ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

移民たちのニジェール・アガデス(1)〜希望への扉か、帰らざる門か

2017-06-15 15:00:33 | アフリカ情勢
6月14日、フランス国際ラジオ放送(RFI)は、ニジェール中部の都市、アガデス近くの砂漠の中で、パトロール中の軍によって92名が「瀕死」の状態で発見され、救出された、と報じている。ニジェール赤十字によれば、彼らはガーナ、ナイジェリア、セネガルからの移民グループで、水も食料もない状態で砂漠の真ん中に放置され、最終的には国際移住機関(OIM)に保護された。女性や子供が目立つという。

こんなケースはもちろん初めてではない。同2日には44名の不法移民(まだこの段階では未遂であるが)が、砂漠の中で死亡しているのが発見された。2016年には33.5万人の「不法移民」たちがこの道を辿ったとされる。

彼らが目指していたのは、もちろんヨーロッパだ。サハラ砂漠を渡り、地中海を目指す、いわば「移民街道」。あまりに極めて危険な旅路だ。砂漠にはただ砂の丘が広がり、道も、道しるべもない。水も食料もない中、気温は日中50度を超える。

(Libérationウェブサイトより)


西アフリカの移民たちは、まずは砂漠の奥深くにつながる扉、ニジェールのアガデズにやってくる。のちアルジェリア領のタマンラッセを経由、砂漠の中をモロッコまで進み、スペインの飛び地、メリリャを目指す。その向こうはヨーロッパだ。サハラ砂漠に比べれば10メートルの高さの壁など大した障害ではない。


しかしカダフィ体制が崩壊してからメインのルートは東に移りつつある。アガデズから砂漠の中を北東に進み「サルバドール隘路」と言われる、ニジェール・リビア国境の要衝を抜ける。そしてリビアのフェザーンから北を目指し、最後は地中海を渡りシチリア島などを目指す。このルート、全体をイスラム武装勢力が支配する。

ヨーロッパを目指す移民たちへの最初の入り口は、ブローカーである『案内人』だ。相場1,700ユーロとされるカネを親戚中からかき集め、案内人に支払う。なのでそう簡単には地元に帰ってこられない。その後、移民たちの身は案内人に委ねられることとなる。

トラックに揺られ、アガデズへ。そして砂漠の中、北へと進み、通過する中継点ごとに降ろされる。身柄は国籍ごとにゲットーを形成するアフリカ人マフィアに、国籍ごとに引き渡される。そこで根こそぎ金を搾り取り、強制労働をさせる。旅路には金がいるし、偽造旅券が必要だからだ。親戚、知人ににカネを請求させ、ウェスタンユニオンで送金させる。SMS「カネオクレ。さもなくば殺される、、、。」

このリアルは2015年の難民映画祭で上映された「Hope」という、ホープレスな映画に描かれている。ンボテは映画トークを担当させていただいた。

【お礼】難民映画祭『HOPE』上映&トークにお越しいただきましたみなさま、ありがとうございました

そして再び砂漠に出れるとき、また『案内人』のトラックに揺られ、砂漠を旅することになる。そして。

「『案内人』は、移民たちを砂漠のど真ん中に運んだあと、再び交渉を始める。ありったけのカネを出せ、と。カネが払えなければ、そこで棄てられる。移民たちがいかにか弱い存在であるかを物語っている。」と赤十字の人道支援関係者。「50度にも達する砂漠の中、水と食料も与えられず、2日と経てば死に至る。」


2015年、ニジェールは不当移民ほう助禁止法を制定し、厳しく禁止している。しかしアガデズは移民たちの通る道であり、ヨーロッパへの扉となっている。その扉は、楽園に続く長い辛い旅路なのか。あるいは帰らざる門なのか。ヨーロッパを目指す移民たちのあまりに厳しいリアルが待ち受けている。


(つづく)

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