東京の桜は4月を待たず満開となった。28、29日の週末にはまだ5分咲きくらいだったが、気温の急激な上昇と晴天で一気に満開へ向かった。週が明けてしばらくはお花見日和の晴天が続いたが、週後半からは雨になるので花散らしになるだろう。定番のお花見スポット、千鳥ヶ淵へ行ったが、平日にもかかわらず見物客でごった返している。今年目立つのは外国人観光客。Hanamiを楽しんでいる。せいぜい日本の最高の季節を満喫して帰ってほしいものだ。
この時期は、普段見慣れた都会の日常の風景が一週間だけ非日常の風景に変わる。通勤通学で通る最寄り駅への道も、このときばかりは「お花見ロード」。桜って考えてみると不思議は樹だ。普段は全く目立たず、どこに桜があるのか意識することもないのに、一年でこの時期だけ一斉に咲き、その存在を誇示する。こんなところにも桜がいたんだあ!と。桜は町の景色を一変させる力を持っている。人々の気持ちも切り替えさせてくれる。長くて寒い冬が終わり、暖かい春を迎える喜びに満ちている。桜を見上げている顔はそういった希望と安堵の顔だ。今年も春が来たぞ... そしてあっという間に散りゆく。水面に浮かぶ花筏。散華の美も見事。そして新緑の季節へ。この時期は慌ただしい。
そう思ってみると東京には桜が多い。江戸の名残だろう。上野寛永寺、墨田川堤、飛鳥山、愛宕山、御殿山、など江戸庶民の娯楽、お花見の名所が今も残っている。残念ながら御殿山は、黒船来航の時に急遽設けられたお台場用の土採りと、明治期の鉄道開通の時に山が切り崩されてほぼ無くなってしまった。千鳥ヶ淵や靖国神社などは明治以降の桜名所だ。それ以外にも地元の街のいたるところに桜が植えられている。
戦前、東京市長であった後藤新平が日米友好の徴に贈ったワシントンポトマック川の桜は、東京と同じソメイヨシノであったが、こちらは一週間どころか一ヶ月くらい咲いていたように思う。なかなか散らない桜というのも妙なものだ、と思ったものだ。同じ桜でも風土によってその散り方が違う。日本とアメリカという風土の違いが、日本人、アメリカ人の心情の違いを表しているのだろうか。
奈良、京都など関西はまだ開花したばかりだから、東京の桜の方が早い。奈良公園の氷室神社の早咲き垂れ桜は満開だそうだが、吉野のお山もこれからだ。又兵衛桜や佛隆寺の桜はもっと先だ。お江戸の桜とは違った風情があっていいものだ。
それにしても、さくらさくらで、少々花酔い状態だ。桜には魔物が住む。人を狂気に導く魔力がある、と言ったのは坂口安吾だったか。「桜の森の満開の下」では恐ろしいことが起こる、と。なにか心落ち着かなくなるのはそのせいなのか。
千鳥ヶ淵 |
平日にもかかわらずこの人出 |
大森貝塚庭園 |
JR大森駅への道 |
いつもの通勤路も花盛り |
猥雑な駐輪場も画になる |
八重洲さくら通り |
日本橋野村本店前 |
日本橋 |