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椎名林檎 - 自由へ道連れ

2020-03-21 21:13:12 | 音楽批評

 

 

今回は、音楽記事です。

 

音楽カテゴリーでは前回東京事変について書きました。そこからのつながりで、今回は椎名林檎さんについて書きましょう。

 

取り上げるのは、椎名林檎さんが2012年に発表した「自由へ道連れ」。

 

東京事変解散後、最初にリリースされたシングルで、小松奈々さんが出演するPVも話題になりました。

そのPVを貼り付けておきましょう。

 

椎名林檎 - 自由へ道連れ

 

この曲はまず、なんといっても、ギターリフがかっこいい。

シンバルのカウント(?)に続いて、ピックスクラッチからなだれこむあのリフは、破壊力があってじつに印象的です。

事変の「閃光少女」と同様に、いま自分が所属しているバンドでやってたりするんですが、ギターソロの部分もふくめて非常に弾きがいのある曲です。まあ、それをどこまで弾けているかというと、微妙なものがありますが……

 

曲全体をとおしてみると、ポップな感も。

 

椎名林檎/東京事変の曲は、どこか昭和歌謡的なレトロ感を漂わせているものが多い印象がありますが、この曲はちょっと違った意味で懐かしい感じがします。私のイメージでは、平成初期の草創期J-POPのような……

 

しかしながら、この歌にも、単純なポップではないところが感じられます。

林檎さんは「罪と罰」という歌で“現実界”というラカンの言葉を使っていたりして、ポップな歌であっても、しばしばそういう哲学性が顔をのぞかせます。

 

  世界の真ん中が視たい

  Take me there, won't you?

  混沌(カオス)と秩序(コスモス)の間で待って居るよ

 

と、まず「混沌/秩序」という二項対立が示されます。

 

それからさらに「破壊/建設」「子供/大人」「男/女」という対立概念を並べていき、最後にこう歌います。

 

 

  相反する二つを結べ 

  自由はここさ

  本当の世界のまん中

 

あらゆる二項対立が無効化されるデュオニソス的祝祭……そこにある“自由”は、一般的に使われる自由という言葉の意味を超えたものでしょう。

 

PVも、そういうモチーフを表現しているように見えます。

スクリーンに映し出された虚構の世界を破り捨てると、その向こう側に“本当の世界”がある。そして、歌詞に出てくる“ミサイル”という言葉や、PVに描かれるライターの炎、花火……それらが喚起する爆発のイメージ。まさにここが、椎名林檎というアーティストの危険な魅力なのです。