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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

交渉⑤

2017-10-25 04:13:31 | 風紋


次にアシメックが言った。
「それについては、川で漁をしているやつらが、かなり詳しいから連れて来よう。やつらはよく川でヤルスベに会っているんだ。ダヴィルはヤルスベとよくつきあっているからな、だいぶわかるようになってきたそうだ」

そうやって準備は着々と進んでいった。カシワナ族も、ヤルスベ族が作っている鉄のナイフは欲しかった。カシワナ族にはオロソ沼の米があるが、ヤルスベ族の持っている鉄のナイフを作る技術はないのだ。

聞くところによると、ヤルスベ族は、山から石を取って来て、それを、土器を焼く火よりも熱い火で溶かしているという。一体、石も溶けるほどの火とはどんな火だろう。どんなに考えても、カシワナ族にはそれがわからなかった。ヤルスベ族に聞いても、ほとんど何も教えてくれないのだ。

その日は一日、明日の準備に明け暮れた。夕暮れが近くなり、人々の興奮が幾分冷めてくる頃、ようやく準備は万端に整った。ダヴィルは明日言うべきヤルスベへのあいさつの言葉をしきりに口の中で繰り返し、ミコルは家で風紋占いをした。その結果によると、明日の交渉は上々だが、少し不安要素があるということだった。

「不安か。そんなのはいつものことだ。明日は何とかしよう」とアシメックはミコルに笑いながら言った。

夜が過ぎ、夜明けが来た。フウロ鳥が鳴き、昨日、明日だと言った日が今日になって明けた。




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