ANANDA・Cafe

独善的偏向偏執的毒舌紅茶&カフェのブログ 真実は香り高く甘くそして…渋い 良い紅茶のようにね

1に牛乳2に牛乳、3・4がなくて5に牛乳 ヨークシャーティーとはミルクティーのためのお茶

2012年06月12日 | 紅茶・ブレンド
前回の記事で申し上げたとおり、イギリスのご庶民の紅茶デフォルトは
「ミルクティー」「マグカップ」「ティーバッグ」である
もともとは紅茶より先にあったコーヒーハウスでのミルク+シュガーの習慣が
紅茶の導入に持ち込まれたらしい

『英国ティーカウンシル(The United Kingdom Tea Council)によれば、
イギリスで一日に消費される紅茶は1億6500万杯。
日本人からすると意外かもしれないが、
実はそのうちの96%はティー・バッグを使っていれられている。』

『さて、そのティー・バッグをマグにひとつ入れ、電気ケトルで沸騰させたお湯を注ぎ
色がしっかりでるまで待って、ミルク(牛乳)を入れて飲む、
というのが最も典型的なイギリスの紅茶の飲み方だ。
前述のティーカウンシルのデータによれば、98%もの人が紅茶にミルクを入れるという。』

以上、asahi.comの記事『続発!観戦チケットめぐるトラブルと、英国流紅茶の飲み方』のコピペ
この記事は面白いからリンク飛んで読んで見てください
他にもいろいろ現地の紅茶事情が書かれています
(そういえば今年ってロンドン五輪だったっけ…この記事見るまで忘れてたわ)

とはいうものの、
テイラーズ・オブ・ハロゲイトのお初の茶葉がティーバッグというのは実力が量れないので
ヨークシャーティーは敢えてリーフにしてみた
軟水用である
250gしかなかったので、インフレに怯えながらも購入
トップの写真がそれである
レインフォレスト・アライアンスのカエルマーク入り
ううう…このマークが付いた紅茶もコーヒーも美味かった記憶が無い
胸騒ぎを覚えつつ開封する

中はこんな具合


こ…こまかい
ティーバッグの中身のようだ
細かいCTCと細かいBOPの砂礫のような茶葉である
香りは…ケニア系アフリカ茶が優勢で、低級アッサムがそれを追いかける感じ
少し埃っぽいが、カビの埃っぽさは無い…
1g=1円未満のお茶である
よしとしよう

原産国:ケニア、ルワンダ、ブルンジ、南アフリカ、インド、マラウイ、スリランカ、
    
なんつー身も蓋もないブレンドだ
安くて濃く出る茶葉を世界中からかき集めてある
なにしろ250g=242円なのだ
イオンTOPVALUのセイロン・ジャワTB、50P(90g)188円が高いお茶に見える

さあ、淹れてみよう
いつものとおりの3g/150mlでいく
細かいので蒸らしは3分ジャストで

注いだものがこれである


こ…濃い
これコーヒーかな?と見紛うばかりの濃さである
香りはない
ないわけじゃないが、なにかが香る、という香りは無い
現地の価格を知っているから驚かないが、日本価格の100g=700円だったら
間違いなくこれではなく、トワイニングのアイリッシュ・ブレックファストを飲むぞ
…と思いながらストレートで一口すする

いや~、これはないわ
渋くはないが、濃くて重くて風味がよくわからない
ココスのルクリリ系の感じだがルクリリより没個性じゃないか?
なぜこれをイギリス人は普通に飲んでるのか不思議になってくる
いや、不思議ではない。なんせ1g=1円未満のお茶なのだ。当たり前だ。
日東のDAY&DAYに文句を言っても無駄であるのといっしょ
日本人的に言えば、番茶を飲んでるのと変わらない感覚なのだ

