ロック探偵のMY GENERATION

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新型コロナ感染状況についての考察

2020-05-26 20:01:03 | 時事


緊急事態宣言がいよいよ全面解除となりました。

新規感染者数も減少し続けていて、新型コロナも一定程度収束してきたかのようです。
これを受けて、「日本のコロナ対策はなぜ成功したのか」といったような話があちこちでみられます。

私は、そもそも「日本のコロナ対策は人口あたりの死者数でみればうまくいっている」という見方は疑わしいと一昨日の記事で書きましたが……この点について朝日新聞に記事が出ていました
朝日新聞でも同じような計算をしていて、それによると日本は208の国・地域のなかで人口あたりの死者数が94番目という結果になったそうです。
つまり、少ないほうから数えると115番目ということで、私が以前の記事で示した113番目という数字とそう変わらないでしょう。「2」のずれは、計算した時点の違いか、あるいは私が計算に含めなかったものが含まれているためと思われます。


計算しておいてなんですが、実は私は、感染者数や死者数を人口比で考えることにはあまり意味がないと思っています。

たとえばシンガポールは、人口が560万人ぐらいですが、国自体が一つの大きな都市のようなもので東京23区ほどの面積にその560万人が住んでいます。仮に、そこでニューヨークで起きたような感染爆発が起きたとしましょう。すると、人口560万人で死者1万人というような事態となり、世界でも突出して高い異常な死亡率ということになります。しかし、そこで起きていることは、ニューヨークで起きたことと変わらないわけです。そんなふうに考えると、人口比でみるというのは必ずしも感染の実態を反映しているとはいえないでしょう。

では、死者数でみるとどうなのか。
人口比ではない絶対的な数という観点で見ても、じつは日本はうまくいっているとはいえません。というよりも、むしろそっちのほうが悪いです。死者数でみれば、日本は世界で28番目。あきらかに悪いほうに入ります。
つまり、単純に数字で見ても、割合で見ても、日本のコロナ対策はうまくいっているとはいいがたいのです。


しかし、それにもかかわらず、世間では「死者数で考えれば日本はうまくいっている」という意見がかなり広くいわれているように見受けられます。

おそらく、それをいう人も、人口比なのか絶対数なのかの区別をきっちりせずに、具体的な数値のことは考えず、たぶんそうなんだろうぐらいの感覚でいっているのではないかと思われます。
統計的な数字とはかけ離れたイメージが独り歩きするということはあって、これもその一つということなんでしょう。

統計的な数字とイメージの乖離を示すものとして、次のような命題を考えてみましょう。


人口比で考えれば、日本における新型コロナの感染者数・死者数は、いずれも中国の二倍以上である。


これははっきりとした数字で示されていることです。が、多くの人はそれを聞かされても「え、そうなの?」という反応をみせるのではないでしょうか。
信じられないという人のために、具体的な数字を示しましょう。
(人口は、グローバルノートより。感染者数、死亡者数は、JX通信社サイトより5月26日19時24分時点の数値)

中国の人口:およそ14億3378万4千人
日本の人口:およそ1億2686万人

中国の感染者数:8万2992人
日本の感染者数:1万6619人

中国の死亡者数:4634人
日本の死亡者数:862人

中国の10万人あたり感染者数:およそ5.8人
日本の10万人あたり感染者数:およそ13.1人

中国の100万人あたり死亡者数:およそ3.2人
日本の100万人あたり死亡者数:およそ6.8人


欧米や中東以外の国と日本を比較すると、だいたいこんな感じです。
であってみれば、“日本モデル”というのも、話半分に聞いておく必要があるでしょう。
概して、アジアやアフリカの国々は日本よりもずっとうまく対処しています。日本のコロナ対策がものすごくうまくいっていて、世界をリードする立場にあるなんてことはないんです。

先述した朝日の記事では「G7の中では抑えられている」みたいな言い方もされていますが、G7で比較するのは適切と思えません。
G7のメンバーは日本以外欧米の国であり、そこだけで見るときわめて強いバイアスがかかってしまいます。
そもそも感染症の問題に、G7であるかどうかが特に意味を持つわけではないでしょう。「世界の主要国だから人の出入りが多い」みたいな考え方があるのかもしれませんが、それにしたって、いまこの21世紀の時代にあって、G7がそれ以外の国に比べて特に人の出入りが多いということもないんじゃないかと思います。まあ、これはきちんと調べたわけではないのでわかりませんが……

《追記》
念のためにもう一度書きますが、決して日本を貶めようとしてこのような計算をしているわけではありません。日本のコロナ対策は必ずしもうまくいっていないという認識をもっておかないと、油断して第二波に襲われるということになりかねません。潜在的な感染者が相当数いるということを考えておかないと、そうなる可能性は決して低くないでしょう。