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新大統領で変わるブラジルとアフリカの関係〜親密だったパートナーシップは終焉へ?

2018-11-05 07:30:00 | アフリカ情勢
西アフリカにおいてブラジルは大変人気の高い国だ。非欧米諸国、非同盟諸国の一員。新しく世界に台頭した新興国。ロナウド、ロナウジーニョなど人気サッカー選手の存在。そもそも、西アフリカから多数の奴隷が新大陸に運ばれて行った歴史的起源がある。ブラジルに寄せるアフリカの期待は総じて高いと言える。

実際、ここ数十年の単位でブラジルは対アフリカ接近外交を展開、また経済的関係の強化を図ってきた。アフリカ諸国も新興国とのパートナーシップにを歓迎した。しかし近年、ブラジルはアフリカにおいて、確実にその輝きを失いつつあった。


そんな中、10月28日にブラジルでは大統領選挙が行われた。そして開票結果はアフリカでも大きなフラッシュニュースとしてとして伝えられた。それはアフリカ諸国に大きな不安と失望をもたらすものであった。

ジャイール・ボルソナロ、63歳、サンパウロ州出身。陸軍士官学校卒、国軍、空挺部隊出身。のちに市議、連邦議員。保守派というよりは国家主義者、「極右」と評され、「ブラジルのトランプ」との異名をとる。先般の大統領選挙の決選投票では58%を得票、左派労働党のハダッド候補に差をつけて当選した。

ボルソナロ候補の当選。アフリカでは、新大統領がアフリカを捨て去るのではないか、また排他的・差別的思想から、これまで培われた両大陸の親密な関係が失われるのではないかとの危惧が渦巻く。


ブラジルとアフリカの関係が進展したのは、労働党政権のルイーズ・ルーラ・ダ・シルバ大統領の時代だった。'Africa News.com'の記事によれば、ルーラ元大統領は、12回のアフリカ外遊で27カ国を訪問。新規を含め39公館をアフリカに有し、ブラジリアには18のアフリカ諸国の公館が開設されていた。アフリカとブラジルの間の貿易量も、2000年の430万ドルから、2013年には2,850万ドルにまで増加した。ルセフ政権では、アフリカの地政学的重要性を唱え、政策を継承した。

しかしその後、ブラジルの経済状況は急速に悪化。財政問題、若年層の雇用、そう行った中でのオリンピック、ワールドカップサッカー開催などをめぐり、政権に対する批判が先鋭化。抗議やデモが激しさを増し、2016年には汚職疑惑でルセフ大統領が罷免。そう行った中、ブラジルとアフリカの貿易量も1,240万ドルと最盛期の半分を割り込んだ。

(2014年5月、ブラジル訪問時に撮影。ワールドカップ前で、随所でデモが見られた。)



ボルソナロ候補は、選挙戦の中で、「ブラジル・ファースト」の方針を提起。ルーラ政権、ルセフ政権による「南南協力」を「なにもブラジルに益をもたらさない関係」と痛烈に批判。BRICS枠組み参加の見直しのほか、アフリカの在外公館の大規模整理、アフリカ留学生受け入れの縮小、アフリカ人を含む外国人移民受け入れ方針見直しを公言した。実際の政策はハミルトン・ムラオン副大統領の舵取りによる部分が大きいとも報じられるが、彼もまた軍出身。国家主義的な路線となることが既定路線のようだ。


これまでアフリカにとって友好的で、親近感に溢れてきたブラジル。歴史、文化からくる親和性、労働党政権下での新アフリカ路線、そして経済的にも大きな可能性を共有した関係だった。しかしその友人は、背を向けてアフリカから立ち去ろうとしている。アフリカ諸国はそれを見送るしかないのか。友情のメッセージは「送信中」のまま、残されている。

(つづく)


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