パリ同時多発テロから冷めやらぬ20日(金)、西アフリカ・マリの首都バマコでまた惨劇が発生した。市内最高級ホテル、ラジソン・ブルーでこの日の朝、テロリストによる襲撃が発生。人質を取って立てこもった。その後マリ国軍の特殊部隊が、国連や仏軍の支援のもと突入。少なくとも宿泊客を含む27人の死者を出す惨事となった。
この事件に対し、イスラーム武装勢力「アルムラビトゥーン」が中東メディアのアルジャジーラを通じ、犯行声明を発した。
マリ政府は11月20日から10日間を期限とする非常事態宣言を発表した。
マリは内戦、政変、南北国土分断とイスラーム武装勢力による北部支配、仏軍の介入による失地回復、大統領選挙、そして和平交渉と長い道のりをたどり、今年の6月に主要勢力を含めた和平合意が締結されたところだった。
またバマコでは前日、パリ同時多発テロへの追悼デモが行われたばかりだったという。
襲撃事件の発生は朝7時、その後16時までの9時間にわたり繰り広げられた。武装勢力側の少なくとも3名が死亡。
事件の部隊となったのラジソンブルーはまさに市内最高級ホテル。普段から外国人が多数宿泊し、援助関係者を含めた会議などが頻繁に模様されるところだ。事件発生時には14カ国の異なる国籍の170名が宿泊していた。
武装勢力が立てこもったのは主に7階で、発砲が繰り返された。宿泊客は治安部隊の援護のもと小グループに分かれて退避。犠牲者の中にはベルギー人宿泊客が含まれていた。
(ラジソン・ブルー、2014年ンボテ撮影)

夕刻、中東系メディアアルジャジーラは、イスラーム武装勢力『アルムラビトゥーン』が音声により犯行を声明。ルドリアン仏国防大臣もこれは確からしいと発表した。
アルムラビトゥーンといえば、2013年1月のアルジェリア・イナメナスのガス田襲撃事件を首謀したモクタール・ベルモクタールが率いるアルカイダ系イスラーム武装勢力だ。モクタール・ベルモクタールは数次にわたり殺害されたとの報道がなされてきたが、専門家の間でも生死のほどは明確になっていない。
事件発生時、マリのイブラヒム・ブバカル・ケイタ大統領(IBK)はチャドにおけるサヘル五カ国枠組み会議(G5)の首脳会議に出席していた。この会議はまさにサヘル地域の平和と安定に向けた枠組みで、モーリタニア、マリ、ニジェール、チャド、ブルキナファソが参加するものだ。チャドは仏軍のマリ介入時、4000人規模の軍を作戦に参加させた。イドリス・デビー大統領は「宗教の精神を微塵も含まない蛮行」と批判した。
フランス・オランド大統領も事件発生程なくマリに対する連帯を示すとともに仏軍支援の用意がある、と発表。在留仏人に大使館へのコンタクトと治安への最大限の注意を呼びかけた。
国連や米国もテロ攻撃を非難する論評を相次いで発表した。
この事件、先般のパリ同時多発テロとの直接の関連に結びつくものはまだ感じられないものの、イスラーム武装勢力を取り巻くコンテクストに鑑みると、様々な意図や構図が惹起される。この点は追って分析を試みたい。
残念なことは、やっと和平の端緒についたマリで再びこのような事件が発生してしまったことだ。マリではズルズルと治安情勢に暗雲が垂れこめてきた。北部における武装勢力の帰還、中南部でのマシーナ解放勢力(FNL)をはじめとした不穏な動き。そして首都バマコにおけるカフェレストラン襲撃。白昼に起きた今回の事件の衝撃は、マリの国民和解と復興にとってあまりに大きい。
(つづく)
この事件に対し、イスラーム武装勢力「アルムラビトゥーン」が中東メディアのアルジャジーラを通じ、犯行声明を発した。
マリ政府は11月20日から10日間を期限とする非常事態宣言を発表した。
マリは内戦、政変、南北国土分断とイスラーム武装勢力による北部支配、仏軍の介入による失地回復、大統領選挙、そして和平交渉と長い道のりをたどり、今年の6月に主要勢力を含めた和平合意が締結されたところだった。
またバマコでは前日、パリ同時多発テロへの追悼デモが行われたばかりだったという。
襲撃事件の発生は朝7時、その後16時までの9時間にわたり繰り広げられた。武装勢力側の少なくとも3名が死亡。
事件の部隊となったのラジソンブルーはまさに市内最高級ホテル。普段から外国人が多数宿泊し、援助関係者を含めた会議などが頻繁に模様されるところだ。事件発生時には14カ国の異なる国籍の170名が宿泊していた。
武装勢力が立てこもったのは主に7階で、発砲が繰り返された。宿泊客は治安部隊の援護のもと小グループに分かれて退避。犠牲者の中にはベルギー人宿泊客が含まれていた。
(ラジソン・ブルー、2014年ンボテ撮影)

夕刻、中東系メディアアルジャジーラは、イスラーム武装勢力『アルムラビトゥーン』が音声により犯行を声明。ルドリアン仏国防大臣もこれは確からしいと発表した。
アルムラビトゥーンといえば、2013年1月のアルジェリア・イナメナスのガス田襲撃事件を首謀したモクタール・ベルモクタールが率いるアルカイダ系イスラーム武装勢力だ。モクタール・ベルモクタールは数次にわたり殺害されたとの報道がなされてきたが、専門家の間でも生死のほどは明確になっていない。
事件発生時、マリのイブラヒム・ブバカル・ケイタ大統領(IBK)はチャドにおけるサヘル五カ国枠組み会議(G5)の首脳会議に出席していた。この会議はまさにサヘル地域の平和と安定に向けた枠組みで、モーリタニア、マリ、ニジェール、チャド、ブルキナファソが参加するものだ。チャドは仏軍のマリ介入時、4000人規模の軍を作戦に参加させた。イドリス・デビー大統領は「宗教の精神を微塵も含まない蛮行」と批判した。
フランス・オランド大統領も事件発生程なくマリに対する連帯を示すとともに仏軍支援の用意がある、と発表。在留仏人に大使館へのコンタクトと治安への最大限の注意を呼びかけた。
国連や米国もテロ攻撃を非難する論評を相次いで発表した。
この事件、先般のパリ同時多発テロとの直接の関連に結びつくものはまだ感じられないものの、イスラーム武装勢力を取り巻くコンテクストに鑑みると、様々な意図や構図が惹起される。この点は追って分析を試みたい。
残念なことは、やっと和平の端緒についたマリで再びこのような事件が発生してしまったことだ。マリではズルズルと治安情勢に暗雲が垂れこめてきた。北部における武装勢力の帰還、中南部でのマシーナ解放勢力(FNL)をはじめとした不穏な動き。そして首都バマコにおけるカフェレストラン襲撃。白昼に起きた今回の事件の衝撃は、マリの国民和解と復興にとってあまりに大きい。
(つづく)