坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ヴェネツィア展 日本初公開「二人の貴婦人」

2011年06月18日 | 展覧会
ヴェネツィアを代表する13の館からなるヴェネツィア市立美術館群から、この秋、ヴェネツィア共和国の栄華を物語る15世紀から18世紀の絵画、工芸、服飾、模型、井戸など約140点の作品が日本に集結。東京会場を含む全国6箇所に1年をかけて巡回します。
ヴェネツィアというと16世紀ルネサンス期のティツィアーノやティントレットら色彩豊かな宗教画の数々を思い起こします。本展においても、ヴェネツィア派の先駆者となったベッリーニの「聖母子」やティントレットのドゥカーレ宮殿の大壁画の下絵の「天国」が出品されます。そのなかで目を引くのは、ヴェネツィア生まれの画家、ヴィットーレ・カルパッチョの存在です。
・ 掲載作品は、カルパッチョの「二人の貴婦人」1490-95年頃 コッレール美術館のテンペラ画です。
詩人のジョン・ラスキンが世界で最も美しい板絵と讃えたといわれ、完成度の高い作品となっています。この作品に関しては解釈が分かれていたのですが、20世紀中頃にこの作品の上部が発見されたことから、この謎めいた二人の婦人は、狩に出かけている夫たちを待っている親子の場面であると推測されるようになりました。物思いにふけるような謎めいた表情の二人と犬や鳥などが多く登場して画面空間を形作っています。この作品は左側が唐突に切れていますので、左半分が欠けているとみられています。その片方の絵の発見はあるのでしょうか。謎の多い作品の一つです。(この作品は東京展の特別出品となります)

◆ヴェネツィア展 魅惑の芸術ー千年の都/9月23日~12月11日/江戸東京博物館他、名古屋市博物館、宮城県美術館、京都文化博物館、広島県立美術館  http://www.go-venezia.com