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ガボンクーデター未遂事件を振り返る

2019-01-08 10:50:00 | アフリカ情勢
すでに外電で報じられてれいる通り、7日、ガボンでクーデター未遂事件が発生した。

(フランス国際ラジオ放送(RFI)ウェブサイトより)


10月半ばより大統領が健康問題で不在となっているガボン。国民議会選挙の結果確定も曖昧なまま、政府はだましだましルーティン業務を回しているというのが現状。そんな中で発生した政変未遂劇だった。

クーデター勢力は7日の早朝4時頃、国営テレビラジオ局を占拠、同局を通じて国民に同調を呼びかけるとともに、「国家再建評議会(conseil national de restauration)」設立を示唆した。しかし昼過ぎには政府報道官担当大臣が「状況は統制下に置かれた。」ことを宣言。ガボン初のクーデタ、結果はあまりにお粗末であった。

その後の報道によれば、クーデターを首謀したのは青年将校5名。ガボンの夜明けとともに国営テレビの中央に現れたのは、大統領警護隊(garde Républicaine)指揮官補佐を名乗るケリー・オンド・オビアン中尉であった。そして大統領の「年頭の辞」に対する不満が述べられた。

2019年アフリカはこうなる(1)〜アフリカ大統領それぞれの年頭の辞

「国家元首の年頭の辞における、自らの健康問題に関する発言は、国民の一層の怒りと混乱を招くもので、重要な公職者としての十分な能力をますます疑わせるものであった。国軍の愛国青年同志は、危機に瀕した民主主義を救済し、もってこれを正常化するため、ここに立ち上がり、権限を奪取することを決意した。・・・不断の国家機能とガボン国民に民主化移行を確かなものとするため、数時間内に国内主要アクターを参集し、国家再建評議会を設置する。」


クーデター首謀勢力はジャーナリスト5名を人質に立てこもったうえ、国民に支持と同調を訴えたが、テレビ局付近で若干の火の気が上がったほかは大きな動きがなく、黒軍本体が主要要衝を封鎖。13時過ぎ、首謀者達のうち2名が殺害、オビアン中尉を含む逃亡した残りの首謀者もはとらわれの身となり、クーデターは未完に終わることとなる。国家の主要要衝施設は、政府のコントロール下におかれたとされるが、インターネットやソーシャルメディアは未だに回復していないという。

このクーデターの機に、野党ジャン・ピン勢力による「反アリ・ボンゴ」デモが、ポール・ジョンティなどの地方で誘発された模様だ。今回の事件と、野党勢力との関係は定かではない。ジャン・ピン氏が率いる野党「新しい共和国のための連合」のクライ・マルシアル・アバム・アクエ報道担当官は、「このクーデター首謀者が、ジャン・ピン氏に近い勢力であるのか、承知していない。」と述べている。少なくとも国内の反ボンゴ(ジャン・ピン支持)勢力の動きは、クーデターと「有機的な」呼応関係があるようには見られなかった。しかし、2016年大統領選挙後における不穏な衝突の痕跡を忘れてはならない。

【続報】ガボン大統領選挙(12)〜リーブルビルはモヤの中


国際社会は一様にクーデターの動きを批判した。はじめのリアクションはアフリカ連合(AU)のムッサ・ファキ・マハマト委員長、「憲法に反するあらゆる政変が肯定されることはない」と述べた。中部アフリカ経済共同体(CEMAC)議長国のチャド、イドリス・デビ大統領は声明を発表し、「あらゆる反憲法的、力による政権奪取はアフリカ連合が目指す基本理念を犯すもの。」と述べた。フランスも「ガボンの政治的安定は、憲法規定の厳密な適用なくしてありえない」との立場を表明している。

興味深いのはブルンジのピエール・ンクルンジサ大統領のコメント。同氏はツイッターの中で、反民主主義的な動きをを厳しく批判しつつ、「兄弟」たるアリ・ボンゴ氏に激励のメッセージを述べている。自ら憲法上の規定に反して、大統領の職に居座り続けている、として批判を受けている身。自分は「順・憲法側」だ、といいたいのか。


さて、今回のガボンのクーデター未遂事件。発生リスクも、また万が一発生しても成功しないであろうことも、いずれも想定の範囲内であった。ンボテブログ『ぶら★アフ』では、下記の通り述べている。

大丈夫?ガボンのアリ・ボンゴ大統領〜大統領の健康問題(3)
しかしこのままやり過ごせない事情がある。先月、ガボンは国民議会議員選挙を終えたばかり。憲法規定に従い、憲法裁判所が確定選挙結果を発表すると、現在の政府は総辞職を行うこととなっている。次の首班指名まで、一時的に政府権限が大統領に預けられる。「え?危篤で昏睡の大統領に?」・・・もちろん、内閣総辞職ののちは「暫定的に現政権が日常の業務を粛々とこなす(expédition des affaires courantes)こと」が憲法で規定されているが、そういう状態で大統領が不在となることに関しては規定がない。事実上、無政府状態が発生してしまう恐れがある。政軍関係の問題がある国であれば、すでにクーデターが発生していただろう。それだけに、今回の事態は危機事態だ。


ガボンではクーデターが発生する、いや「成功する」「三要素」の条件が満たされていないとみていた。つまり、主要な勢力が、クーデターを起こしたとしても、成功しないし、軍事的に成功しても、その後国内外あの支持を得ることが難しいとは考えにくい、という状況がある、ということだ。クーデター三要素については、すでに他の記事でも述べているが、また後日改めたい。しかしガボンの歴史において、1964年以降、2度目のクーデター未遂、というファクトは残り続けることになる。このことが与える内外へのショックはすくなくないだろう。

(おわり)


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