国際医療について考える

国際協力という分野に興味を持つ人たちとの情報共有、かつ国際協力に関する自分としてのより良いありかたについて考える場所。

Gaviによる髄膜炎菌血清型Aワクチンの支援

2016-05-29 | Gavi Alliance

Meningitis A vaccine support

髄膜炎菌血清型Aワクチンの支援
2010年から2014年にかけて、Gaviは髄膜炎菌血清型Aのワクチン(MenA)のキャンペーンを支援することにより、髄膜炎ベルトにある26カ国中15カ国で2億2000万人の小児に予防接種をおこなってきた。
その支援を実施してきた15か国は、Benin, Burkina Faso, Cameroon, Chad, Côte d'Ivoire, Ethiopia, The Gambia, Ghana, Mali, Mauritania, Niger, Nigeria, Senegal, Sudan, and Togoである。
それぞれの国で、約85%の髄膜炎のリスクがある人々が予防接種を受けている。
予防接種により即効果が表れ、MenAの予防接種キャンペーンを行った国では、2014年には一人も発症者が報告されず、髄膜炎ベルトでの流行は過去最低の水準となった。
例えば、ブルキナファソとチャドでは、高い予防接種率による人口当たりの髄膜炎菌A型の罹患率が著しく減少し、チャドでのキャンペーン後には、患者数が94%減少した。
大きな問題は、エボラ出血熱の流行による荒廃で、2014年には予防接種キャンペーンを継続できなくなった。
具体的には、ギニアではエボラ出血熱の流行状況が落ち着くまで、髄膜炎菌A型の予防接種キャンペーンを延期することが余儀なくされた。
予防接種キャンペーンを実施していない、髄膜炎ベルトにある残りの11カ国は2017年から2018年にかけて2億6000万人以上に対して予防接種を行うキャンペーンを実施することが期待されている。

温度管理網(Controlled temperature chain)の必要性
アフリカの髄膜炎ベルトで使用することを目的に開発されたMenAfriVacは、温度管理網(CTC)の一部として、4日以内に接種することで40度以下の温度で管理ができる。
これが、コールドチェーンに使用されていた資金を節約して、接種率を上げ、予防接種キャンペーンをより効果的にしている。
Gaviはコートジボワール、モーリタニア、トーゴの3つの国が、このCTCを利用して、予防接種キャンペーンを実施することを支援してきた。
ワクチンの温度を2-8度に保つためのアイスパックを必要としないことで、CTCはワクチンの供給を簡易かつ効果的にすることで大きな影響を与えた。
この方法が用いられたほとんどの地域で高い予防接種率が達成された。
このCTCを用いる方法は大きな経済的利点にもなりうる。
WHOの研究によれば、コールドチェーンを用いずにCTCを用いてMenAfriVacを接種することで、必要な資金を半分に減らすことができた。

髄膜炎ベルト
髄膜炎菌性髄膜炎は、サハラ砂漠以南の髄膜炎ベルトで最も流行している。
この髄膜炎菌ベルトにある国は26カ国で、西はセネガルやガンビアから、東はエチオピアまで広がり、4億5000万人に髄膜炎菌性髄膜炎のリスクがある。
流行は乾季の12月から6月にかけて生じ、流行の波は2-3ヶ月持続し、雨季に終息する。
髄膜炎菌の感染リスクが最も高いのは乳幼児である。

社会的経済的影響
髄膜炎菌性髄膜炎の発生により、社会的にも経済的にも影響が生じる。
2006年から2007年にかけて、ブルキナファソで行われた研究報告によると、髄膜炎1例に対して世帯の年間収入の34%に相当する、90米ドルの医療費が必要であった。
髄膜炎菌による合併症が生じた場合、この支払い額は154米ドルまで上昇した。
多くの人々がこの病気にかかることを恐れて髄膜炎の流行中に社会に出たり、働くことを躊躇する。

