【注】写真のセッティングはめちゃくちゃです。
さて、それではKoji Compのベースでのインプレです。
非常に手強いコンプですので、詳細にレポートします。読みづらいので覚悟してください(笑)。
はじめに
見た目こそ素晴らしく上質な印象ですがその正体は、近年主流のオプティカルコンプの真逆を行く、かつてのエレハモ製コンプにあったようなどエグい効き方のオールドスタイル。それに最新の小細工を施すことで過去には得られなかったクリーンな音が出せる珍しい製品です。
【Comp】
普通Compと表記してあるノブがひとつだけあるならばそれはスレッショルドの意味である場合が普通でしょう。しかし稀にSustainと表記した方がふさわしいのではないかと思いたくなる製品があります。コンプレッションと一口に言ってもいろいろキャラがあるのです。この製品がモロそれ。でかい音を潰す働きよりも、小さい音になるほどでかくし続けることで音を持続させようとする働きの方が際立っています。昔のギター用コンプに多いキャラだね。
従いましてまずは、
1ノブゆえに調節できないリリース&ディケイに癖があります。
かなりサステイナーの性格が強くて、最後はホワイトノイズだけになるまでゲインアップを続けて音を伸ばしてくれます。リリースタイムはCompノブを小さくしてもあまり短くできないし、ディケイも最後の最後にやっと蝋燭の炎を消すように働きます。
通常ベースではスッと自然に効果が消滅するようなセッティングが好まれますから、これでは厄介です。
肝心のゲインリダクションは味気なく無粋に抑え込むタイプ。効き自体はとても強いので、ベースではCompノブを回すとしてもせいぜい10時あたりが限度。8時以下でもピークはぺったんこに均されます。いわゆるリミッターのようには働きません。
というわけでこの製品では積極的にCompノブ最小付近を使うべし。最小=7時にしてもピークは抑えてくれますから。大概の製品は最小付近は効果が弱すぎるためそこを使うのは有意義でないことが多いものですがこの製品は違うのです。
【Attack】
かなりサステイナーの性格が強いため、アタックタイムは短くするほど、抑えたアタックの後に来るゲインブーストによる音量の盛り返しがより一層モワッと目立つようになりますから注意が必要です。ギターでは色々なセッティングが使えるでしょうけれどね、繰り返しますがベースではどうしてもCompノブ小さめ&Attackノブ大きめで使うしか逃げ道はないですよ。
つまり、アタックタイムが終わりゲインリダクションが始まる時にすぐ短いディケイが始まろうとする時をうまく近づけてなめらかに繋ぎ合わせるようにするのが自然な音にするコツとなります(言っている意味わかるかな?)。
セッティングのスタートはこの際、思い切ってCompノブ最小、Attackノブ最大から始めちゃってもいいでしょう。
具体的には私のメインベースの場合、Compノブを8時あたり、Attackノブは16時あたりで、なんとか近づく印象でした。
自分の望みではなくコンプの都合で値を決めているみたいでおかしな話ですが、この時点で望んだ音にはなり、まだ少し回せるゆとりが残っていますからから結果よしとしましょうか。
また、あえてアタックのパコパコ感のあるザンネンコンプを演出したい時は(したい人いるのか?)、Attackノブは10~12時あたりでよく聴いてあまり奇妙に感じないポイントを探すと良いでしょう。
いずれのセッティングもめちゃくちゃ難しいですけれどね。とにかく真剣によーく聴いて決めなくてはなりません。短時間では無理なので、休日一日潰して追い込むしかないでしょうね。難しい時はヘッドホンでチェックする人がいるみたいですが、アンプでもわかりやすいと思いますよ、それほどはっきり効きの強いコンプですからね。
ただし、
この製品には魔法のノブがあります。おかげで少々雑にセッティングしてもある程度救済することができるんです。それが次に述べる2つ。モダンな小細工セクションだと思います。
