やがて彼らはケセン川の岸辺に来た。ダヴィルに指導されて、楽師たちが歌を歌っていた。
今や来い
今や来い
カシワナカはよいと言った
みんな来い
アシメックは楽師たちの横に、族長としての威厳をたっぷりと表しながら、胸をそらして立った。向こう岸に、白い二艘の舟が見えた。あれもわからないことのひとつだ。カシワナ族にはまだ、舟を白くぬりあげる技術がない。彼らがなんで舟を白く塗っているのかも、わからない。
あれも向こうのやり方なんだろう、とアシメックは思った。自分たちの力を見せつけようとしているのだ。そして交渉を自分の方に有利にもっていきたいのだろう。
やがて、向こうから答えの音楽が聞こえてきた。
テヅルカの使い参る
そちらに参る
ゴリンゴとくはしめがいく
言葉の意味が少しわからないが、ゴリンゴというのが、今のヤルスベ族の族長の名であることは知っていた。変な名前だが、ヤルスベはあれをかっこいいと思っているらしい。アシメックは楽師たちに合図して、よしの合図をさせた。
すると、二艘の白い舟が、すべるようにこちらに向かって動き出した。アシメックは胸の前で腕を組んだ。族長として威厳を見せねばならない。不安がっているなどという風情は微塵も出してはならない。胸を張り肩をはり、目をいからせ、いつもよりは数倍も偉そうにせねばならない。これが交渉のコツだということは、前の族長に習った。