坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

名和晃平ーシンセシス 彫刻の概念をこえて

2011年06月27日 | 展覧会
インセシスとは合成、統合を意味する言葉ですが、名和晃平さん(1975年~)は彫刻家として今までのカテゴリーでは規定できない未知な分野に挑んでいます。現在、東京都現代美術館で開催中の本展は、「Cell」(細胞)という概念をもとに、立体、3Dという概念と映像の3D化ともいうべきイリュージョン的なゾーンもつくりだしています。
展覧会主旨を説明する東京都現代美術館学芸員の森山朋絵さんと名和さんですが、この企画のオファーがあったのは1年前で、名和さんは、この美術館の空間の作品の設置を循環するようなゾーンをつくりだしたいと、新たな構想を練っていきました。時間的には大変だったようです。
現在は、京都造形芸術大学准教授として京都に在住。アトリエは、京都の宇治川沿いにあるサンドイッチ工場跡をリノベーションした「SANDWICH」で制作をしています。最先端のアートと都心からの距離感という時間の交錯が面白い化学反応を起こしているようです。
ビーズやプリズム、発砲ポリウレタンなどの流動的な素材を使っていますが、〈LIQUID〉というゾーンでは、シリコーンオイルを発光させ、グリッド上に泡を発生させています。白い界面には絶え間なく生成するセルの不可思議な光が新たな視覚のイメージをつくりだしていました。
ビーズのシリーズで知られる名和さんですが、この個展を契機に感性と物質の交流から生まれてくる知覚のリアリティを多様な変容のスタイルで展開しています。

◆名和晃平ーシンセシス/開催中~8月28日/東京都現代美術館(江東区三好)