ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

宝田明さん、逝く

2022-03-18 16:11:17 | 時事


俳優の宝田明さんが亡くなったというニュースがありました。

享年87歳。
大往生といったところでしょうか。

宝田明さんといえば、やはり私としてはなんといってもゴジラ。
第一作『ゴジラ』をはじめシリーズ初期作品の多くで主演をつとめ、平成ゴジラでもゲスト的な感じで何度か出演されていました。最終的にカットされたものの、2014年のアメリカ版『GODZILLA』でもカメオ出演することになっていたといいます。


宝田さんは、戦前日本の植民地だった朝鮮半島で生まれ、のちに満州に移住。そこで引き揚げを経験しています。
その過酷な経験のために、筋金入りの護憲派であり、戦争には絶対に反対という姿勢を鮮明に持っていました。
その信念から、安保問題が持ち上がった翌年2016年には参院選に出馬などという話も。それは結局立ち消えになりましたが……その頃のインタビューの動画を時事通信が公開しています。以下に、リンクしておきましょう。

1945年、宝田明少年が見た終戦=旧満州・ハルビンから引き揚げの記憶

この動画のなかでは、満州にソ連軍が侵攻してきた際の様子が語られています。
ソ連兵に銃撃を受けたというのは有名なエピソードですが、ほかにも、ソ連兵による略奪行為や婦女暴行について語っていますが。こういうことがあると、ソ連の一兵卒だけでなく、ソ連という国全体を受け入れられない、否定してしまう……ということなんですが、しかし宝田さんの思想はそこから一歩先へ進みます。
ひるがえって、では日本はどうなのか。植民地解放という大義名分があったにせよ、戦争になれば、命の尊厳などというものはまったく無視されてしまう。戦争は憎悪を生む。だから戦争をやってはいけない――という結論にいたるのです。
奇しくもいま、ソ連の後継国家というべきロシアがウクライナに侵攻するという事態になっているわけですが、宝田さんはこの問題にも大きな関心を寄せていたようです。
今月の10日は主演映画の舞台あいさつに出ていたそうですが、そこでウクライナ侵攻に言及し、「平和を愛する国が蹂躙されているというこの現実を見た時に、もっと社会性を持った映画を作らなきゃいけないと思っています」と語ったといいます。ぜひ日本ゴジラの新作でやってもらいたかったところですが、残念ながら、それも叶わぬ願いとなってしまいました……


宝田さんは、リレーにたとえるなら自分はバトンだといっています。
次の世代へメッセージを渡していくバトン――そこに託されたメッセージは、次のようなものです。
「日本は、戦争と名がつくようなものには一兵たりとも参加させません。一人たりとも殺しません。そこはノーという。世界の人から立派な国だなと思われますよ」
果たしてそのバトンを受け取り、また次の世代に手渡せるのか。
ウクライナ侵攻にことよせて核保有論さえ語られるこの国で、いまそこが問われています。




最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (h_tutiya)
2022-03-21 04:54:45
ありがとうございます。宝田明さんの死に寄せて、私が書きたかったことを、それ以上の精度で書いていただきました。何も追記することはありません。ご冥福をお祈りします。
返信する
Unknown (murakaminobu)
2022-03-22 05:31:07
コメントありがとうございます。

私としても、ご冥福をお祈りしたいと思います。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。