坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

現代パキスタンのミニアチュール

2011年06月05日 | 展覧会
急速な経済発展を背景に中国の現代アートは世界的なマーケットに参入し、現在では欧米中心の美術の方向性に一石を投じるアジアの大きな役割を担っています。
90年代に中国だけでなく、韓国、東南アジア、インドなど同時代のアーティストの展覧会が日本でも国際交流基金アセアンセンターなどで、多く紹介され、固有の文化や歴史、民族的な表現を織り込んだ土着的な大型のインスタレーションが特徴的でした。今ではヴェネツィア・ビエンナーレをはじめとして国際展では、アフリカや南米などどちらかと言えばマイノリティの存在を浮かび上がらせるアーティストに光をあてる展覧会が定着してきました。
彼らは、これまでの西洋のモダニズム的進化ではなく、近代化の波の中で、独自の方法論を模索していきます。
東京画廊で開催された本展は、大型のインスタレーションではなく、数百年の歴史をもつパキスタンのミニアチュールという形式の中で、ささやかですが、密度の濃い個々の表現を展開させています。
ワシリ紙という和紙の素材にも似た紙に、アクリルやインク、マーカー、ボールペン、または人毛などを素材として、個人的体験や物語を多様に表現していきます。イムラン・クラシを中心としたラホールの国立美術学院のアーティスト6名の作品の小さな世界に宇宙がこもった内容は新鮮な驚きがありました。

◆密やかな絵画ー現代パキスタンのミニアチュール/開催中~6月25日/東京画廊+BTAP(銀座8丁目)
 TEL 03-3571-1808