【Mix】
コンプレッションされた処理音と原音を混ぜることができます。ブレンダーですね。
全てのセッティングで少々効きすぎな音になっても最後にMixを使うことで相当味は薄められます。今風な発想のコンプだなぁと。手法としては昔からあるんですが、ストンプボックスとしてブレンダーのノブが備わっているのは古くてもBarber TonePress、最近でもXotic SP Compぐらいですかね(他にあったらゴメン)。詳しく知りませんがもしかしたらFLIP BC-XのSHAPEノブも実はこれと同じ仕組みなのかもしれません。
原音を混ぜたらコンプの意味がないと考えるのは(私も同感ですが)実際は間違っています。そりゃぁバイパス音と同じ100%の原音を合わせるとしたら意味がないでしょうけれどそうではなく、音量を減らした原音を混ぜる内は心配には及びません。音のシェイプを整える効果しかないです。この製品だと処理音を10%~100%の範囲で調節できるとのこと(つまり原音は90%~0%)。Photoshopなど画像処理に例えれば、調整レイヤーできつめに効果を作っておいて透明度で加減するのに似ているなと。言わばブレンドコーヒーと一緒ですよ。
【Level】
OUTの手前での最終ボリュームです。ここの働きは非常に高品位なクリーンブースターそのものですね。
この製品は(くどいけれど)サステイナーの性格が強いため、処理音の段階で少なからずゲインブーストされていて迫力があります。なのでMixで原音の生真面目な音を混ぜるほど迫力が削がれおとなしい印象になってしまいますが、そうなっても次のLevelでばっちり元気な音に復活させることができます。それはLevelが単品クリーンブースター顔負けだからできる芸当で、そうしているところがさすが今の時代の製品なんだなと。
Mixと合わせてモダンだなと思うんです。
MixとLevelを通過することで音質的には救われてしまう。おかしな考えではありますが、結果的にコンプレッションのキャラがどうであれバイパスよりオンの方がグッとくる音になるのだからエフェクターとして存在価値はあると思うんです。
【Voice】
小さなスイッチはEQのようなもので、左にするとハイミッドが、右にするとトレブルが持ち上がるようです。
いずれもギターのピッキングのアタックを聴かせる目的用途かな?
ベースでもフレーズがやかましくなります。
ノイズも上がるのでよく聴いて使うか判断を。
【FXリンク】
頭の上にリモートペダル端子と切り替えスイッチがあります。日本語の取説が手元に無いため使い方はよくわかりませんが、リモートペダルを使用しないのであればどの位置でも問題にはならないはず。
その他
気が利いていることに、なんと!バイパス音をトゥルーバイパスとバッファーバイパスの2つから選べるセレクターが内部にあります。この機能が付いているエフェクターを私は他に知りません。耳で聴いても大きな差は感じませんが、バッファーの価値をわかっている人にとっては素晴らしい機能でしょう。
今まで盲信的にもてはやされてきたトゥルーバイパス至上神話を崩す製品がやっと現れて、しかもSuhrのようなわかっていらっしゃるブランドからとあって、私は感動すらしています。
ACアダプタは普及品でも大丈夫です。
ホワイトノイズはありますが、よほど強力に掛けすぎなければ目立つことはないです。気にしなくて良いレベル。ノイズは処理音にのみ乗ってくるので、Voiceを使わないとか、Mixで原音を混ぜることで軽減できます。
過剰入力には比較的強くてよく耐えている方です。オーバーしても格好良く歪むことは無く、クリップしてブチッとなります。5弦Dなんぞドンと叩く時は気をつけてください。
結論
私は気に入りました(笑)。今、結構イイ音出ています。こうなるまで何日かかったろう。
(我がホームページにも書き足しましたので合わせてご参照あれ。)
出会いは重要ですね。
へんに易しいコンプだと飽きが早いし、この謎を解くような面白さは当分楽しめます。