ロック探偵のMY GENERATION

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『シン・ゴジラ』

2018-08-25 14:32:16 | 映画
映画『シン・ゴジラ』を見ました。

なかなか見る機会がないうちに時機を逸していたのですが、アマゾンプライムに追加されたのを機に、観てみました。

このブログでは、映画系記事としてvsモノシリーズをやってましたが、それもだんだん飽きてきたので、前回のゴジラからのつながりで、今回は『シン・ゴジラ』について書こうと思います。

まあ、すでにいろんなところでいろんなことが語られていると思うので、いまさら解説めいたことを書く気もありません。

そのうえで、この映画を語る際に一つのキーワードとなる“リアリティ”という点について、ちょっと思うことを書いてみたいと思います。

この映画は、ゴジラが実際に日本に現れたらどうなるのか、というシミュレーション的な感じにもなっています。

政治家たちの振る舞いについてもそうでしょうが、何より軍事に関するディテールが大きく注目されたところでしょう。防衛省の協力を得て、ゴジラが現れたらどう迎え撃つかという作戦立案をしてもらったそうで、そこが迫真のリアリティにつながっているわけです。

しかしながら、“ヤシオリ作戦”については果たしてどうなのかとも思わされます。

(以下、『シン・ゴジラ』終盤の内容に触れています。極力ネタバレは避けますが、ご覧になっていない方はご注意を。また、あえて批判的なことをちょっと書きますが、それがただちに結論でないことをご承知おきください)


これはたぶん世間的にもいわれていることだと思いますが、“ヤシオリ作戦”は、うまくいきすぎじゃないのか、あんなにうまくいくのか、という意見を持つ人が多いと思います。

とりわけ、車両などの移動がスムーズにいっていることがどうにもおかしく思えます。現場周辺は広範囲に瓦礫の山と化していて、とても車両が移動できそうに見えないのに、なぜだかゴジラのいる場所には十分なスペースがあって、車両がみんなそこに集合しているという……

また、〇〇爆弾がゴジラに総攻撃をかけるシーンも、あれができるポイントは相当かぎられているはずなのに、たまたまゴジラがそのポイントにいる。そして、あれだけ東京中が破壊されているにもかかわらず、その〇〇爆弾が移動する手段はちゃんと残っている……これも相当不自然でしょう。

つまり、一言でいえば、“ご都合主義”的なんです。


しかし……私は、そのことは重要な問題ではないと思います。

まあ、自分の書くものもよくご都合主義といわれるので、そのことに対するエクスキューズでもあるんですが……

エンタメ作品においては、リアリティというのは、いくつもあるパラメータの一つでしかないと思うんです。そして、さほど重要な要素でもないんじゃないでしょうか。

もっとも重要なのは、仕掛けの面白さとか発想の非凡さといったことであって、それを成立させるためなら多少のご都合主義はあってもかまわない……と私は思ってます。


いつだか、オカルト研究で有名な人がUFO映像について語っているのをテレビで見たときに、似たようなことを感じました。

その人がいうには、本物のUFOは回転したり光ったりしないのであって、そういった映像はみんな作り物だというんです。
で、その人が“本物”と太鼓判を押したUFO映像というのが流されてたんですが、これが実につまらない。遠くのほうに、白い小さな粒のようなものがふわふわと浮かんでるだけなんです。それが“リアリティ”のあるUFO映像だというんです。

なんで突然UFOの話をはじめたかというと……「リアリティがある」ということと「観ていて面白い」ということとは、たいていにおいて矛盾すると思うんですね。

芥川龍之介はモーパッサンを評して「美しい退屈」といいましたが、つまりはそういうことなんだと思います。
文学的リアリズムということなら“美しい退屈”をきわめるのも結構でしょうが、怪獣映画やUFO映像やミステリー小説にそんな高尚なことが必要なのか。

UFO映像なら、デコトラよろしくピカピカ光るUFOが回転しながら着陸して、グレイみたいな宇宙人が手を振っているような映像が見たいんです。作り物だとわかっててもいいんです。別にこっちは、はじめから本物のUFO映像が見たいなんて思ってないんですから。


で、ここで『シン・ゴジラ』に話を戻しましょう。

件の〇〇爆弾も、要はその発想の面白さや、絵としてのインパクトといったことを見るべきであって、リアリティという観点から評価するべきじゃないと思うんですね。そして、そういう視点で見れば、『シン・ゴジラ』はよくできた作品だと思うんです。ゴジラの圧倒的な破壊力と、それに立ち向かう人類の戦い……そのフィクションを、フィクションとして堪能すべきでしょう。
ただ逆に、あの作品から政治や軍事といったことのリアルを語るべきではないとも思いますが……


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