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西アフリカに新共通通貨「ECO」は誕生するか?(2)〜それぞれの事情

2017-11-03 07:30:55 | アフリカ情勢
西アフリカ経済共同体(ECOWAS、仏略CEDEAO)における通貨統合の話。10月24日、ニジェールの首都ニアメでECOWASミニサミットが開催され、域内5大統領が参加。席上、ECOWASのソーザ委員長が、2020年を目標として取り組んできた共通通貨への移行は困難、と総括したとの話を、前回の記事でお話しした。

西アフリカに新共通通貨「ECO」は誕生するか?(1)〜面従腹背のスローガン?

5億人市場に向けた通貨統合への努力が、ECOWASのみならず、各国レベルでも進められたはずであったが、残念ながら統合までの道のりは遠かった。

大きな前進が見られなかった原因には、各国が統合への努力を怠ってきたという面もあるが、より共通通貨に向けたモメンタムに大きな要因がある。というところで前回のブログを終えている。


その通貨統合を阻む要因とは?

最大の理由は、ナイジェリアの存在だ。ECOWAS圏の人口は現在約3億人。2035年には5億人を突破する予測だ。しかしその半分はナイジェリア人というカラクリだ。

産油国経済の凋落が大きいとはいえ、ナイジェリアはサブサハラアフリカ最大の経済規模を誇る。実にサブサハラアフリカ49カ国のGDPの約半分は、ナイジェリアと南アフリカで生み出されている。残りの半分を47カ国で分け合っているような構造。圧倒的な存在感がある。

ECOWAS圏の名目GDPは6,235億ドル、うちナイジェリアは4,810億ドル、実に77%をナイジェリアが占める。2位、3位のガーナ、コートジボワールがそれぞれ約350億ドル規模だから、その10分の1にも満たない。

つまり、もし西アフリカ共通通貨ECOができた場合、それは事実上、限りなくナイジェリアの通貨、ナイラに統合されていく、ということを意味する。



フランス語圏諸国を中心に8カ国が構成する西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)。共通通貨フランCFAについては、過去8回にわたる集中連載でお話しさせていただいたが、

集中講義「フランCFAのお話」第五話

ユーロ固定の通貨だ。1993年以降、1ユーロ=655.957フランCFAの固定レートが維持されている。

そのフランCFA、UEMOA加盟国の中では、この通貨の維持について、大きな議論が巻き起こっている。脱フランCFA派の主張は、フランCFAはフランスの支配を引きずるものであり、通貨と通貨政策の独立を希求すべきと批判する。

そもそもフランCFAの'C'は、植民地フラン(colonial franc)が語源であった。またユーロ固定レートの採用により、加盟国はフランスの国庫に供託金を預け、フランスの通貨政策をそのまま受けなければならない。またユーロ圏での決定や統制もそのまま受けなければならない。通貨の自由も、通貨政策の自由もないではないか、と。汎アフリカ主義にも通ずる主張だ。

またユーロとの固定レートは、究極的には欧州の水準に収斂することを意味する。高止まりする物価が、域内の競争力を著しく落としているとの批判もある。

他方、維持擁護派の主張は、固定レートは地域の安定性に大きな役割を果たしている点を強調する。当地コートジボワールの投資家は「フランCFA圏は、ヨーロッパの物価に引きずられコストも高いが、為替リスクが軽減できるのは大きなアドバンテージ」と評価している。


そもそも経済力も小さい脆弱な国が多い西アフリカ、もし「ニジェール・フラン」や「マリ・フラン」があったとすれば、それはきっと現在の「ギニア・フラン」のようになっていたであろう。



ギニアはフランスに背を向けて独立し、フランCFA圏にも属していない。しかしコナクリでホテルに長居したら、リュックサックほどのギニア・フランの札束が必要だ。脆弱なファンダメンタルズを受け、それほど通貨が切り下がっている。


ガーナにしてもそうだ。ガーナはセディという独自通貨をもっている。旺盛な公共投資と非譲許性の借款などで財政赤字が累積。さらにユーロ債などで資金調達をしているが、これをどんどん切り下がっていくセディで稼いで返し続けなければならない。対ユーロでの通貨価値が切り下がることがないフランCFA圏にはこのリスクがないのだ(だだしデノミがない限り、であるが)。

ということで、UEMOA加盟国の政府、財政当局は、フランCFAの維持の方がメリットが大きいと考えている節がある。そんな中、あえてフランスの後ろ盾やユーロの安定性を捨てて、ナイジェリア経済に身を委ねようというインセンティブが働くであろうか?UEMOA諸国にとって、西アフリカ通貨統合の本質のひとつはここにある。


西アフリカ通貨統合でもう1つ、賛成しきれない国があるとすれば、前出のガーナだ。ガーナとナイジェリア。ECOWASにおける英語圏の双璧とはいえ、その規模と影響力に圧倒的に差異がある。ゆえに両国の間には、ビミョーな距離感とすれ違いがある。そのガーナが自国通貨セディと、独自の通貨政策を捨て、ナイラ圏に身を委ねようとするであろうか。もう1つのクエスチョン・マークである。


西アフリカの通貨統合、お題目はリフレインするが、重い腰がなかなか持ち上がらないというのが現状のようだ。

(おわり)

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