実際ここでNirvana・Cafeは、もうがっかりしていた
しかし、ここで「ミルクを入れなければ始まらない」のがこのお茶だったのだ

ここで半ば諦めムードでミルクを投入する
だが、その色がすごかった


こ…この見事なゴールデンブラウンはなんだ?
もしや、まさか

あわてて飲んで衝撃が走る
う…美味い!
なんだこりゃ?
牛乳入れたら化けやがった
このキャラメルのような風味
香りまで甘くなってるってなんなのよ
なめらかでコクと甘味が一体となっている
ものすごくまとまりのあるブレンド
すべての風味に乖離がないのだ
まるで「ミルクティーという単体の物質」があるかのような感じ
この価格でこの味わいはないよな
すいません。私が間違ってました
ストレートで飲むのは法律違反でした
認識を改めますから許してください


ほんとに、日本人とイギリス人の紅茶の味覚の認識の違いを見せつけられた
ある意味、紅茶人生のなかの《事件》といってもいいくらいだ
(うん、ヨークシャー事件とでも名付けよう)
『98%の英国人が紅茶にミルクを入れて飲む』というティーカウンシルのデータが
今更ながらにリアルに迫ってくる
ヨークシャーティーをストレートで飲んだときの、絶望的な紅茶とも思えないような味を
英国人は誰も知らないのかもしれない、と思っちゃうくらいである
ミルクの、ミルクによる、ミルクのための紅茶!


「じゃあ、ミルクもイギリス式に《ノンホモ》《パス乳》でなければほんとの美味しさはわかんないんじゃないの?」


と、日本のマイナーな(神戸では有名な)『共進牛乳』を入れながら
そんなことをのたまうのは、もちろんうちの旦那であった

確かに日本の牛乳は外国人には不人気である
高温殺菌で焦げた味のする、脂肪分の均一なホモジナイズされた日本の牛乳は、
欧州では普通な低温殺菌(パスチャライズ)で、クリーム層のあるノンホモジナイズの牛乳よりまずいそうである
(資料:ホモジナイズとノンホモジナイズ)

では、イギリスの牛乳事情はどうなっているのか?

『イギリスでは、毎日飲むのは「パスチャライズド牛乳」で、
あまり買い物に行かない無精者や料理用に使う時だけの「高温殺菌牛乳」と分かれているのに、日本では毎日飲むのは「高温殺菌」、
高級な牛乳は「パスチュライズド(低温殺菌)牛乳」とぜんぜん違うんです。』
(BLOG:Rose Grove Notes ガルゲイトの花屋より)

で、そんな牛乳どこで売ってるの?
ということで旦那がネットで調べた結果
「木次ノンホモ牛乳」1000ml・368円
というものが阪急Oasisにて販売されているらしい

ノンホモでパス乳
まさにこれ…さすがに高いが
阪急Oasisは職場からどうにか歩いていけるらしいので、仕事帰りに寄ろうと思いきや
そういう日に限って、久しぶりの残業で寄り道の時間が無い
仕方ないので、いつも行くスーパーの牛乳コーナーを見ると
共進ジャージー牛乳4.6無調整」なるものが置いてある
たしか、ジャージー種ってイギリス産だったよな…というあやしい記憶を元に
異常に乳脂肪分の多い兵庫県産ジャージー乳をお買い求めした

さて、ノンホモでもパス乳でもないが、イギリスの牛の乳でミルクティーにしてみた

これがまあ、美味い
牛乳自体も美味いが、ジャージーのヨークシャーティーのミルクティーは格別だった
脂肪分が多いと香りが立つのだろう
香りの揮発成分は油性だからだ
普通の3.7牛乳より華やかな仕上がりになった
ジャージー乳を入れるとアッサムの香りとケニアの渾然とした感じになる
コクは申し分なし
(だが500mlで238円は高いぜ)

のちほど調査した結果、イギリスでもホルスタインの牛乳が92%で、ジャージー乳は2.3%らしい
『イギリス ジャージー事情』OHAYO乳業のサイト
イギリスではみなジャージー乳を飲んでる、というガセネタもあるが、そうではない
これはイギリスでも日本でも高級品なようだ
《ノンホモ》《パス乳》はデフォルトのようだが…
だが、英国人はそのよく言われる「ノンホモ牛乳のクリームライン」とやらを
ミルクティーに入れて飲んでるんだろうか
基本的にこれは攪拌して手動的にホモジナイズするんだろ?
そのためにあの取っ手付きのプラスチックボトルに入ってるような気がするのは私だけか?

