勇気を持ってミニストックの欠点をお話します。
ネイティブディメンションズでは在来軸組工法を採用しています。
理由は今までの記事の通り、日本で一番普及している作り方で、構造も意匠として表現できるおもしろさ、金物工法を採用することで施工性の良さも挙げられます。
だから私は構造を現す事で在来軸組工法の良さが最大限に出せると思っています。
でも最近の住宅はわざわざ柱や梁を表面に出す事が少なくなりました。内装はプラスターボード(石膏ボード)で覆うのが当たり前になっています。
柱や梁を隠す事で在来軸組工法にする理由がなくなっているような気がします。
在来工法において、ご丁寧にすべての柱と梁をすっぽり隠す理由。
私の中では見当たりません。
省令準耐火にしたいからって言われたら、
だったらツーバイフォーの方がいいのでは?と答えます。
在来工法とツーバイフォー工法は共に木で作りますが、考え方は全くの別物。
在来軸組工法には「わび」や「さび」の世界がある様にも思えますが、ツーバイフォーは全く関係なしの超合理主義。
省令準耐火は元々ツーバイフォーだけの仕様でした。
在来軸組工法のローコスト住宅によくある梁成(梁の大きさ)のパターン化は、正にツーバイフォーの考え方。
構造用面材もツーバイフォーが原型。
在来軸組工法で防湿対策は曖昧なことろがありますが、ツーバイフォーでは防湿対策がしっかりと明記されています。(しっかりしている理由は、合板(またはOSB)を外側に張るから。在来軸組工法でも合板を外側に張るケースがありますが、防湿対策はしっかり取れていますでしょうか。絶対に確認してください。)
現代の在来軸組工法は元々ある工法にツーバイフォーの良さを部分的に組み込んで完成しているようなところがあります。
だから、唯一の特徴である柱や梁を見せる事を放棄してしまったら、ツーバイフォーにした方が手っ取り早くなってしまいます。
構造計算を行っていると、ツーバイフォーの合理的な考え方が身に染みる時があります。
在来軸組工法では、原則的に柱はどの場所も同じ寸法です。例えばそれが4寸柱だ、5寸柱だという所で安心感があり、それが在来軸組工法の人気の一つです。
まぁ、それを隠したら意味ないのにと言う事なんですけど。
でもよくよく考えれば、屋根から伝わる力は全部の柱に均等に同じ力が落ちてくる訳ではありません。
すごく荷重のかかっているところと、大してかかっていないところ。
まちまちです。
何本かはこっそり楽して生活してます。
それに対してツーバイフォーはがっちりした柱はありません。1本の柱が38mm?89mmしかありません。
そこがツーバイフォーの人気のなさですが、ツーバイフォーは荷重のかかる所はその細い柱を何本も抱き合わせて耐える様にしてあります。
だから、最小限を基準として、それ以上必要な場合は必要な分だけ足してしまう。
なんだかミニストックのコンセプトみたいな考え方です。
ツーバイフォー凄いなと思います。
そこまで感心しておきながら、なぜ在来軸組工法なのか。
日本人だからです。
(シャア風に言うと、日本人だからさ)
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補足説明
①とは言うものの、ツーバイフォー工法でも柱や梁を現している建物もあります。お互い、隣の芝は青く見える所があるのかもしれません。
②個別認定で柱や梁を現して省令準耐火の認定を取得している会社もあります。
③省令準耐火仕様にすると火災保険の割引が受けられます。
④ミニストックは、省令準耐火に対応していません。通常物件で、省令準耐火のご要望がある場合は事前にご相談ください。
一つ質問させていただきたいのですが、給湯はなぜガスなのでしょうか。暖房はエアコンでの24時間運転が原則とのことですが、床下の大空間(大容量のコンクリート)を利用して深夜電力での蓄熱等は採用されないのでしょうか?(給湯もエコキュートにしてオール電化にしない理由は何でしょうか?)
もしこの先に記事になるようでしたら先走ってしまし失礼いたしました。我慢できずに質問してしまいました。
もし可能でしたら教えていただけたらうれしいです。
また、ミニストックにも興味をお持ちいただき大変感謝いたします。「小さな家」については、戦後間もなくとここ15年位の期間(90年台半ば以降)に活発に議論が交わされています。
戦後と現代では「小さな家」の必要性、考え方は異なると言われてますが、戦後の文化、生活の変換期に議論された「小さな家」が、再びなぜ今議論されているかと言えば、目的は違うものの、何かの変換が必要と考えているからであり、一建築士として私の考えを整理したのがミニストックです。
ですのでミニストックは商品ですが、1つの建築論としてもお読みいただければ幸いです。
さて、頂戴したご質問は細かく分けて2点でよろしいでしょうか。
設備についてはいずれ記事にする予定ですが、我慢できないとの事なので簡潔にお答えいたします。
恐らく結論よりは、結論に辿り着くまでの過程を楽しみにしていただいていると思うのですが、その部分については、記事になるまでお待ちください
まず、このブログでもたびたび述べているガスとオール電化の選択についてですが、一番の理由は私がガスの方が好きだからです。過去ログでも皆さんそれぞれが好きな方を選んでくださいと述べています。
でもそれだと自宅の設計になってしまうので、ミニストック的な回答として、合目的性の観点から考えると、電気に頼らざるを得ない時代において、深夜電力を安く買って電気を使う事はエネルギー浪費の解決には繋がっていません。むしろ、昼間のピーク電力の増加を認めているようでもあります。なるべく電気を買わないのが、これからの省エネだと考えています。その為の準備としてガスを採用しています。
床下エアコンについては、一番単純な理由を述べると、ミニストックの基礎が蓄熱部位としての基準を満たしていないからです。残念な事にコンクリートだったら何でも蓄熱部位として扱える訳ではないんです。
その基準を満たす為の設備投資がミニストックの考えに沿っていないので、床下エアコンを採用していないのですが、建築は1つの要素をつまんで、いい悪いを判断して積み重ねるものではありません。
どれもいい悪いがあるのは当たり前です。
全ての要素を足し算引き算しながら、求めている目的に対して、総合的に何が合っているのかを判断する事が大切なので、この回答はオール電化や床下エアコンを否定するものではないと言う事を付け加えておきます。
結局、簡潔なコメントになりませんでしたが、私の建築に対する溢れる想いとしてご容赦ください。
自分の臭いは良く分からないと言いますが、嗅いで頂きましてありがとうございます。娘もまだ臭いとは言っていないので大丈夫だと思います。
私に限らず多くの住宅設計に携わる人たちは、自分の世界観(住宅論)を持っています。生涯に1度とも言われる買い物だけあって、目的にたどり着くまでの要素は非常にたくさんで、それが複雑に絡み合っています。
ですから、なかなか雑誌やチラシなどの限られたスペースでは表現しにくいので、ホームページやブログで延々と表現している訳ですが、その事に対して「期待している」というお言葉を頂けるのは、大変うれしい限りです。
また、設計者が持つ世界観はカタチではありません。設計する上での最低基準と思って下さい。その基準にお客様の想いが付け加えられて1つのカタチになります。
それに対してのミニストックは、あまりにも小さすぎて最低基準だけでカタチになったところがあります。ですから、少し大きい長期優良住宅対応のミニストックは考えれば考えるほど色々な可能性または課題が生まれてきます。
それらも記事にしていく予定ですので、今後も当ブログを宜しくお願いします。