坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展②

2011年06月08日 | 展覧会
モネ、ルノワール、ピサロ、シスレーら印象派の作品群はどれも代表作ばかりで、1点1点をじっくり鑑賞。印象派の中でも人物像に秀でたルノワールは、「踊り子」「アンリオ夫人」など淡い白とブルーの柔らかい響きが豊かな旋律を奏でています。印象派の懸け橋となったマネは、母子像を描いた「鉄道」が圧巻。
このような代表作を収集する上で、本展においてもアメリカの印象派の画家として、母子像を描いて人気であったメアリー・カサットの存在が大きいものがあります。彼女は画家として印象派の擁護者として、アメリカのコレクターに収集を働きかけました。ソファにくつろいでいる自然体のポーズが可愛い少女を描いた「青いひじ掛け椅子の少女」も会場でひときわ華やいでいました。
ポスト印象派に位置づけられるゴッホは独特の空間処理の太いタッチの集積で画面を埋めていきます。もっとも輝かしいアルル時代の「プロヴァンスの農園」。発作直後に描いた「自画像」、会場の最後を飾ったのは「薔薇」、最後の精神療養院で過ごした時期の旺盛な制作活動を示す一作で、厚塗りのタッチで魂を封じ込めた印象的な作品でした。

◆ワシントン・ナショナル・ギャラリー/開催中~9月5日/国立新美術館(六本木)