台風19号の被害で、民主党政権時代のことがやり玉に挙がっています。
八ッ場ダムの建設を中断するといったことや、いわゆるスーパー堤防を「事業仕分け」したことなど……
今回は、こうした点について、それはちょっと違うんじゃないかということを書いてみようと思います。
もちろん旧民主党の関係者が反論してはいますが……いかんせん、当事者がいうと、どうしても言い訳みたいに聞こえてしまいます。
それでますます「旧民主党関係者が苦しい言い訳」「やっぱり民主党の政策は何もかも間違っていたんだ」みたいになるのはミスリーディングだと思うので……この点について、当事者でない立場(私は立憲民主党支持ではありませんし、旧民主党政権が行った事業仕分けにも懐疑的でした)から反論を提示したいと思います。
内容の多くは、牧田寛さんという方がハーパービジネスオンラインに寄せた記事を参考にしていますが、八ッ場ダムの有無によってどの程度利根川の水位が変化するかは私も一度大雑把に計算してみました。八ッ場ダムの貯水量や、利根川の長さ、川幅などから単純に計算しても、そう違わない結果が得られます。
まず、八ッ場ダムについて。
・八ッ場ダムの貯水量がいくら大きいといっても、利根川水系全体で考えてみれば、それほど大きくはない。八ッ場ダムがなかったとしても、それで上がる水位は、10~15cm程度。場所によっても効果に濃淡があり、効果があまりない下流では5cm程度しか水位が変わらない。そうなると、今回の台風ではほとんど意味がなかったろうと思われる。
・今回は、初回の試験湛水でたまたまダムが空っぽだったということにも助けられている。
空っぽの状態で一昼夜で満杯になっているのだから、普通に運用している状態だったら持ちこたえられなかった可能性が高い。つまり、今回八ッ場ダムが緊急放流をせずにすんだのは、一回限りの偶然によるものと考えられる……
スーパー堤防について。
・スーパー堤防があったとしても、堤防の高さは変わらないので、河川の氾濫による被害は防げない。
・そもそもスーパー堤防は、すべて完成するには数百年単位の時間がかかるといわれている。事業仕分けがなかったとしても、現時点までにどの程度造れていたかは疑問。また、「数百年」というのも、純粋に技術的に考えての話で、土地の所有権といった手続き的なことも含めて考えれば千年単位の時間がかかるともいわれる。効果を云々する以前に、およそ非現実的な政策である。少なくとも、仮に事業仕分けがなかったとしても、今回の台風被害をスーパー堤防によって防げた可能性はほぼない。
・必要だと思うなら、自民党が復活させてやっていればいい。
自公政権になってもう7年。スーパー堤防が必要だというのなら、その間に復活させて事業を進めることもできたはず(前述したように、おそらくそれによる防災・減災効果は望めなかっただろうけれど)。今回の台風で起きた被害を、十年前から三年半ほど政権を担当しただけの民主党のせいにするのは無理がある。