レオン・ボナ、19世紀フランス、アカデミズム。
これは人間の本当の姿のひとつを表す絵である。老いさらばえた男の体は、それが自分を偽るために飾るものが何もないからこそ美しい。
ヨブは旧約聖書の中の人物である。豊かな財産を持った義人であったが、信仰を試され、あらゆる難を振りかけられる。ヨブは財産を失い、皮膚病にかかり、妻にはののしられるが、神への信仰をつらぬいた。しかし神は、このように人間の信仰を試すために人間を難に陥れたりはなさらない。人間が味わう難はすべて、自らがなしたことの結果であるか、悪魔のしかける罠なのだ。人間が自分を見失っている影の時代には、そういう試練の嵐が世界を吹き荒れる。そこをただ神の愛を一筋に信じて耐え、乗り越えていく人間の姿は美しい。