広場の真ん中にはうずたかく榾が積まれ、それに火がつけられようとしていた。アシメックが現れると、さっそくソミナが近づいてきて、アシメックに衣装を着せた。三連のビーズの首飾りの上にもう二連首飾りを重ね、フウロ鳥の羽をあしらった豪華な冠をかぶせた。それは祭用のもので、普段のものの三倍の羽がつけてあり、さきに空蝉の鈴もつけてある。縁飾りをつけた鹿皮の肩掛けもつけた。
アシメックが晴れの装いをすると、ソミナは目を細めてまぶしそうにそれを見た。ほれぼれするような男ぶりだ。ソミナには、この麗しい兄がうれしいのだ。どんどん立派になっていく。ソミナはアシメックにとっては年の一番離れた妹だった。母が産んだ最後の子供だった。醜女だということを気にして、いつも家に閉じこもっていがちなこの妹が、アシメックは一番かわいかった。他の兄弟はもう離れて別の家を作っているのに、ソミナだけはいつまでも自分のそばを離れず、ずっと母親のように世話をしてくれる。
突然、楽師たちが木をたたき始めた。それを合図にするかのように、各所で用事をしていた村人たちが、火を囲んで所定の位置に座った。アシメックも呼び出されるかのように、火の前に躍り出た。村人たちに歓声が起こった。アシメックが、カシワナカの踊りを踊ってくれるのだ。楽師がどんどんと木をたたき、カシワナカの歌を歌い始めた。
賢き者
遠き道をゆけ
難き道をゆけ
正しきものついには勝たむ
花を踏むな
石を踏め
蛇を切るな
魔蠍を切れ
正しきものついには勝たむ
ナイフは稲のために
弓は鹿のために
人を愚弄してはならぬ
敵は阿呆である
正しきものついには勝たむ
アシメックは長い両腕を鷲のように広げた。そして歌に合わせて舞い始めた。軽快なリズムに合わせて特有のステップを踏み、焚火を囲む村人たちの前で、優雅に踊った。村人たちの目がキラキラと輝いた。立派な男がすばらしいことをしてくれる。それだけで、村人たちの目が嬉しそうに光る。アシメックはそれがうれしかった。