背はアシメックより若干低い。だが胸の広いたくましい男だった。鳥の羽のついた冠をかぶり、灰色の熊の皮を腰布にしている。二の腕に木をくりぬいて青く塗った腕輪をはめていた。胸には、三角形と円を組み合わせた不思議な文様の刺青があった。
刺青というのは、カシワナ族にはない風習だ。聞くところによると、ナイフで肌を傷つけて、その傷に色を染み込ませるという。そうすれば水で洗っても落ちない化粧になるのだ。だが、ナイフで自分を傷つけるなどと、聞くだけでカシワナ族はぞっとした。ヤルスベ族はなんでそんなことをするのか、きっとおかしなやつらに違いないと、カシワナ族がことごとにヤルスベ族を揶揄するときに、刺青はいつも格好の話題となった。
しかし、ゴリンゴの胸の刺青は、かなりかっこよく見えた。楽師の中には、それをうらやましげな目で見るやつもいた。
しばしにらみ合った後、ようやくゴリンゴは用件を言った。
「米もらいにきた。もちろんただではない。宝いぱいもてきた。交換してくれないか」
「わかった。話し合おう」
アシメックは答えると、目で合図して、みなに交渉場にいくように言った。アシメックはついてくるようにと言って、一行を交渉場に案内した。
村をしばらく歩くと、交渉場に指定された家にたどりついた。女たちが数人、外で待っていた。普通の家より幾分大きく立派なその天幕には、干した魚や木の実や藁や花が豪華に飾ってある。カシワナがどれだけ豊かな村かを見せたくて、女たちが飾り付けたのだ。
入り口に下げてある鹿皮をめくると、アシメックは一向に先に入るようにと勧めた。ゴリンゴたちは素直に入っていった。アシメックも続いて中に入った。交渉場の真ん中には米がいっぱい入った壺がいくつか固めておいてあり、その周りには、人数分の鹿皮の敷物が敷いてあった。
壺を真ん中にして、入り口から右側にヤルスベ族の五人が座り、左側に、カシワナ族の五人が座った。中央に陣取るのは、もちろん族長だ。