坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ヨコハマトリエンナーレ 開催まで1カ月余り

2011年06月29日 | 展覧会
今年の国内の大規模な国際展と言えば、この夏から開催されるヨコハマトリエンナーレ2011です。今年で4回目となる本展は、横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫とその周辺地をメイン会場に開催され、国内外のアーティスト60余名の作品を中心に、横浜美術館所蔵品も一部加えて展示されます。
「OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?」をタイトルに、世界や日常の不思議、魔法のような力、超自然現象や神話、アニミズムなどに言及した作品群に光をあてています。グローバル社会が進み、科学万能の時代にあって、科学や理性では解き明かせない領域に改めて目をむけることで、忘れ去られていた価値観や人と自然の関係について考えてみることで、より柔軟な世界との関わり方が見えてくるのではないかという問いかけがあります。
半数以上を占める海外参加アーティストは国や世代も表現媒体も多様であり、設置される場の固有の表現であるサイトスペシフィックなインスタレーションや映像メディアも楽しみです。
・掲載作品は、シガリット・ランダウ〈DeadSee〉2005年。1969年イスラエルのテルアビブ生まれで、ビデオ作品を主体として一貫して自国イスラエルに主題を求めてきました。この作品は、500個のスイカと自らの体を死海に浮かべて、直径6メートルの円を形作り、作品にしました。イスラエルの歴史的、民族的記憶を同時代へと引き寄せ、人間存在について問題を投げかけます。今回の展覧会では、意外な「遭遇や出会い」があることも特徴です。国際展では、参加型のアートの成り立ちも興味を引きます。
ジュン・グエン=ハツシバ(敬称略)は、ホーチミン在住で日本人の母とベトナムの父の間に1968年に生まれました。今回のランニングプロジェクトでは、アーティストが実際に走ることでGPSで描かれる「地球のドローイング」とビデオ作品などによって構成されます。トリエンナーレのサポーターで現代アート通の友人から届いた情報では、彼女たちサポーターの方々も走り、このビデオ作品に参加したようです。近日中にも再来日し、交流会が持たれます。
国際的な美術展の運営には、サポーターの方々の支援の輪が展覧会内容に活気をもたらせてくれます。

◆ヨコハマトリエンナーレ2011/8月6日~11月6日/横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫他 
 http://www.yokohamatriennale.jp