。




素晴らしいです。








私には電気道具の助けがあるし、転んでも命は落とさない。
そう思えばなんと楽な石積みなんだろう。

明日も石積みがんばるよ
今日も湿布して寝よーっと


見晴らしの庭 作庭中!

2011-10-05 12:31:16 | 庭仕事
「見晴らしの庭」とうとう終盤にさしかかりました!




飛び石として使われていた古い板石。
昔の板石は大きく厚みもあります。
露壇としてやわらかい空間に生まれ変わりました。


縁先手水鉢は存在感があります。


アプローチはバリアフリーでとの施主様のご要望でしたので、広く歩きやすさを重視しました。


縁に使われた御影石は、取り壊された土塀の土台部分に使われていました。
何十年もの時を経て、周りを面取りして生まれ変わった石たちなんですよー。
そう思うと、何だか愛おしいですよね。

アプローチは長く、勾配があるため、排水と滑り止めが最優先課題でした。
今回は真夏の炎天下の施工も考慮して、樹脂で骨材を固める工法です。
カタログで取り寄せた骨材が色も質も良くなかったので、親方が激怒!
「こんなん使えんぞ!」

急きょ予定変更。
二時間以上かけて砂利やへ走ることに・・・
しっとりとつやのある備中砂利を使用しました。



丁寧に水洗いして、ごみや砂利の汚れを落とします。

作業中、土砂降りに・・
水不足のときでなくてよかった~


施工日に間に合わせるため、事務所に広げてドライヤー2台で必死に乾燥させました熱いよ~




骨材を固める樹脂工法は、最近人気ですが、この樹脂、固まるまでの時間は2、30分なんですよ~
一度固まってしまうと、二度と取れないので、道具の掃除も含めて2、30分。

緊張感に包まれた現場でしたが、職人川野さんの神業で、なんなくクリア
川野さんはミリ単位の勾配の調節も自由自在!


洗い出しも川野さん施工。






照明はご主人の発案で、LEDの埋め込み。
夜になると蛍の光のようにやさしく点灯します。




アプローチ完成!!




次回は苦悩の石積み編です。