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「しまくとぅばの日」やしまくとぅばの表象への異論?那覇市文化協会に「うちなーぐち」部会!発足!

2011-05-11 10:42:19 | グローカルな文化現象

沖縄県が「しまくとぅばの日」を条例したのはつい最近である。その条例を担うのが学者先生や文化人の方々で沖縄の主だった言語学者・方言学者の方々のお名前が並ぶ。芸大の波照間永吉さんや琉球大の狩俣茂久さんなどが中心だろうか?不思議に思うのは「しまくとぅば」が世界にある事であり、その名称は決して琉球弧なり沖縄の言語の味わいがない、ということである。いったいいつからこの島言葉、しまくとぅばが折衷的表象として浮上してきたのだろうか?島言葉という表象はある面、沖縄の独自の言語、琉球諸語をすぼめた表現ではないのかと、個人的には非常に違和感をもっている。

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しまくとぅばの日に関する条例
平成18年3月31日
条例第35号

しまくとぅばの日に関する条例をここに公布する。
しまくとぅばの日に関する条例
(趣旨)
第1条 県内各地域において世代を越えて受け継がれてきたしまくとぅばは、本県文化の基層であり、しまくとぅばを次世代へ継承していくことが重要であることにかんがみ、県民のしまくとぅばに対する関心と理解を深め、もってしまくとぅばの普及の促進を図るため、しまくとぅばの日を設ける。
(しまくとぅばの日)
第2条 しまくとぅばの日は、9月18日とする。
(事業)
第3条 県は、しまくとぅばの日の啓発に努めるとともに、その日を中心としてしまくとぅばの普及促進のための事業を行うものとする。
2 県は、市町村及び関係団体に対し、しまくとぅばの普及促進のための事業が行われるよう協力を求めるものとする。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。
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琉球処分の頃から現代に至る日本への同化の過程が130年も過ぎた現在、根にある言語の危機的状況があり、それを憂える潮流が流れてはいる。しかし本格的にアイデンティティのコアになる言語を取り戻すシステムを大胆に取り組まない限り、限りなく【危機的な】状況に変りはなさそうだ。そこで「しまくとぅばの日」なのだろうが、なぜ「うちなーぐち」ではなくしまくとばになったのか?

琉球王府は独自の表記を持たなかった。それは漢語と候文、ひらがな表記を活用した。しかし口語は王府の首里言葉を中心に那覇言葉、そして国頭言葉、糸満言葉、勝連言葉、本部言葉、金武言葉、宮古言葉、八重山言葉、与那国言葉、奄美言葉などなど多様なうちなー口語があり、さらに同じ間切や村でも集落毎にまた違った語呂や言い回しがある。

しかし琉球大の宮良信詳先生によると全く言語文法や構造などはあまり言語学的に変りはない、との事である。琉球大学の英語・英文学科を卒業したのだが、言語学関係は全くの「でぃきらんぬー」だった。しかし、琉球(沖縄)言語そのものへの関心を今頃持っている。文化伝承、記憶・保存・継承を考え、志向する上で、集合的無意識の表出としての演劇に関心を持っているゆえに、民族の保有してきた言語やリズム・音楽の重要さを意識するゆえに、「うちなーぐち」の問題は無視できないのである。

あらためてなぜ「しまくとぅばの日」なのか?話によると宮古、八重山出身の学者先生方が、沖縄語の日にすると宮古・八重山ことばの差別になりそれらを周縁化するから、という大義名分でそうなったというのである。多様な琉球諸語を包摂するために「しまくとぅば」というあまり聞きなれない折衷語をもってきたというわけである。そこには沖縄独自の匂いは全くない。その定義からすると鹿児島弁も福岡弁も「島くとぅば」であり、世界のあらゆる地域の言語がしまくとぅばである。それは決して琉球王府としてかつて400年以上も存続してきた琉球国を象徴するものではありえない。公平さを追及するあまりに本質的なものを逸したようなきらいがある。琉球王府時代に中心となった言語は首里語であり那覇語である。

昨日の那覇市文化協会の「うちなーぐち部会」立ち上げの準備委員会でも話題になったのが、標準沖縄語は沖縄芝居のウチナーグチではないのか、と3人の方が言及した。それが面白いと思った。また伊是名出身の西 昇先生は、鋭い指摘をされた。「今ウチナーグチと云ってもとても乱れて書籍などが販売・発行されている。どれが標準・基準になるウチナーグチですか?東京方言(東京弁)が標準日本語だとすると、沖縄の首里那覇ことばがその標準になりそれから地域の独自の言語として展開発展するのではないですか」と指摘された。「なるほど」だった。宮良先生は「標準おきなわ語」はいい、多様でいい、というお話だったが、言語に関する詳細な客観的実証が話されるわけではなかったので、会議の場でそれは深く掘り下げられなかった。今どきは標準語ではなく【共通語】と称される。

「しまくとぅば」への違和感は例えば、「沖縄芝居」に係わっている者としては名優の誉高い真喜志康忠氏のため息混じりのお話を何時間と聞いてきた耳には、今頃うちなーぐちの大事さを認識しても、それを島言葉に置き換え、またもや沖縄芝居役者が創り上げてきた「集合的民族の美としての芝居」をないがしろにする政策を学者先生や政治家がやってしまったのか、という思いがするのである。彼らは芝居言葉は「ステージ言語だろう」と簡単に切り捨てたりする。

