日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 相模守政常 Masatsune Tanto

2016-07-08 | 短刀
短刀 相模守政常


短刀 相模守政常

 信高や氏房と同様に美濃から尾張に移住したのが政常。鍛冶の流れは兼常家。戦国動乱の時代には槍の製作に長けており、家康などに納めている。慶長年間に我が子二代目政常が亡くなったため再び槌をとっている。元和五年に八十四歳で長命を全うした。即ち、新古境の作刀において急激な進化が進んだ時代を生きた刀工だ。そして、この良く詰んだ地鉄の様子は、後に続く多くの鍛冶の手本となったに違いない。強く激しい板目肌から小板目肌へと移り変わる頃の、最先端を走る鍛冶の高い技術が窺いとれよう。詰んだ中に揺れるような肌が地景によって表れており、斬れ味も高そうだ。叢がないため刃中の沸付き方も均質であり、冴え冴えとしている。何より焼刃は沸だけでなく匂によっていっそう鮮やか。刃文は湾れにわずかに砂流しが働いている。