坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ワシントン・ナショナル・ギャラリーー開幕①

2011年06月07日 | 展覧会
12世紀から現代まで約12万点の西洋美術のコレクションを誇るワシントン・ナショナル・ギャラリー。ワシントンにおける国立の初の美術館として、実業家のアンドリュー・メロンのコレクションを基盤に70年前に創設されました。その後は彼の志に賛同した一般市民からの寄贈で世界に誇る美術館へと成長していきました。なかでも、印象派とポスト印象派の作品群は質の高さで知られています。この70年を節目に改修工事が行われ、そのもっとも輝かしい19世紀中頃から起こった近代美術の思潮の作品群、日本初公開50点を含む全83点が日本に貸し出される運びとなりました。印象派の懸け橋となったカミーユ・コローの作品「うなぎを獲る人々」が会場の入り口を飾りました。
・掲載作品のクロード・モネ「揺りかご、カミーユと画家の息子ジャン」1867年は、モネの初期の作品として貴重であり、息子ジャンの最初の肖像画でもあります。父親としての愛情が画面いっぱいに伝わってきます。この時期モネは金銭的には困窮の時代にありましたが、作品の中では中産階級の幸福なイメージが紡ぎだされています。
モネの代表作である「日傘の女性、モネ夫人と息子」「太鼓橋」など印象派の筆触分割の技法が存分に発揮され、発展の流れがわかるような構成になっています。

◆ワシントン・ナショナル・ギャラリー展/6月8日~9月5日/国立新美術館(六本木)