坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ZIPANGU ジパング展

2011年06月09日 | 展覧会
ジパングというのは、少し時代がかった展覧会名ですが、本展の企画者である〈ミヅマアートギャラリー〉の三潴氏は、世界でも認められている建築やデザイン、マンガやアニメなどとともに、日本の独自性をもっとも顕著に示す現代美術、とりわけ絵画の先鋭31人のアーティストの力作の数々を島屋と提携しより広く一般の方々へと発信しています。
日本の古典や美術史や技法を踏襲しつつ、日本画の新たな現代の世界観を形作る三瀬夏之介(敬称略、以下同)、山口晃、町田久美、山本太郎、私小説的な味わいを付与する渡邊佳織、木版画の風間サチコ、紙にペンとインクによる池田学、浮世絵版画の色を用いたアニメのインスタレーションで知られ、ベネチア・ビエンナーレ日本代表の出品作家の束芋ら、現代のアートシーンの前線を切り取る見どころの多い内容となっています。
三瀬夏之介さんは、新聞のインタビューで、「この不安定な大地の上に仮住まいしている。か弱い人間を確認する作業かもしれません」と作品について話されています。表層的に流れていく日常の中で、混沌の中に光やリアリティを求めていこうとする共通する意識の強さが多様な表現によって膨らんでいます。

◆ZIPANGU ジパング展/開催中~20日/日本橋高島屋8階ホール TEL 03-3211-4111