住んだことのない国の日常を推し量るのは、並大抵のことではない
ミルクティーを飲むのに、牛乳を振るか、振らないか?
そんなことはググっても、正しい答えが書いてあるかないかなどわからないのだ

ちなみに、先ほどの「イギリスでははとんどがジャージー乳である」という誤情報は
『ミルクティーには、どんなミルクが合うのか 紅茶専門店 TEAS Liyn-an(ティーズリンアン)』
に、書かれている
この店はよい紅茶葉を扱っているわりと有名な優良店だから、信じる人も多いだろう
この実験記事自体は、とてもよいレポートなので参考になった
だが、ジャージー乳については間違ってる!
情報とは、ほんとにきわどいものである

ジャージー乳は、元来イギリス王室御用達の高級品で
ジャージー島は英国王室の属領であった
いわゆる“ロイヤル”ミルクというのはそういう意味らしい
じゃあ、ロイヤルミルクティーはジャージー乳じゃなきゃ成立しないのか!
(注:イギリスでは“ロイヤルミルクティー”なるものは存在しないらしい。和製英語とのこと。)


さて、阪急Oasisに行ってきた
残念ながら、ノンホモはなかったが、木次のパスチャライズ乳(1000ml・340円)があったので購入


実は私の実家は生活クラブの会員なので、実家暮らしのころは毎日ガラス瓶のパス乳だった
だから、美味しいのはよく分かっている
しかし、ヨークシャーティーに入れて飲んだことはない
いよいよレビューである

牛乳先入れで、上からヨークシャーティーを注ぐ
きれいなゴールデンブラウンは変わらず
香りはどうかな?
ジャージー乳の時よりケニアティーの香りが強く出る
味はすっきりさわやかで依然としてマイルド
牛乳の甘さがあり、それが紅茶の濃さとマッチしている
このさりげなさは、毎日飲むのに適している
ジャージー乳はコクと華やかさがあるがちょっとぜいたくな味だ。太りそうな(笑)
パス乳は落ち着いたまろやかさと後味がいい。高温殺菌の牛乳臭さがなく、舌に残らない
焦げた乳臭さが無いパス乳は、紅茶の香りをそのまま出すようだ
ケニアに代表されるアフリカ紅茶の独特の香りがお好みでないかたは、
美味しい高温殺菌の無調整牛乳をおすすめする


総評:この値段で、このミルクティーは、日本では破格に美味しい
   ストレートで飲む価値は考慮されていない。あくまでも、ミルクティーで飲むべき
   しかし250g=1780円(100g=712円)のお茶の価値はない
   その値段を払うなら、日本円で同じコスト(100g=700円)のトワイニングの
   アイリッシュブレックファストのミルクティーを飲んだ方が確実に良い
   ミルクはそれぞれの良さがあるので、好みによる 


私はチャイから紅茶に入ったのでミルクティーは大好きだが
美味しい日本茶で育ったために、ストレートの紅茶の香りは当たり前に重要だった
しかし、ほぼミルクティーしか飲まない国からの輸入品のレビューで
ストレートの紅茶の香りを云々するのは「お門違いである」ということを
このヨークシャーティーで学んだように思う
そして、明らかにわかったのは
「私は、ストレートでもミルクでも香りの良い紅茶を飲みたい」という自分の好みである
遅まきながらそれをはっきりと認識した
だが、しかし…


ちょっと紅茶の世界認識が変わったな…
いや…なんか固定観念がひとつ拭われた感じ
いくつになってもこういうことがあるのは人生の豊かさというものに相違ない
散財が報われるというもんだ