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横山秀夫「震度0」

2006-07-21 | や・ら・わ行の作家
謎の失踪を遂げた警務課長を巡って巻き起こる幹部たちの駆け引きを描く。
そして明かされた真実とは。

今だ記憶に残る阪神大震災。その頃関西に住んでいた私も突然の揺れに
目が覚めた。枕元にいる猫を抱き寄せ、その揺れに身をまかせた。その
猫ももうこの世にはいない。窓からのぞくと近所の部屋のあかりがつぎ
つぎとついた。これが隣の県であれほどの被害をみたらす地震とはその
時思わなかった。

「会社に行かなくては」と自転車に乗り走り出した。途中バリバリと
音がし、何の音かと思ったら古いビルの窓ガラスが割れ、地面に散乱
していたのを踏んだ音だと気づいた。怖かった。もちろん電車は動いて
いない。諦めて家に帰りテレビをつけると兵庫の状況が映し出された。
兵庫には会社の人がたくさん住んでいる。皆どうしているのだろう。
心配になった。実際被災した人達は1週間以上会社に来なかった。
いつもスーツ姿の部長が汚れたジーンズとポロシャツで帽子をかぶり、
リュックを背負って買出しにやってきたのを覚えている。たくさんの
人が亡くなった。地震の時に亡くならなくても、地震の時胸に梁が
落ちてきて入院し、しばらくして先輩の母親が亡くなった。いろんな
話を聞いた。涙がとまらなかった。実際の被災者の話には重みがある。

あれから10年以上たつ。この「震度0」はそのことを思い出させた。
元事件記者の横山氏らしく警察内部を鋭く描いている。その時の緊迫した
ムードが本から伝わってくるようだ。キャリア、ノンキャリア、皆自分の
保身のため駆けづりまわる。そして明かされる真実。登場人物が多く、
ちょっととまどうこともあるが、本当にあの地震の時こういうことが
おこっていたのではと思わせる作品だ。

                        5点中3.9点