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狭いベランダで育てているバラのこと、趣味のこと、トールペイントのことなどなんてことない毎日を書いていきます。

姫路美術館で観た〈リアルのゆくえ〉の簡単な感想

2017-11-06 15:25:12 | 美術・芸術・絵画教室
今日は、記録として姫路美術館で観た〈リアルのゆくえ〉の簡単な感想を書きたいと思います。


江戸時代に西洋から入ってきた油絵の具による写実的表現、それまでの日本画や錦絵とは全く趣きを異にしたその絵を見た時

衝撃を受けその表現方法を自分のものにしたいと思った画家はたくさんいたと思うのですが

美術館に入って最初に展示されていた高橋由一は、本格的な油絵技法を習得し江戸後末期から明治中頃まで活躍した、日本で最初の「洋画家」といわれています。



向かって右側が高橋由一の『鮭』、左側が磯江毅の『鮭ー高橋由一へのオマージュ』。

入ってすぐにこの2点が並べて展示されていました。

由一で始まった西洋の写実絵画が、様々な変遷を経て現代の画家磯江毅さんが描かく「写実を極めると言う事は、写実ではなくなると言う事」(磯江毅さんの言葉)

と言う絵画にまで発展していったと言う事なのでしょうね。


展示はその変遷がよく分かるように、明治、大正、昭和、現代に分かれていました。

明治時代の展示はほとんどが人物画でしたが、それぞれに洋画と言うものを習得しようと鬼気迫る思いで描いたと思われ

その真摯な情熱のようなものが伝わってきました。


横山松三郎の『自画像』


五姓田義松の『母勢子像』『老母図』

レンブラントとまでは言えないながらも、胸に迫ってくるものがありました。


大正時代にはいると、写実を基礎としながら独自の美意識で数々の傑作を生んで天才と謳われた岸田劉生が取り上げられていました。



「写実な美が唯心的な美を殺すことになるのなら唯心的な域を生かし写実を殺すべきである」と言う言葉を残しています。

麗子像を見ればなるほどと納得しますね。


Wikipediaによると、病的に神経質で潔癖症で、汚物に汚れた腕を「切り落とせ」と騒いで周りを困惑させたり、

癇癪もちで気に入らないことがあると当り散らしたりする方だったようです。

こう言った逸話も知ると面白いです。

岸田劉生に憧れてはいるけれど、岸田劉生を越えなければならないともがいた画家もいたようです。

私は、人物画より静物画の方が好きでした。


『赤きリンゴ2個と瓶と茶碗と湯呑み』


昭和に入ると岸田劉生の流れを汲んでか、単なる写実ではなく絵の中に強く精神性を求めたものが多くなりました。


向かって右が長谷川燐二郎の『猫』、左が高島野十郎の『蝋燭』

高島野十郎は、世間と隔絶しひたすら自分と向き合い自分の絵画を求めてストイックに生きた人です。

「花一つを砂一粒を人間と同時に見ること、神と見ること」と言う言葉を残しています。

そんな風に生きるのは苦しそうですが、心はきっと澄み切って美しかったのではないでしょうか。


長谷川燐二郎の絵は、心に沁みこんでくるような美しさとそこはかとないユーモアを持ち合わせていて、私はとても好きでした。

超寡作な燐二郎は一枚の絵に何年も時間を掛けて描く画家だったようです。

「私が口にしようと思っても躊躇して口にできない問題

私にとって大切な問題がある

誰かが私の絵の中にその事情を読み取ってくれるだろうか」と言う詩のような言葉を残しています。

美の巨人たちに色々と面白いエピソードが載っていました。こちら

コアなファンを持つそうですが、そうでしょうね、本当にいい絵でした。


『紙袋』


さて、現代にはいると私の中で急にどの絵も生き生きと息づいて来る感じがしました。

時代を共有している感覚とでもいうのでしょうか。

素晴らしい作品ばかりで、もう一度あの場所に行きたくなる思いが募ります。


磯江毅『深い眠り』(鉛筆、水彩、アクリル、墨、紙)


本田健『山あるきー五月タンポポ』(チャコールペンシル、紙)


犬塚勉『梅雨の晴れ間』(アクリル、キャンバス)


安藤正子『Light』


水野暁『The Volcano-大地と距離について 浅間山』(油彩、キャンバス)

精緻に描かれた絵画から発せられる静寂な空気感、その静けさに慰められ心が清められていくような気持ちになりました。

そして、この絵にかけられた膨大な時間と労力、厳かな祈りが感じられ頭を垂れたくなる思いに駆られました。

千葉県にあるホキ美術館は、現代の写実絵画がたくさん集められているようですので、是非一度行ってみようと思っています。


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