余談になるが、研究者は常に客観的データ―、データ―と叫ぶ。目の前で地震が起こり、クジラが陸に打ち上げられてもデータ―の量が少ないといい、それが大地震の前触れだと緊急に発言しえないように、時を経たデータ―の集積に血眼になる。それまでには消えさってしまう何かがある。多くの人間の命だったりもするのである。

原発も、どうも立派な学者先生は貴族的生活の中で身近な本音で真実を追及する方々を踏み台にしながら、虚偽で世界をだましてきたのである。彼らを疑わなければ、自らの命が殺されるという構図がここかしこに張り巡らされているように、この言語の問題も沖縄独自のアイデンティティと文化の危機を誘発し招き入れるのかもしれないのだ!

それゆえに、たとえ県の教育委員会が中心になっている事業であっても、県だからとそのまま受け取るわけにはいかない所がある。どなたが中心で、どのように、テキストにしても、推進されているか、よく見る必要がある。それにすでに高校の副読本として編集された本の中身の問題もある。選択された教材の貧困さもありえる。戦前の沖縄ではでぃきや―だった方々の日本への同化は麗しいものがあった。しかし?沖縄文化と称されるものが「すぼめられてきた」ではないか?

沖縄の土着の文化に執拗にこだわってきたのは誰だったか?侮蔑され馬鹿にされてきた者たちが造り出してきたものがそのコアになっているのが現在である。しかし、今その沖縄文化の推進の中心にいる方々はどなただろうか?

結論からすると、「しまことば」と味気ない、色のない融和する方向性ではなく、琉球語、琉球諸語、沖縄語、沖縄諸語なりでいい。特に馬鹿にされた「うちなーしばい役者」が創ってきた「うちなーしばい」=「琉球史劇」「琉球歌劇」「琉球狂言」を大事にしたい。「組踊」や「琉球舞踊」が国指定の無形文化財になり、組踊はその文化的固有性が世界の多様な文化に貢献できるということでユネスコにも登録された。その後を琉球舞踊が同様な登録を期待されている。しかしその基になっていた芝居はどうしたの?

【美しい辻の遊女(じゅり)姿の吉田妙子】

組踊も舞踊も芝居も並べて沖縄(琉球)言語・沖縄(琉球)音楽を中軸に成り立っている。それでも「しまくとくば」の日である。沖縄言語と沖縄なり琉球を巻頭におかないかぎりこの条例は無国籍の条例でしかないであろう。

ところで那覇市文化協会内に新しく「うちなーぐち」部会ができる予定である。会長は宮良信詳先生、副部会長は北村三郎さん
事務局長が名嘉山秀信さん、私は名嘉山さんを補佐するかっこいい事務局次長という冠がついた。他那覇市芸術監督の若い安田辰也さんや安次嶺律子さん真境名由佳子さんも運営委員に顔を並べる。

当初名嘉山さんは「しまくとぅば」部会にしていたが、それではだめだと申し上げた。名嘉山さんはプロデューサーの腕前がいい方なのだろう。宮良先生が会長という事で大いに会を盛り上げることに賛同した。顧問の先生方は組踊の人間国宝のみなさまである。舞踊界の方々もまた応援されると期待している。沖縄独自の取組であるという事が大切だ。宮良先生は「沖縄語普及協議会副会長」もされている。『沖縄語普及協議会』の推進があって、県が「しまくとぅばの日」条例に至ったと認識している。

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月2回うちなーぐち講座も火曜日の夜7時~9時に開催予定である。
本年9月3日にうちなーぐちに関するフォーラムを新報ホールで開催する。
  9月11日には大城立裕作/幸喜良秀演出喜劇「ウチナーグチ万歳」が那覇市民会大ホール
  で開催される。
この「うちなーぐち」部会にはどなたでも会の趣旨に賛同する方は会員になれる。会費は年1000円と安い!
  (100人の会員を予定している)
連絡:名嘉山秀信:090-4347-8798
         【hidenobu@nirai.ne.jp】
あるいは【nasaki78@mail.goo.ne.jp】 に住所氏名、電話番号、メールアドレスを添えて申し込まれてもいいですよ。
  6月5日には総会が開催される。
  是非うちなーぐちを盛り上げていきましょう。
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もちろん、それぞれの地域ではそれぞれの地域語たとえば宮古語、その中でも伊良部語や池間語と地域で保持・継承していく文化運動がなされていく必要があるだろう。それぞれの地域で運動を推進していかなければ、消えていき書物かPCの中のデータ―になっていくのである。


≪写真は辻遊郭のあんまー姿の沖縄芝居役者・吉田妙子/来る7月17日国立劇場おきなわ小劇場で「花染の手布」-遊女(じゅり)の表象の舞台と鼎談を予定しています。時間は夕方6時開演。チラシは発注しているが、まだ校正ゲラも送られてこない。吉田さんはNHK『テンペスト』の撮影で東京へ出張中。彼女が13日に帰沖して詳細を詰める予定、と吉田さんに依頼された舞台の宣伝です!≫


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