むじな@金沢よろず批評ブログ

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馬英九「英語のほうが台湾語よりもうまい」という問題

2007-06-06 00:06:04 | 台湾言語・族群
最近の自由時報はそれほど読むところがないが、4日付けで「馬英九は英語のほうが台湾語よりもうまい」という点が中南部で問題視されている、という記事が出ていた。これは前段であって、後段としては「馬英九は中国に対するほうが台湾に対するよりも良い(友好的だ)」というものがある。
同じことは、私もこれまで台湾人の友人たちに提起していたし、別に中南部で今になって始まった話ではなく、普通の台湾人の庶民なら感じることだろう。

中華民国=台湾の大統領(本人は指導者と思っているんだろうがw)になろうという人間が、台湾における最大の母語、土着言語である台湾語が流暢にできず(はっきりいって外国人である私よりはるかに下手くそだ!)、英語のほうが流暢というのは、どう考えても尋常なことではないからだ。
日本の首相で英語のほうが日本語より流暢だなんてありえないだろう。

これについての続報が自由時報5日付けにも出ていて、国民党所属で馬英九直系立法委員の呉育昇が「言語の使用は個人のキャラクターを尊重すべきだ。たとえば謝長廷は日本語がうまいが、國語は下手だ。では謝長廷は台湾に対するアイデンティティがないといえるのか?もしビン南語を基準にするなら、それは典型的なビン南人ショービニズムである」などと反論しているが、的外れもいいところだ。これで国民党は台湾の民意に疎いことが証明された。

(1)国民党は台湾語のことを一貫して「ビン南語」などと呼ぶが、ビン南地域ではビン南語だけを話しているわけではないから(ショー語や客家語も存在する)、あたかもビン南ではビン南語しか存在しないといいたげなこの名称はおかしい。しかも「ビン」の字は門がまえに虫なんだから、典型的な蔑称である。国民党は原住民語も「番仔語」と呼ぶつもりか?
(2)ショービニズムというが、台湾住民の75%がビン南語系の台湾語を母語にしているのだから、それを真っ先に基準にすることは自然の流れである。自然の感情に対してショービニズムなどという言いがかりをつけるのであれば、ではホーロー人は台湾語を話してはいけないとでもいうのか?国民党に台湾語を抑圧する権利などないはずだ。
(3)75%の母語についてショービニズムというなら、米国における英語、フランスにおけるフランス語も、それぞれ20%近くを占める移民や少数民族の存在を無視するショービニズムということになるのか?馬英九が米国に留学しながら、スペイン語などいろんな移民の言語を学ぼうとせず、英語だけを学んだのはショービニズムではなのか?
(4)「國語」をさして、台湾アイデンティティの証明だと思っているようだが、これも笑止である。台湾語が台湾の唯一の言語ではないというなら、「國語」も台湾における唯一無二の言語ではなく、単に台湾における数ある言語の一つに過ぎない。それをもって台湾アイデンティティの象徴だと決め付けるとしたら、それこそショービニズムであろう。国語として強制してきた国民党のゆがんだ言語観こそが、ショービニズムなのである。
(5)謝長廷の「國語」が下手だと嘲笑しているが、謝長廷にとって「國語」は母語ではなく、國語というのは国民党によって戦後押し付けられたものだ。だから國語が下手だというのは、当たり前のこそだ。それが「台湾アイデンティティがないのか」というのは、国民党がまさに北京語強制という言語ショービニズムを持っていることの証明だ。

少なくとも、中南部においてはホーロー人が圧倒的多数で、庶民層ともなれば台湾語を常用している。庶民層にとっては、英語が流暢だとかハーバード大学卒だとかは、どうでもいいことなのだ。それが現実なのであり、そういう現実があるからこそ、こうした話が中南部で流れていると報道されているのである。
それにたいして台湾語を「ビン南語」という蔑称で呼んだうえに、「ショービニズム」と罵倒するということは、台湾語をこそ生活の言語として常用している中南部の大多数の民衆を敵に回したも同じである。

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