Gaviの対応
髄膜炎ワクチン計画(the Meningitis Vaccine Project)
この致死性の高い流行を排除するため、WHOとthe Program for Appropriate Technology in Health (PATH) は、Bill & Melinda Gates Foundationによる資金を得て、the Meningitis Vaccine Projectが設立され、より好ましい髄膜炎菌血清型Aのワクチンを開発した。
2008年には、Gaviの委員会は2016年まで開発されたMenAfriVacを用いて、髄膜炎ベルトに位置する26か国全体に住む人々に対して予防接種を行うための支援を承認した。
3億1500万人に代表される、30歳未満の人々に高い接種率での予防接種を行うことで、アフリカ地域から髄膜炎菌の流行を排除できると考えられている。
2014年にWHOがMenAfriVacの事前資格審査(prequalification)を行ったことに引き続き、次世代の予防を継続して確実に実施するため、Gaviは定期接種プログラムにMenAワクチンを導入するための支援も継続している。

Gaviによる経済的支援
現在、髄膜炎ベルトに位置する26か国にGaviは支援を行っている。

  • 予防接種キャンペーン
    Gaviによる支援国は、MenAワクチンの1回接種の予防接種キャンペーンを実施する支援を受けるとともに、ワクチン供給に関する支援も受けている。
    予防接種キャンペーンに対するGaviの支援国は、ワクチンの導入に支援金を受け取るのではなく、キャンペーンの対象者に予防接種を実施するためにかかる費用として、被接種者1人につき、推計で費用の約80%に当たる0.65米ドルの支援を受けている。
    Gaviの目的は予防接種の対象となる人々に、迅速にかつ効果的にワクチンの供給を促進することである。
     
  • 定期接種の導入
    将来的な流行を予防するため、予防接種キャンペーンを実施した後、MenAワクチンを小児の1-5歳を対象とした定期接種に導入するべきである。
    Gaviは予防接種に必要な医薬品の供給とともに、定期接種としてのMenAワクチンの1回接種を支援している。
    支援を受ける国は追加の導入費用として、現金の一時払いを受けることができる。
    予防接種導入に関連して、一時金受け取り以降にかかる費用については、ワクチンを導入する政府とその支援団体が負担することが想定されている。
     
  • ミニキャッチアップキャンペーン
    Gaviは同時に1回のミニキャッチアップキャンペーンもまた支援をしている。
    これは予防接種キャンペーンを実施してから定期接種ワクチンが導入されるまでの間に生まれた小児がワクチン接種の機会を逃さないようにするためのキャンペーンである。
     
  • 髄膜炎炎の流行に対するワクチン備蓄
    Gaviは流行を緊急に制御するための髄膜炎ワクチンの備蓄に貢献している。
    備蓄ワクチンについては、血清型Aの髄膜炎菌ワクチン以外にも、流行の原因に合わせて使用できるようACW、ACYWなどのその他の血清型の髄膜炎菌ワクチンも備蓄している。
    この支援はアフリカの髄膜炎ベルトに位置する26か国での流行に対する緊急対策に適応される。
    この緊急時のための髄膜炎菌ワクチンの備蓄はWHOによって組織されているinternational coordination groupを通じて調整されている。
     
  • 温度管理網(Controlled temperature chain)
    MenAワクチンを導入する際に、CTC strategyを用いることを希望する国に対して、Gaviが支援を行うことが2014年から追加的に可能となった。
    これらの財政的支援はWHOを通じて実施される。

MenAfriVacの歴史
2001年にWHOとPATHcは、Bill & Melinda Gates Foundationから受けた財政的支援を核として、米国のシアトルを基盤とした非営利団体the Meningitis Vaccine Projectを設立した。
その目的は、十分に安い価格でワクチンを開発し、アフリカ全体で使用することを可能とすることである。
これらの取り組みにより、25万人の髄膜炎と2万5000人の死亡者が出た1996年から1997年にかけての髄膜炎菌の流行のような大規模な流行を、二度と繰り返さないことをより確実にすることができる。
産業化した国における、商業を目的とした製造販売企業は、そのような安価でワクチンを生産することはできない。
そのため、共同事業体が研究自体を実施し、ワクチンを製造するためプネにあるSerum Institute of Indiaと契約を交わした。
計画にある研究や開発のための全体の費用は、その他の典型的な商業用ワクチンの5-10倍安く抑えられた。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Gaviによる麻疹ワクチンの支援 | トップ | 2016年4月のSAGEの概要(一部) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Gavi Alliance」カテゴリの最新記事